1997年9月1日と言いますから、阪神・淡路大震災が起きてから大体2年というところの防災の日に発売になったソニーのICF-B200というラジオから、手回し発電でラジオを聞けるというコンセプトのラジオが世の中に出たと言えると思います。その時から28年が経って、もはや「防災ラジオ」と言えば手回し発電機能が付いているものが当り前だと思われるほど、手回し発電ラジオというものが広まっていると言えます。
ただ、このICF-B200で手回しハンドルを回して電気をためる先は、当時のニッケルカドミウム(ニッカド)電池でした。これは、今のエネループでおなじみの「ニッケル水素電池」が普及する前の充電池として売られていたものです。今のエネループと比べると性能は高くありませんでした。ニッカド電池は化学変化によって電気を溜めているため、その性能を維持するのは結構当時からシビアでした。具体的には「過充電」「頻繁に使う」「充電を途中で止めることによってその分しか充電されなくなるメモリー効果」「長期間使わないことによる過放電」がニッカド電池を劣化させる要素と言われていました。これは、一部の不具合について現在の充電池が内蔵されている手回し発電ラジオにも同じような事が当てはまります。
ですから、新品で購入した防災ラジオを非常用持出袋にずっと入れっぱなしにして忘れていたような場合、大きな災害が起きていざ使おうとなった場合、いくら回しても内蔵で自分で交換不可な仕様になっている充電池が過放電により劣化していて、全く充電されないか少し聞けてもすぐ聞けなくなってしまうという事が起こり得るのです。
ですから昔のニッカド・ニッケル水素電池を内蔵している手回しラジオを防災ラジオとして用意したままずっと放置していた方は、もはや手回し発電での利用は控えて、乾電池を入れて使うことをおすすめします。今現在の防災ラジオとしてニッケル水素電池内蔵の手回しラジオを持っている方は、ぜひ定期的に手回しハンドルを回して過放電になることを防止するようにメンテナンスしましょう。
そんなわけで、皆さんが防災ラジオを購入する前に考えていただきたいのが、手回し発電は良いのですが、いつでも手回しで作った電気をためられるような仕組みについて知ることなのだと思います。内蔵している「電池」にためるタイプのものだと、長期間使わないと購入時の性能を発揮できない可能性があるので、せっかく買ってもいざという時に使えないということも起こり得るわけです。これではわざわざ防災ラジオとして手回し発電ラジオを買う意味が疑われてしまいます。
実は、手回し発電した電気をためる方法というものがもう一つあって、それが電池の代わりにキャパシタ(コンデンサー)という部品内にためこむという方法です。電池のように化学反応による蓄電ではないので、ためられる量は少なく、使わないと早く放電してしまう(中味が簡単にカラになる)特性があるのですが、その分電池のようにすぐに劣化することなく、しばらく使っていなくても手回し充電をすれば購入時と同じくらいの性能を発揮します。
現在は、スーパーキャパシタというものが内蔵されているラジオがあり、メーカーでは10年使っていなくても使えるというメリットを紹介しています。ただ、電池と比べるとためられる電気の量が少なく、手回しで満充電させても連続でラジオを聞ける時間は少なくなるというディメリットも併せ持っています。
それでも、いつ起こるかわからない地震など天災に備える防災ラジオなだけに、メンテナンスフリーで使えるメリットの方が大きいので、このブログでは手回し発電の防災ラジオを購入するなら、内蔵電池(ニッケル水素およびリチウムイオン電池)に充電するものよりも、キャパシタに充電するタイプの防災ラジオの方を強烈におすすめします。
あと、これは余談ですがもし充電池を手回しで充電するタイプのラジオにおいて、もしユーザー自身が内蔵充電池の交換ができるような製品があれば、個人的には電池に充電するものであっても使ってみたいという感じがします。かつて、手回しラジオに付いているハンドルと同じものが付いたLEDライトを持っていたのですが、その製品は市販のエネループのような乾電池タイプのニッケル水素電池を入れられるようになっていて、空の電池を入れた場合、充電池に手回しで充電できるようになっていました。私は100円ショップで売っているような安い充電池をそのライトの中に入れて使っていたので、それほど惜しくなく安い充電池を入れて使っていました。
このように、手回しラジオでも安い汎用的な充電池を交換しながら使える防災ラジオが出現したなら、電池自体が使えなくなっても交換して使うことで、ためられる電気はキャパシタよりも多く利用可能になる可能性があります。もちろん、ポータブル電源やソーラーパネルから充電することも可能になるので、かなり使える防災ラジオになるのではないかと思います。メーカーの方々にはエネループを内蔵電池として使用可能な手回し発電ラジオを出してくれないかなと思う今日この頃です。
※今回の一連の投稿をリンク付きでまとめてみました。まとめて読みたかったり、前後の内容を確認したいという方がおりましたら、ぜひともお役立て下さい。
☆防災ラジオについての考え方
・前説 なぜあえて防災ラジオについての知識が必要なのか
・その1 そもそも小型ラジオには外部アンテナの有無が大事
・その2 イヤホン専用ラジオよりスピーカー内蔵のものを買おう
・その3 チューニングはアナログ・デジタルどちらにするべきか
・その4 AMとFMのどちらが防災ラジオとしては大切か
・その5 使用電池は「単三」と「単四」ならどちらが便利か?
・その6 使用できる電源パターンにはどんなものがあるのか?
・その7 内蔵電源は充電池よりキャパシタ(コンデンサ)
・その8 電源回りの機能とその限界について認識しておこう
・その9 使わなくてもイヤホンは一緒に持ち歩くことが大事
・おわりに 時代とともに理想の防災ラジオのスペックは変わっていく