ここまで、色々書いてきましてロッドアンテナ・スピーカー付き、アナログorデジタル(DSPラジオ)については個人の好みというところまで書いてきましたが、今回はラジオで聞けるバンドについて書いてみたいと思います。
多く販売されているラジオは「AM専用」「FM専用」なんてものもありますが、最初から結論を言ってしまうと、できればAMとFMの両方が聞けるラジオの方がどちらかが聞けなくなったような場合には別の放送で急場凌ぎができるので、ここは素直にAMとFMの両方が聞けるラジオを用意した方が良いと思います。
また、多くの人にはあまり関係ないとは思いますが、AM・FMとは別に「短波放送」も聞けるラジオというものもあります。短波というのは遠くまで届くので、海外から発信したものが日本でも聞けたり、その逆もできますので、海外旅行にラジオを持って行く際に短波の聞けるラジオと簡易的なアンテナをセットにすれば、NHKが海外にいる日本の方向けに放送しているラジオジャパンを現地から直接聞くことができます。インターネットのない時代は、ラジオからの情報が大切だったので、世界のラジオ局がどんな発信をしているかということを、短波の聞けるラジオを使ってニュースソースにする「ラジオプレス」という通信社もあります。かつては日本国内で短波放送を聞くことが趣味として流行ったこともありました。
ただ、今の時代はインターネットが旅行先でも使えるので、そこまで短波放送にこだわることはないと思います。国内用の短波放送としては、ラジオnikkeiが全国をエリアにした放送を行なっています。昔は株式市況か競馬が主でしたが、最近では他の放送もあり、Radikoでも聞けるので、興味のある方はどうぞ。
ラジオnikkeiは、もし地元の放送設備が全て天災で使えなくなってしまった場合にそうした広エリアで利用できる短波放送の需要もあるかも知れませんが、FM局なら災害中継車を出すことでも電波は出せますし、そこまで今の時代は短波放送にこだわることもないでしょう。ただ、海外からの放送を直接聞けるというのもラジオの醍醐味ですので、興味のある方は短波放送の聞けるラジオを防災用として準備するのも、ちょっと防災という観点からは逸脱しますが、短波の聞けるラジオは外部アンテナ端子も付いていたりしますので、小さなラジオではうまく放送局が入らないようなケースでは一つの候補にはなり得るのではないでしょうか。
話は戻って、AMとFMに関する話になりますが、昨今のニュースで見たり聞いたりされている方もいるかと思いますが、民放のAM局が将来的に維持コストのかかるAM放送を止め、放送をFM波に引っ越すことになっています。現在すでにFMでの同時放送をしていますので、もうFMラジオしか聞かないという人もいるかも知れません。NHKの二波は2026年に統合され一波での放送になるとは言え、AMでの放送はしばらくは残ると思いますが、設備の老朽化も激しいので今後もずっと続く保証はありません。そんなわけで、近い将来AM放送で聞ける局が激減し、FMに移行するのは確実だろうと言われています。そのため、以前はアナログテレビに割り当てられていた周波数に多くの民放AM局が入ることになったため、いわゆる「ワイドFM(108MHzまで)」が聞けるラジオを用意すべきです。古いラジオでもアナログ選局で「テレビの音声が聞ける」ことを売りにしたモデルは、アナログchの1~3まで目盛りが広がっているものなら、ワイドFMが聞けると思いますので、持っている方は試してみましょう。
さらに、以前にも書きましたがより地域に身近な情報をラジオを通して提供してくれるのは、大きな民放ではなく地域コミュニティの中で発信している「コミニュティFM局」であり、災害時の生活情報はやはりコミュティFMを聞き続けることが大切です。ということで、あえてAM・FMのうちでどちらが大切かと問われれば、やはりFMをきちんと聞けるものが好ましいということが言えますね。
ただ、オワコンのAMについてもNHKが放送を止めるまでは聞けるようにしておく意味があります。AMは短波ほどではないものの、かなり広い範囲で放送を聞けるような特性を持っています。NHKの第一放送と違って全国同じ内容を放送する第二放送については、秋田送信所・熊本送信所(500kW)や大阪送信所(300kw)という大出力の放送がされており、場所にもよりますが、普通のラジオで昼間でもその内容を遠方からでも聞けるようになっています。NHKの一波統合後も高出力での送信は続くと思いますので、災害時の貴重な情報源として秋田や熊本からの電波を全国で聞くような事もあるかも知れません。
また、AM放送は複雑な受信回路を必要とせずとも聞くことができるので、古い技術である「鉱石ラジオ」(「ゲルマニウムラジオ」)でもアンテナを工夫すれば地元局ぐらいなら聞くことができます(注・FM用のゲルマニウムラジオも存在しますが、実際に聞くことを考えるとAM用のものの方が一般的なのでここではAM用のゲルマニウムラジオについて書きます)。このゲルマニウムラジオは電池を必要とせず、クリスタルイヤホンからささやくような音で電波が来ている限り聞くことができるので、これはもう究極の災害用ラジオだとも言えるかも知れません。もし以前に学習用にゲルマニウムラジオを作っていて、まだ家のどこかに眠っているという方がいたら、ぜひ探してみて改めて今使えるかどうかを試してみてはいかがでしょうか。
そんなわけで、改めて今回の結論ということで言いますと、防災ラジオとして使うのは主にFM局になり、将来のためにもワイドFM対応でAMと2バンドのものを用意すれば間違いないと思います。短波が聞けるラジオについては、趣味で使われている延長として使われるのが良いかと思います。
※今回の一連の投稿をリンク付きでまとめてみました。まとめて読みたかったり、前後の内容を確認したいという方がおりましたら、ぜひともお役立て下さい。
☆防災ラジオについての考え方
・前説 なぜあえて防災ラジオについての知識が必要なのか
・その1 そもそも小型ラジオには外部アンテナの有無が大事
・その2 イヤホン専用ラジオよりスピーカー内蔵のものを買おう
・その3 チューニングはアナログ・デジタルどちらにするべきか
・その4 AMとFMのどちらが防災ラジオとしては大切か
・その5 使用電池は「単三」と「単四」ならどちらが便利か?
・その6 使用できる電源パターンにはどんなものがあるのか?
・その7 内蔵電源は充電池よりキャパシタ(コンデンサ)
・その8 電源回りの機能とその限界について認識しておこう
・その9 使わなくてもイヤホンは一緒に持ち歩くことが大事
・おわりに 時代とともに理想の防災ラジオのスペックは変わっていく