2019年5月29日、参議院本会議でNHKにテレビ番組のインターネット常時同時配信を認める改正放送法が可決、成立しました。この事を受けて、NHKは今年度中にもネット向けの新サービスを開始する予定だそうです。
基本的には受信料を払っている人に向けてのサービスだそうですが、払っていない人が利用しようとした場合に、現在のBSのように受信料の支払いを促すメッセージを付けて流すような方法も検討されているということです。現状ではテレビ番組のネット視聴について、いわゆる「見逃し配信」を無料で利用できる「TVer」の存在や、インターネット放送として常時中継も可能なAbemaTVもある民放系のサービスが先行しており、テレビを見る習慣がない人にとっては、NHKはスマホユーザーに見捨てられるのではという危機感があったのではないかと考えることもできるでしょう。
というのも、今現在のネット関連のテレビ放送を見る環境というものはそこそこ整っており、テレビをわざわざ用意せずとも大型のモニターとインターネット環境があれば一通りの情報を得ることができるだけでなく、映画・スポーツといったそれまでテレビの独占状態だったソフトもネットで十分カバーできるようになっています。
NHKは今回の決定を受けて早急に常時・同時インターネット配信に着手するでしょうが、問題になってくるのがその受信料のコストを利用者がどう考えているかということになります。
ちなみに現在、NHKの受信料は地上波のみの視聴をする場合、2ヶ月分2,520円(口座振替・クレジットカード払の場合)になっているので、1ヶ月では1,260円の受信料がかかる計算になります。今後テレビを持たず、インターネットでの配信しか見ない人に対して別の料金プランが出てくるかどうかもよりますが、シビアな目で見ればこの金額を毎月払うだけの「価値」があるのかということが、これからネットを通じて多くのサービスを契約している人にとっては鍵になってくるのではないでしょうか。
具体的に比較検討するために、無料のものを含めてネットでの動画配信サービスについてそのコストを見ていきたいと思います。
・YouTube 無料(一部にはライブ配信の「ウェザーニューズ」なども)
・日テレNEWS24 無料
・TBS NEWS 無料(Yahoo!よりアクセス可能)
・AbemaTV 無料(テレビ朝日系列のインターネット放送局)
・TVer 無料(民放の見逃し配信)
・GYAO 無料(一部作品レンタルは有料)
・Hulu 月額933円(日本テレビ系)
・Netflix 月額800円(ベーシックプランSD画質(480p))~画質で他プラン有
・dtvチャンネル 月額750円(CS放送など)
・DAZN 月額1,750円(docomo契約と同時決済なら月額980円)
・Amazonプライム・ビデオ 年額4900円(月額500円)その他特典あり
まだまだ他のサービスもありますが、基本的に無料のサービスを使いながらプロ野球・Jリーグ中心に見たければDAZNを追加、見たい映画や独自制作の番組がある場合には有料のネット配信サービスに追加で加入しても月額で2千円を切ります。果たしてNHKの地上波放送を加入促進のメッセージを入れないで見るだけのために月額1,260円を出す価値があるのか、すでにテレビ離れを起こしてしまった人たちはシビアに今後の状況を見ているのではないかと思われます。
ネットでの同時配信というのはメリットも大きいものの、多くの人が当り前に動画を見るようになるとネットのトラフィックが増え、今まで以上に通信集中によるアクセスのしにくさが出てくると、見たいと思っている人に情報を届けることができなくなるような事も考えられます。無料のサービスならそうした不具合も仕方がないと諦めることができるかも知れませんが、しっかり料金を取った上で見られなくなる状態が起こったらNHKは受信料としてスマホのみでの視聴利用をしている人に返金してくれるか? という状況になった場合、恐らくそうした事はできないと回答することも考えられます。その辺がネットでの常時・同時インターネット配信の難しいところだと思うのですが、今回の決定はもしかしたらネットユーザーにとってテレビに完全に決別する契機になってしまうかも知れないということもあります。
そして今後は、NHKが常時・同時インターネット配信を行なうことで、民放のサイトでも同様のサービスを行なう可能性もあるということです。民放の場合は何らかの追加料金が必要になるのか、広告料をあてにして無料で行なうのかわかりませんが、NHKが走り出そうとしている今、これからのテレビ番組におけるネット配信の状況は大きく変わっていくでしょう。私達利用者は、そうした流れを感じつつ、今後を見ていく必要があります。