イスラエルとハマスの紛争でガザ地区のライフラインがストップし、中の様子を知ろうにも連絡が付かない状況になっています。そのため、通信インフラの一つとして、通信衛星を利用したインターネットサービスであるスターリンクの機材一式をガザ地区に運ぶような話が出ているとテレビニュースで見ました。しかしこれは、その内容を見ていくと現在極限状態にあるガザ地区で使えるようになるかは疑問です。
というのも、スターリンクを使って通信を行なうためには、衛星アンテナと受信機、さらには安定した電源が必要になってくるからです。ポータブル電源といってもそれなりに重く、それにさらに衛星通信用の受信機とアンテナを持って運用するとなると、まずどこから電気を得るのか? という問題にぶち当たります。電気・ガス・水道などのライフラインがイスラエルによって止められているガザ地区において、維続してシステム一式を使うためにはある程度の大きさのポータブル電源および大き目のソーラーパネルが必要になりますが、開けた場所にソーラーパネルを設置していても、そこが爆撃を受けたら設備よりもまず命の方が大事になるので、設備をそのままにして逃げ出さないと助かる命すら助からなくなってしまうのではないかと思います。
地上にある携帯電話の基地局に壊滅的な被害があった後でも、通信インフラを使えるようにする技術を使えるようにしないと、世界のあちこちで大切な命を助けることができなくなるケースが今後も出てくるだろうと思ってしまいます。
先述のスターリンクの場合は専用の器具が必要になりますが、現在は別の観点から低い高度を飛ばす衛星から電波を受けることで、今使われているスマートフォンだけで通信が可能な方法についても試されています。今回のガザ地区の場合でも、常に持っているスマホ自体が壊れなければ通話およびインターネットが通信衛星を介して利用ができるということになると、状況は少しではありますが変わってくるのではないでしょうか。ポータブル電源を充電するためには人が常に持ち運ぶには大きくて重いソーラーパネルが必要になります。フィルム状で丸めて持ち運びしやすいペロブスカイト太陽電池が簡単に手に入るようになればまた状況は変わってくるでしょうが、現在は安価で持ち運びしやすいソーラーパネルということになると、スマホやタブレットを充電することができるくらいの小さ目のソーラーパネルということになるでしょう。ただそれで、地上基地局が全く使えない状況でも通信衛星と直接接続して通信インフラを利用可能になるなら、私は迷わず専用品が必要な衛星通信よりスマホ単体で接続可能な方を選ぶと思います。
もちろんその際、人道的な見地から意図的に使えないような選別をすべきではないでしょう。もし、通信衛星を持っている企業が、特定の勢力だけに使わせるような事をした場合、もはやその企業へ付くマイナスイメージははかり知れません。国境に壁を作って出さないようにはできるかも知れませんが、携帯電話の電波はそうした妨害なしに全ての人に平等に使わせることが、今後は重要になってくるでしょう。これは単に技術の問題だけではなくなってきますね。世界のあらゆる地域で起こる可能性のある紛争について、いかなる解決を図っていくかということの議論のため、現場にいる当時者の状況を伝えるということは大切なことです。そのためにも、世界は今あるスマホで利用可能な衛星通信の技術を使えるように整備することが大切ではないかと思います。