ここまで、防災ラジオをあくまでラジオの性能という観点で評価してきました。ただ、ラジオを作っているメーカーは災害時に役に立つというさまざまな機能をラジオに付けたものを「防災ラジオ」として世に出しています。今回は、そうした様々な電源回りの機能を紹介するとともに、果たしてそうした機能は役に立つのか? ということにつて考えてみたいと思います。
まず、手回し発電のできる防災ラジオに必ずと言ってもいいぐらい付いているのが「ライト」です。手回し発電初期にはアナログダイヤルを見やすくするためのダイヤルライトで、その明かりを懐中電灯代わりに使っていましたが、消費電力の少ない白色のLEDライトを搭載したことで、手回しで満充電すれば、付けてすぐ消えることなく懐中電灯の代わりとして使えるようになったことで、今ではLEDライトが付いていない防災ラジオは無いのではないかと思います。
スマホの画面や撮影用のライトを光らせて普段遣いしている方からすると、あまり防災ラジオにライトが付いていても使わないという方もいるかも知れませんが、手回しで発電した電力を使って明かりをコントロールできるというのは、いざという時には安心できるような気がします。ラジオによってはスポット光だけでなく、光を拡散させて広い範囲を照らせるようなランタン代わりになるライトを内蔵しているラジオもあります。個人的には、こうした機能については付いていて邪魔にならないと思うので、あって良いと思いますが、他にも色々な機能が付いている防災ラジオの中には、色々付き過ぎてわけがわからなくなっているというのも感じるところがあります。
まず、ソニー初の手回しラジオにも付いていたサイレン(ブザー)機能についてです。人が大声を挙げて助けを求めることをしても、大声を出すという行為自体が体力を消耗するので、防災ラジオのサイレンで自分のいる場所を他の人に伝えることができればと思いますが、そもそも自分の手元にラジオがなければサイレンを鳴らすことはできませんし、充電の関係からずっと鳴らし続けることも難しいでしょう。さらに平常時に誤って鳴らしてしまうと迷惑になるので、個人的にこの機能は必要ないと思えます。どうしても助けを求める事を考えたい場合には、サイレンではなく自分の意志で音を出せる小さなホイッスル(常時身に付けておけるもの)が一つあれば良いかなと思います。
次に、内蔵電池に充電するための方法として本体に小さなソーラーパネルが付いている防災ラジオがありますが、あれも個人的には否定的にとらえています。確かにラジオを鳴らすにはそこまでの電力は必要ないので、本体に太陽光を当てて内蔵電池をうまく充電できれば良いのですが、残念ながらラジオを聞くための電力をソーラー充電で得るためにも、それなりの大きさのソーラーパネルが必要になります。充電するには本体を日に当てなければならないので、結果的にラジオ本体を熱くしてしまう事が心配になります。いざという時の事を考えたら、少し大き目の持ち運びできるソーラーパネルを別に用意し、それでモバイルバッテリーを充電することでラジオで使うためのエネループの充電に使う(乾電池仕様のラジオの場合、充電池の使用は自己責任になります)方が現実的で、晴れている日にモバイルバッテリーに充電できれば、雨の日や夜でもモバイルバッテリーからエネループに充電でき、効率的だと思います。
さらに、手回し発電を使ったスマホへの充電や、本体に入れた乾電池でスマホに給電するような機能についてはどうでしょうか。乾電池をモバイルバッテリーのように使うには、専用の製品がありますが、ラジオ自体にスマホ充電の機能があるというのは、乾電池がたくさんあるもののスマホに充電する機器がない時には確かに助かります。手回し発電でスマホに充電することはちょっと実用的ではありませんが、災害時にすることがなくて暇つぶしのためなら、まあ無いことは無いと思うものの、どちらも極端なケースです。上記で紹介したソーラーパネルで、それなりにモバイルバッテリーの充電ができるなら、こうした機能はあえて使わなくても良いかなという感じはします。
というわけで私的な結論ということでは、ライト・ランタン機能はあっても困らないので付いていても問題ないものの、サイレン機能は誤爆した場合に困るので無い方が有難く、手回しや乾電池でのスマホ充電機能はあくまで気休めだと思っているので積極的に使おうとは思わないので、可もなく不可もなくといった感じでしょうか。防災ラジオ購入の際にはその価格も重要視されると思うので、あまり使わなそうな機能を削ることで故障のリスクを軽減し、価格もリーズナブルでいてさらに実用的なものであった方が良いのではないかと思うことはあります。
※今回の一連の投稿をリンク付きでまとめてみました。まとめて読みたかったり、前後の内容を確認したいという方がおりましたら、ぜひともお役立て下さい。
☆防災ラジオについての考え方
・前説 なぜあえて防災ラジオについての知識が必要なのか
・その1 そもそも小型ラジオには外部アンテナの有無が大事
・その2 イヤホン専用ラジオよりスピーカー内蔵のものを買おう
・その3 チューニングはアナログ・デジタルどちらにするべきか
・その4 AMとFMのどちらが防災ラジオとしては大切か
・その5 使用電池は「単三」と「単四」ならどちらが便利か?
・その6 使用できる電源パターンにはどんなものがあるのか?
・その7 内蔵電源は充電池よりキャパシタ(コンデンサ)
・その8 電源回りの機能とその限界について認識しておこう
・その9 使わなくてもイヤホンは一緒に持ち歩くことが大事
・おわりに 時代とともに理想の防災ラジオのスペックは変わっていく