格安SIMと言えば少し前までは電話番号を持てる契約をしても通話料は一律30秒20円(税抜価格 以下の表記も同じ)の通話すればするほど料金がかさむ内容しか選ぶことができませんでした。その状況に風穴を開けるかのごとく、オプション料金を払うことで5分までの通話が定額になるプランを発表したのが「楽天モバイル」です。それ以降、MVNOだけでなくそれまで時間無制限の定額プランしかなかった大手キャリアでも5分以内の通話が安く利用できる定額のプランを出してきて、一通り通話定額は5分以内回数無制限で横並びになりました。MVNOでの通話定額についても、最大で通話定額の時間は5分以内で落ち着くかと思われました。
しかし通話定額についてのサービス競争はここで終わりませんでした。定額通話時間を今までの倍にする「10分定額プラン」を出してきたのがMVNOの中でも「OCNでんわ」というプレフィックス通話の仕組みを使ったOCN モバイル ONEで、現在この10分定額回数無制限というのが、大手キャリアも含めて他社と比較すると一歩先んじる状況になっています。
5分定額のサービスが広がった時にはMVNOの多くがこの仕組みを提供するために専用のアプリを用意し、通話が5分を超えた場合にはそれまでの通話料の半額である30秒10円で利用できるような通話サービスを整備しましたが、今回のOCN モバイル ONEの「OCNでんわ」のように明らかに通話時間による優位性があるプランが出てきた中、すぐオプション料金も同じなまま10分まで通話定額を提供できるのかというのが今後の関心事であったことは確かです。そんな中、OCNは「OCNでんわ」の10分まで定額という仕組みを希望する他のMVNOでも使えるようにオープンで提供するのが今回新たに発表があった「0035でんわ」です。
「OCNでんわ」と「0035でんわ」は呼び名こそ違いますが、全く同じサービスで、OCN モバイル ONE以外のMVNOで利用できるように提供されるサービスに「0035でんわ」という名前が付いたということです。とりあえず2017年6月から、それまでIP電話の通話定額が主で、通常の電話番号を使った定額通話プランの面で遅れを取っていた「NifMo」がこのサービスを使って10分以内の通話を定額で提供することを発表しました。NifMoを運営するniftyとしても、自分たちが他社と同様の通話定額サービスを新たに開発しなくとも、OCNの提供するサービスをそのまま利用することで、通話品質およびサービスについて他社と同等か優位に立てるわけで、こうした決断はユーザーの為を考えた英断だと言えるでしょう。
今後、自力でプレフィックス方式の通話定額を開発して提供するだけの気がないMVNOによって、通話定額のサービスをOCNから提供を受けて展開し、ユーザーの流出を防ぐような所が出てくるかも知れません。というわけで、1年間の音声通話SIMの契約期間が満了していない方は、解約金を出してまでOCNに乗り換えるのではなく、契約開始時から1年間は我慢しつつ今後の状況を見極めて、次の乗り換え先を冷静に選ぶ方がいいような気がします。
それにしてもまさに一寸先は闇とでも言うべきか、プレフィックス方式による通話定額では先んじていた楽天モバイルが逆にOCNの後塵を拝するようになってしまったというのは本当にしんどい競争をMVNO同士でしているなと思います。ちなみに「0035でんわ」はドコモ回線のみのサービスなので、auやソフトバンクの回線を使ったMVNOやMVNOの提供するプランでは使用できません。この点についてもUQモバイルやmineo、IIJmioや日本通信のようにドコモ回線以外を提供するMVNOが今後どうするのかというのも、注目していく必要がありそうです。