ラジオはいざという時に目的とする放送が聞けなければいけません。しかし、以前の私のエントリーを含めネット上の多くの防災ラジオについて書かれたページには、一番大事なラジオの感度についての記述はあまりないように個人的には思えます。
インターネットのようにセットすれば鮮明な画像と雑音のない音声が流れてくるのに慣れている人から見ると、多くの防災ラジオは、雑音が入ったりうまく選局できないという事が実際に使っていれば起こってくるでしょう。「気軽に持ち運べる」「荷物にならない」小型ラジオというのは、ほぼそれほど感度が良く作られていないというのが実際のところなのだと思います。
普通、ラジオ放送というと「AM」と「FM」の二バンドを聞けるようになっていることが多いと思います。防災ラジオを含むポータブルラジオでは、AMとFMのアンテナが付いていますが、まずはその内容について書いていきたいと思います。
まず、AM放送を聞くためのアンテナは、本体の中に入っている棒にコイルを巻いた「バーアンテナ」が入っていることが多いです。このアンテナは、大きく長ければ長いほど遠くの放送を聞けるようになっています。さらにこのバーアンテナには指向性があり、放送局の方向に正しく向けることで感度が上がります。もし手持ちのラジオがあれば、AM放送を受信した時にラジオをぐるっと一周回してみると、その方向によって強く入感したり、音が小さくなることを実感できるのではないかと思います。AM放送を聞く時には本体内蔵のバーアンテナを使うしかないので、非災害時にラジオを部屋のどこに置き、どの方向に向けたら良く聞こえるかを試しておくと、いざという時に慌てずに済みます。
さて、今回改めて防災ラジオを使うために大事な点の一つとして、「アンテナ」というキーワードを挙げました。上記の通りAMを聞く場合には、アンテナの性能は内蔵バーアンテナの大きさに比例するので、小さなラジオではもはや感度を劇的に上げることは難しいのです。さらに、AMとFMにおける劇的な変化が今現在起こっていることをご存知でしょうか。送信設備に多大な費用のかかるAM放送からFM放送へ、多くのAMで電波を発信しているラジオ局は現在FM波での同時放送をすでに行なっています。つまり、今まではAMラジオでなければ聞けなかった放送局も、そのかなりの局がFMラジオで聞けるようになってきたのです。
さらに、FMでは地域全般をカバーする県単位の放送局だけではなく、自分の住む地域に根ざした「コミュニティFM局」が放送を行なっています。そして、もし大きな災害が起こった場合、自分の住む地域の事を事細かに発信してくれるのも「コミュニティFM局」である可能性は高まっています。AMとFMについて詳しくは別項目で改めて書きますが、大事なのは少なくともFMの聞けるラジオにおいて、住んでいる場所によっては聞きにくい小出力の「コミュニティFM局」を聞くためにはどうすれば良いかを考えることが大事だということです。
ラジオのFMアンテナは伸び縮みするロッドアンテナが多くの防災ラジオには付いていますが、このロッドアンテナを伸ばし、聞く場所を窓の近くにしたり、ロッドアンテナを回したりして何とか地域のコミュニティFMが聞ければ良いのですが、FMはAMと違って、何とか自分でラジオの感度を上げられる可能性のある「外部アンテナ」を接続することで、感度を上げる方法があるということがあります。
専用のアンテナ端子がなくても、ケーブルをロッドアンテナに引っ掛けたり巻いたりしたり、アルミホイルを巻いたりなど、ラジオの感度を良くするための方法がネット上では紹介されていますが、私は災害時だけでなく旅行時にも使えるように、専用の外部アンテナをわざわざ購入して用意しています。
写真の本体の中に巻かれているワイヤーを伸ばしてカーテンレールに吊り下げることによって、FMや短波ラジオの感度を上げるためのものですが、私の実感ではそこまで劇的に感度が変わるものでは実はありません。どちらかと言うと、地元の災害用チャンネルを放送するコミュニティFM局が最低限聞こえるくらいの感度アップがあれば良いと思いながら使っています。ですから、まずは手持ちのラジオで実際に色々と聞いてみて、不満点があるような場合に導入を検討しましょう。ただ、小型の手回し発電ラジオというのは、どうしても受信性能やアンテナが貧弱であることが多いので、うまく目的の放送局を捉えられずにラジオを投げ出してしまう方もいるかも知れません。
でも、簡単に諦めるのではなく、そのラジオだけでなく他のラジオに接続しても使えるアンテナを使えるようにしておくことが、いざという時に役に立つ可能性もあります。もし今自宅にある小型ラジオをとりあえず防災用として使おうとして挫折した方は、そうしたアンテナの導入を考えてみられてはいかがでしょうか。
※今回の一連の投稿をリンク付きでまとめてみました。まとめて読みたかったり、前後の内容を確認したいという方がおりましたら、ぜひともお役立て下さい。
☆防災ラジオについての考え方
・前説 なぜあえて防災ラジオについての知識が必要なのか
・その1 そもそも小型ラジオには外部アンテナの有無が大事
・その2 イヤホン専用ラジオよりスピーカー内蔵のものを買おう
・その3 チューニングはアナログ・デジタルどちらにするべきか
・その4 AMとFMのどちらが防災ラジオとしては大切か
・その5 使用電池は「単三」と「単四」ならどちらが便利か?
・その6 使用できる電源パターンにはどんなものがあるのか?
・その7 内蔵電源は充電池よりキャパシタ(コンデンサ)
・その8 電源回りの機能とその限界について認識しておこう
・その9 使わなくてもイヤホンは一緒に持ち歩くことが大事
・おわりに 時代とともに理想の防災ラジオのスペックは変わっていく