前回、テレビコマーシャルで大手キャリア並に知名度を得た準キャリアと言えるかも知れないY!mobileとUQmobileについて紹介しました。通信会社としては今はもう限られたユーザーの取り合いになっていく中、今までのようにただ毎月安い値段で利用できるというだけではユーザーをMVNOが獲得できないような状況になってきていると思います。
今後、MVNOは淘汰されていくということも十分考えられる中、どこに活路を求めて行けばいいのか、またユーザーとしては何を基準にMVNOを選べばいいのでしょうか。そのキーワードとしてまず浮かぶのは「フルMVNO」のサービスです。
この「フルMVNO」について説明する前に現状のMVNOというのについて見てみますと、単に回線の一部を借りているだけなので、かなりの制約を持った中でサービスを提供しなければなりません。SIMはドコモの場合、ドコモのSIMカードの提供を受けて貸し出されたものなので、解約の際には返却が必要になります(auのMVNOの場合はSIMの返却は必要ないケースが多いです)。
「フルMVNO」というのは、MVNOで独自にSIMカードを発行したり、独自のSIM規格を搭載した製品を開発することができるようになります。具体的にはSIMカードがなくても通信会社の情報を登録することでSIMを入れているものとして自在に通話・通話のできるeSIMというサービスを提供することができます。
現在最少のSIMの大きさはnanoSIMですが、それでもカードを収納する部分などを作らなければならないので、将来のモバイル機器やノートパソコン、AIスピーカーがeSIMによる通信を行なうような形に統一されてくると、現状のSIMカードしか持たないMVNOはジリ貧になってしまうでしょう。今後、もしUSBタイプのBluetoothアダプタくらいの大きさのLTEモデムがeSIMの導入で本体の大きさを小さくして市販されるようであれば、今あるノートパソコンをLTE通信機能付きにできそうなので、通信業者の乗り換えを考えるかも知れません。
ただ、電気自動車と同じてすぐに今のnanoSIMが淘汰されるということまでは考えなくていいでしょう。どちらにしてもそこまで影響が出てくるのはまだ先のことだろうと思います。今のところ「フルMVNO」を実行に移そうと具体的に声を挙げているのはIIJmioのみで、2018年3月から始めることをアナウンスしています。ただ、IIJmioのデータ通信の仕組みが低速通信に切り替えても3日間で360MBのデータ通信量を超えると更なる規制を行なうようになっていますので、個人的には低速無制限のMVNOが「フルMVNO」に参入するような事があれば、大手キャリアとフルMVNOでないと使えないようなハードをチェックしながら、新たなモバイル通信の形としての動向に目を光らせることになると思います。
さらに、現在の4Gから5Gに向けて大手キャリアは実験を重ねている中、5G対応のSIMカードとともに、新たな動きが出てくる可能性があります(実現までには恐らく2020年くらいまでは無理ではないかと思います)。現在、LTE通信において最低速度で約200kbpsというスピードが安定して出ている中、それが5Gになったら最低速度が上がってくるのかどうか、まずはお隣の韓国が国家の威信をかけ2018年に行なわれる平昌オリンピックにおいて5Gが使われるという話もありますので、そこでの5Gの能力についての情報が出てくれば、今後の対応もいろいろ考えられるでしょう。
現状のMVNOの料金大系について、横並びになっているところについては新しくどこか有力なMVNOや大手キャリアおよびサブキャリアが攻勢をかけてくれば一気になくなってしまう危険性をはらんでいるような感じもあります。まず、時間や場所によって著しくスピードや反応が遅くなってしまうところはかつてのフリーテルSIMがそうであったように、淘汰されてしまう恐れがあります。単に安いところであっても、それによって回線の品質が下がるとしたらなかなか支持されなくなる恐れもあります。
となると、かつてのぷららLTEのように高速無制限という文句が先走るような売り方は成立しなくなるでしょうし、現在「スーパーホーダイ」で低速時でも1Mbps出るとされている楽天モバイルが自社回線を持った場合、さらに安定して1Mbpsくらいのスピードが出せるようになるのなら、かつてMVNOの高速無制限プランに押し寄せた人たちがごっそり移ってくる可能性もあります。回線を大手から借りているMVNOとしては借りていない通信業者と回線品質について争っても勝てるわけがありませんし、そうなると回線の安さで勝負するか、他社が行なっていない独自のプランを行なっているところはそのプランを提供している人の支持が得られればそのまま残るでしょうが、やはり他社とそんなに変わりないようなところは危ないと言わざるを得ません。
後は、具体的に名前を出してしまって恐縮ですが、来年以降LINEモバイルがどのように推移していくかということに個人的に興味があります。というのも、その前に多くの人に利用されていたmixiはLINEにシェアを奪われる中、最近では「チケットキャンプ」の買収をしたものの現在サービス終了にまで追い込まれてしまっています。このように、ネットサービスの栄枯盛衰というのはどんなサービスにもあるわけで、LINEモバイルがLINEというサービスあってのものであることから、肝心のLINEというサービスが他のサービスに取って代わられてしまえば一気にその人気もしぼむ可能性をはらんでいるからです。個人的にはクレジットカードがなくても銀行口座からLINE Payをチャージするという方法で利用料を払えるというのは他のMVNOにはないサービスなので、何とか残って欲しいと思っているのですが。
新しい技術も見える中、混沌とした状況に陥ってしまうかも知れない未来も考えられる中、個人的に希望することは、できるだけ通信会社に縛られないでユーザー主導で契約も解約もでき、安く使えるMVNOは最低限残っていって欲しいということです。個人的にはそこまで高速なモバイル通信は必要としないので、来年も以上のような事を気に掛けながらウォッチングを続けていこうと思っています。
本年もこのブログをお読みいただいてありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いします。
IIJmio
LINEモバイル