まだまだ時期は早いかも知れませんが、震災からの復興には経済を活性化する事が不可欠です。東北の産業というのは色々ありますが、SONYのラジオが東北で作られているという事をご存知でしょうか。主に高性能ラジオを中心に、秋田県小坂町に本社を置く十和田オーディオが作っているのです。
今回かなり気合いを入れて紹介する、既に国内生産を終了した災害用ラジオICF-B100もここで作られていました。被災地だけでなく、全国的にいざという時のためにラジオを持ちたいと思われている方は多いと思います。その際、あまり調べずに購入していまうと、実際に使っているうちにいろんな不満点が目についてきます。災害用ラジオとしてまず何に注目すればいいかというと、使える電池の種類と連続使用時間だと言えるでしょう。
ちなみに、ICF-B100は写真のように同じ電池が2本あれば、電池ケースの形状を変えることにより単一から単三までの電池が使えます。さらに非常用としてリチウム電池がセットされていますので、今回のような普通の電池が買えない状態でも動かす事ができます。カタログ値の電池持続時間(スピーカー使用時)について、以下にまとめてみましたのでご覧下さい。
単一マンガン AM170時間 FM160時間
単一アルカリ AM450時間 FM400時間
単二マンガン AM 79時間 FM 74時間
単二アルカリ AM210時間 FM200時間
単三マンガン AM 25時間 FM 23時間
単三アルカリ AM 65時間 FM 62時間
リチウム電池 AM 35時間 FM 33時間
このリチウム電池はCR123という型番です。リチウム電池全般に言えることですが、長期保存に強いという特徴があります。10年放置しても電気は10%位しか減らないとも言われています。写真のように、外から見える場所に収納場所があり、コインなどを使って回せる、通常の電池との切り替えスイッチの他、収納部取り外しのねじがあります。乾電池で通常運用し、今回のような特別な災害で、電池の供給が長期間できないような状況でもラジオを聞くことができます。
ちなみに、私は単三のニッケル水素電池で運用していますが、容量を単一アルカリと比べて仮に四分の一と仮定しても、連続100時間は持つでしょう。少量の電池残量でもこのラジオは動きますので、単三のニッケル水素電池を充電できる太陽電池のバッテリーチャージャーでも実用になりそうです。充電池が手に入らない状態でも、懐中電灯で使用した電池など、電池容量を使い切っていなければこのラジオは十分に動きます。例えば被災地で使用済の電池の所から電池を拝借可能な状況なら(ゴミ集積所から黙って持ち出すのは窃盗罪に問われる場合がありますので注意)、その電池だけでも十分に運用可能でしょう。
電池残量は乾電池でもリチウム電池でもボタン一押しで確認が可能です(写真の赤色LEDの数で容量が確認できます)。まさに電池の中味を空にするまで使えるという事です。なお、このスイッチでリチウム電池の定期点検をし、残量が少なくなっていた場合は速やかに交換するということが、いざというときの対策になります。
その他の機能についても簡単に触れておきますと、ダイヤルを照らすライトは光量が強めで、手元を照らす明かり代わりにもなりますし、非常用のブザーも付いています。さらに、防水仕様ですので安心して外で使うことができます。
ラジオの事を知っている人ほど、このラジオの生産終了は残念だと思いますし、これほどのラジオがなぜ今の日本で店頭にないのかと個人的に思ってしまいます。最初に書いた通り、東北の復興には現地の雇用を守り、現地企業の売上げを伸ばす事が不可決です。まだ全体の被害状況も分からないうちからこんな提案は不謹慎かも知れませんが、十和田オーディオが従来のように企業活動ができるメドが立ったら、ぜひICF-B100を改良して再販して欲しいと思います。実際問題、これからも計画停電でラジオからの情報が必要になるわけですから、そうした特需を東北に積極的に流していくため、災害用に真面目に作られたラジオを全国に向けて東北から出荷してくれれば、全国的な品不足が解消された暁には、私は予備にもう一台買います(^^;)。今では中国製や、中国メーカーの躍進がすさまじく、日本製ラジオは風前の灯火とでも言える状態です。日本が世界に向けて売り出したトランジスタラジオの伝統を消さないためにも、日本を代表するメーカーの英断を期待します。
(2018.2.28 追記)
このエントリーを書いてからもう7年が経とうとしていますが、実際自宅での野外用・お風呂用として今までも、そしてこれからも十分使えるラジオとして重宝しています。中波放送がいったんアナログテレビ放送の一部で使っていた周波数を使って同時配信を行なっているため、このラジオがあればAMの感度が悪いような場合、FMのワイドバンドに合わせればかなり高音質でラジオの音を聞くことができます。
さらに、電池の面でもエネループの基本である単三電池2本で動くことから、充電したエネループを2本単位で用意すれば電池代もかからずに聞き続けることができるようになったのも画期的でした。もし災害時に使おうと思っても使えない単二や単一電池があった場合でもマルチに使えますし、今だに手回し充電ラジオや太陽電池パネルで充電させるラジオよりも、災害用のラジオとしてはこのラジオが唯一の利便性を誇ることを信じて疑いません。
ソニーはICF-EX5を「Mark 2」として出し続けているわけですから、ICF-B100のFMワイド部分だけ替えて出せば、今でも一定の需要はあると思うのですが、そう書いて7年、企業側からの動きがないのは本格的に日本の物作りの心が失なわれたのかという風にも考えることができます。ラジオの性能とコスパを考えると中国のラジオの方が良いところもあるわけで、このまま日本のエレクトロニクスの技術が、中国企業に移ってしまうのかと考えるのも悲しいものがあります。
ただ幸いに、ICF-B100は以前から全く変わらない音を出してくれているので、これからも大切に使っていきたいと思っています。