少し前にテレビを見ていたら、「1000円の中古車でどこまで走れるか?」という、中古車の価格の仕組みを知っている人から見ると、あまりにもしょうもない企画をやっている番組(4月24日放送 中京テレビ「それって!?実際どうなの課」)をつい見てしまいました。恐らくネットでの中古車販売ページで調べたのであろう、埼玉県桶川市の中古車販売店で売られている1000円の価格の付いた車検がわずかに残った古いスズキ・ワゴンR(走行距離は85900キロ)に乗って桶川から日光のいろは坂を無事に登れるのか? というチャレンジを行なっていたのですが、一応番組では一瞬車の諸経費が別にかかり、それは7万円くらい必要であることは明示したもののそれは一瞬の事で、1000円の車だからボロいというイメージだけで番組を進めていたのには、何と乱暴なのかと見ていてあまり良い気分にはなれませんでした。
一般的に自動車の価格というのは古くなればなるほど、あってないようなものになりがちです。例えば、車検のない車を自分で運んで持っていくというような場合に、販売店がタダでもいいから持って行って欲しいと(売れそうもない車を置いておくメリットがない場合もあるため)、便宜上1円とか100円とか1000円とかの価格を付けて客寄せに使う場合があります。その際の車の移動費は購入した人の負担になりますが、せめてそのような形で売られたものでなければ「1000円の中古車」とは呼べないというという風に普通なら考えます。
今回利用したワゴンRはどのくらいかわかりませんが車検が残っていて、ナンバープレートも付いていて自走で移動できるようになっていましたので、車で公道を走るためには必ずかかってくる「自動車重量税」「自賠責保険料」の残りの期間分(納車日から車検満了日までの費用の負担を請求されるのが一般的)については新たに購入する人に請求され、その後の自動車税の支払いが購入者の方に移行するように、「車検証の名義変更手数料」「車庫証明書発行手数料」、さらに車を最後に廃棄する人が払う分の「自動車リサイクル券」などがかかってきます。ちなみに、番組でちらっと映ったその諸経費は以下のようになっていました。
・車両本体価格 1,000円
・自賠責保険料 25,880円
・重量税 8,800円
・登録代 1,480円
・リサイクル料金 8,910円
・車両管理費 24,000円
合計70,070円
車はバンパーが取れかかり周辺にヘコミ、傷があるだけでなく車内装置のカーナビが壊れていてオーディオが取り外された跡があり、さらに内部のゴミは残っていて匂いもするというまさに「現状取引」と言えるものであったように思います。
しかし、上記の金額を見るとリサイクル料金は適正に取ってはいますが、車検がわずかしか残っていないと説明があったにも関わらず、自賠責保険料は25ヶ月分まるまる取り、重量税も2年に一度の車検の時に徴収される金額をまるまる請求されています(エコカー減税のない17年落ちの場合の料金で計算しています)。登録代こそ実費かと思うくらいの安さですが、最後の「車両管理費2万4千円」とは何なのか、整備費用でもなさそうですし、その根拠が不明です。
もし、現状のままで2年後までの車検を通した(ほとんど整備をしなくても車検場で問題が起こらなければ車検が通ってしまう可能性も0ではないので)ようなケースでこれだけの金額を請求されるなら納得がいきますが、名義変更だけして車を引き渡すだけの現状売りでこの価格を提示するような業者がテレビに出てしまうというのは(番組では新たに車検を取るような説明は一切なかったので)、この番組で出した内容をそのままにしておけばテレビ局側の知識不足で視聴者に誤った情報を与えることにもなりかねません。
さらに、いざという時の事故の損害を補償するための任意保険料は別途自分で用意しなければなりませんが、番組でほその点についての言及もないまま日光へのドライブがスタートしました。この点についても本当に車を運転するということがどういう事なのかわかっていない人がテレビ番組を作っているような感じがして、もしこの番組を見て車を安く買おうと思った人が出たらみんな任意保険に入らないで運転するのではないか? とだいぶ不安になりました。
今回使用したワゴンRは、恐らく前のオーナーが定期点検をしないでダメージが蓄積した車であるとは思いますが、車体価格というものが決まった金額でなく、古いから危ないということもないのに単に「1000円」という価格だけで不安なイメージを持って中古車を見るというところを狙ったのでしょうが、実際に車を購入される場合には外装はともかく自分の利用する移動の範囲で(主に市内走行のみなのか今回のような遠出があるのか)、購入方法も今回のような現状売りでなく、「整備料込み」、さらに車体価格が安いものでなく諸費用を含めた総額を比べて、自分にとって安い車を探すべきなのです。
今回番組に出演した中古車販売のお店は、どんな根拠で現状売りの総額を出したのかはわかりませんが、こういったことは自動車の価格の内訳について知識のない人にとってはわからないで本来払うべきでない費用を取られてしまう可能性があるということで、注意が必要であるということを晒してくれた事だけが救いのような気もします。大きな販売組合に加入している中古車販売店なら、組合の方で一元化した諸費用の取り方があり、その金額も納得できるものだと思うので、ここを読んでいる皆さんはくれぐれも「車両本体価格」の安さに踊らされないように注意しながら信頼できるお店から中古車を購入するように心掛けたいものです。