前回は車中泊専用車とでも言うべき車を持てることを前提にした車選びの方法について書きましたが、なかなかそうした環境を持つ人ばかりではないというのが正直なところでしょう。毎月の駐車場代も莫迦にならず、できれば家族で1台の車をいろいろな用途で使い回したいというような場合は自ずと選択の車種も違ってくるでしょう。
子供さんも小さく交代で他の子供の送り迎えが必要な場合、乗用車タイプの車で定員が多い車を選択せざるを得ない状況があるご家庭も少なくないと思います。ただこうしたタイプの車は運転席より後ろの空間が広いので、シートを収納した際の段差を埋めるための対策さえちゃんとすれば、家族で車中泊の旅に出掛けられるようになるでしょう。そのためには板をDIYで車のサイズに切ってはめ込んだりしている方や、空気を入れてふくらませるキャンプ用のマットを使うケースもあります。
空気を入れるマットは便利そうですが、空気を入れる時よりも空気を抜く時が意外と大変になります。また、空気でふくらませるマット全般に言えることですが、車の中の金属に引っかかってパンクした場合、代替の用意がないととたんに車中泊の環境が悪くなってしまうこともあります。同じ空気を入れるマットでもウレタンの入ったインフレータブルマットの方がたとえ空気が抜けても多少は段差を解消できるようになります。小さくしまうのには力がいりますが、息を吹き込まなくても膨らみ、持ち運びにも便利です。例として、このようなキャンプ用品が出ていますので紹介します。
他のマットもあるのですが、自家用車で出掛けるということになると荷物がどうしても増えてしまいがちになるため、その収納について考えながら車も決めるようにしなければいけません。これから車を選ぼうと思っている方の参考にということで、普通車の中では一番車中泊しやすいのではないかと言われるホンダのフリードスパイクという車がありますが、後ろのシートを折りたたむと、十分大人が2人並んで寝られるだけの空間を作ることができます。
この写真がフリードスバイクの室内ですが、シートを出した時の荷室にあたる最後尾の部分に床下収納があります。後ろの空間を有効に使うためにはそのスペースに荷物をできるだけ押し込むのが無理と思うと、天井にネットを付けて軽い荷物を入れるスペースを作るか、屋根の上にケースを設置するかと考えがちになります。ただ、荷物が増えれば確実に燃費は落ちますし、人を乗せればさらに車重が重くなります。車中泊用のグッズを購入する際も、車での移動だからと言ってグッズごとの収納サイズを甘く見ない方がいいように思います。
市販されている普通車・軽自動車の中で車中泊にも使いたい車を選ぶ場合、可能ならフラットで大人が手も足も伸ばして寝られるスペースが作れる車かどうかを確認した方がいいでしょう。運転席後ろの部分だけで無理がある場合は、助手席を倒して後ろの部分とフラットに繋がるスズキのソリオやワゴンR、ハスラーのような車なら一名での車中泊は快適ですし、ダイハツのウェイクやホンダのNBox+のようなシートアレンジで軽自動車でも2名十分に車中泊できるような空間を作る車も出ています。
このような車を購入する場合、シートアレンジをして車中泊する場合に、用意した荷物をどこに置くかということを意識することが大事であると同時に、特に軽自動車・コンパクトカー特有の、遠出をする際に起こり得るかも知れない問題があることも知っておきましょう。今の車というのはスペアタイヤを用意する代わりにパンク修理剤を入れただけの車が意外と多いのです。
タイヤの表面に穴が開いた場合は付属のシガーソケットから動かすコンプレッサーを使ってパンク修理剤を入れたタイヤを膨らますことで応急処置になり、タイヤ交換なしに近くのガソリンスタンドやタイヤ店まで走ることも可能になるかと思いますが、縁石などでタイヤの側面を切ってしまった場合や、運行前点検を怠ったためタイヤがバーストした場合は救援を待つしかなくなります。普段の生活ではあまりタイヤのトラブルについて考えることはないとは思いますが、旅先の山の中でトラブルに巻き込まれるような事を想定すると、旅先の一日がまるまるトラブル対応で終わってしまうことにもなります。
ですから、今後スペアタイヤのない車で車中泊旅行へ行こうと思っている方は、今まで以上に旅立つ前のタイヤに対する点検をしっかりするようにしましょう。また、中古で購入する場合、車の中にあるパンク修理剤の使用期限を確認しておきましょう。使用期限を過ぎていた場合は新しいものを購入して車の中に入れておくようにしないと、万が一の時に困るかも知れませんので、車で遠出をする際には念のためパンク修理剤の使用期限の確認も行なっておきましょう。
※「車中泊をするための車選び」について書かせていただいた記事を以下にまとめさせていただきました。興味がある方はどうぞリンク先の記事もご参照下さい。
・その1 車中泊専用に仕立やすい車
・その2 そのままで車中泊が可能な車
・その3 今の車で強引に車中泊をする場合の条件