月別アーカイブ: 2016年3月

真冬の水分補給を常温でするためには

少し前の話になりますが、大阪の梅田で起こってしまった運転者が突然の体調不良で意識を失なったまま歩行者の列に突っ込んでしまった事故というのは、車を運転する者としては大変深刻に受け取めるべき事例でした。

事故を起こした方が体調不良が急に起きた原因について、大動脈解離だという話が出ています。運転されていた方は奈良県で講演後、自分の運転する車で大阪まで帰ってきていたという話があり、いったんは車を道の端に停めて休んでいたのではという事も報道されてはいましたが、あくまで車の中で休み、再びスタートした際に意識を失ってしまったのではないかということは、目撃者の証言で報道はされています。

さらに、運転車ご本人のネットによる発信を解析して、かなりの塩分の濃い食事を頻繁に取っていたことがわかってきました。体のトレーニングをしてマラソン大会にも出ていらしたようですが、かなりの高血圧・高コレステロールがたまっていたことが予想されます。ただ、その事自体がこの事故につながったのかどうかまでは断定できません。

このブログでは何度も書いた話ではありますが、普通の健康な人であっても、長時間の運転を休憩無しで続けることによって、同じ姿勢のままずっと過ごすことによる体調悪化の可能性についてその危険性が指摘されています。いわゆる「エコノミークラス症候群」と呼ばれるもので、体内で血栓が起こるという点から、単に休憩するだけでなく外に出て体を伸ばしたり、水分補給をしっかりとすることをおすすめしています。ただ、紹介した事故と血栓の関係があるのかどうかはっきりしないので、この対策をしたから車を運転しながら意識を失なうことがなくなるかというと、そこまで自信を持っては言えないのですが、それでも適度な休憩をして体を動かすことと水分補給は大切ですので、今回はそうした観点から安全な長距離ドライブについて考えてみたいと思います。

特に乾燥する冬は、車内が乾燥して水分が足りない状況が容易に起こり得るわけですから、大きな体調の変化がなくても一定時間ごとに車を停めて外に出て体を伸ばすことと、のどが渇いていなくても水分を定期的に補給することは大事です。そうした対策の中で、風が冷たく気温も上がらないとなると別の問題が出てきます。

というのも、ペットボトルの水で水分補給を行なう場合、外気にさらしたり簡単に車内温度が下がってしまう車中にペットボトルを放置するだけで水温がかなり下がってしまうため、体を急激に冷やしてしまうという別の問題が出てくるのです。

これが夏だったらショップの冷蔵庫に入っていない方の飲み物を買ってきて車内に置いておけば自然とぬるくなるので体を冷やす事はないのですが、冬のしかも特別にすごい寒波がやってきてしまったら、スーパーの店頭で常温で売られているものでもあっという間に冷え冷えになってしまいます。

そういう意味では、常温をキープするには真空断熱のマグボトルなどに、ぬるいというよりある程度温かい白湯を移し替えて飲むような一手間が自分の体を守ることにもなるでしょう。この用途においては、断熱性能が高いものを必ずしも選ぶ必要はありません。夏用の飲み口があるボトルに入れておけばすぐに飲めますし、熱々のお湯を入れたとしてもしっかり閉まった冬用のボトルよりも冷めやすくなります。もしドライブの日程が決まっているのでしたら、前日の夜に熱湯を入れ、翌朝そのまま熱湯の入っているマグボトルを水分補給用に使えば、朝にはちょっとあたたかいくらいまで温度は下がっていますので、安心して常温がキープされた水を補給できます。

一つ注意したいのは、旅先で飲物を買って移し替える場合、冷たいままマグボトルに入れると冷たいままキープになってしまいますので、箱に積まれている常温のものを購入するようにすることが大切です。常温のものでもどうしても冷たいという場合は、高速道路のサービスエリアにある給茶器を利用させてもらいましょう。サービスエリアの給茶器にはお茶ではなく冷水やお湯も出せますので、専用のカップにお湯を注いだらマグボトルに入っている水をいただいたお湯でうすめることで適温となります。多少熱くなったとしても、時間の経過により飲みやすい温度にまで下がっていきます。

給茶器がドライブコースにない場合については、食事の際にもしいただけるようならお茶でなく白湯を出してもらえるようにお店の方にお願いしてみましょう。あと、大切なことですが、白湯ではなくお茶やコーヒーで水分補給をすると、それらの飲物には利尿作用があることが知られている通り、すぐに体外に水分を出してしまうことになります。夏はお水で、冬は少しぬるめの白湯で水分補給するのがいいと思います。

シャープ「ザウルス」の顧客向けサポート終了に思うこと

スマートフォンを当り前に使っている方には全く縁のない話かも知れませんが、先日、台湾企業から支援を受けて経営再建をめざすシャープがかつて販売していた電子手帳「ザウルス」について、その顧客向けサポートを2016年3月末日で終了するというアナウンスがありました。

私自身は、実は「ザウルス」として値段を下げて発売する前の、今考えると相当高価だった電子手帳の時代からこのシリーズにはお世話になっていました。まだインターネットが一般的でない時代、住所録やスケジュール、ToDoをタッチペンを使って入力し、いつでも呼び出せるというのは実に効率的で、紙の手帳に直接書いていた頃にはまだ消せるボールペンなどない時代だったので、急なスケジュール変更になり何回も消して書いてを繰り返せる電子手帳は大変便利でした。

また、「ザウルス」は本体だけで完結するハードではなく、様々な周辺機器を買い足すことで実に色々なことができました。FAXモデムをつなげばパソコン通信やそれを利用したメールの送受信、もちろんファクシミリの送受信もできました。さらに携帯電話との接続ケーブルで直接通信できたり、パソコンとつなぐことによってパソコン内のデータを持って来ることができました。同時期にシャープは当時のアップルが出していたモバイル機器「Newton MessegePad」の製作にも関わっており、モバイル端末製造についての信頼はその頃から私の中にはあります。

私のモバイル遍歴を考えた時、その時に利用していたPHS電話機と固定電話を「ザウルス」に接続するためのFAXモデムを専用ケーブルでつなぐと、PHSの音質がその当時は相当によかったため、固定電話とつないだ時と同じように「見なし音声」と呼ばれるネット接続が可能だったので、旅にザウルスだけを持って行きながら、それにPHS電話機を繋ぎ、まだ携帯電話のiモードがない時代から外出先でのメールチェックなどを行なっていました。

ザウルス自体が紙の手帳の大きさぐらいだったので、むしろ今よりも荷物は少なくモバイル通信を行なうことができて大変お世話になりました。「ザウルス」自体はその後の携帯電話単体でのネット接続およびメールができるようになったことでその使命を終えた感がありますが、その思想は今のスマートフォンに引き継がれており、当時私が「ザウルス」を使ってやっていたことをそのままスマートフォンでやっていることも少なくありません。

あと、ザウルスの事で思い出すのは、カラーのザウルスが出てその事をネットで紹介したホームページを作ったところ、どうしても特定の型番のカラーザウルスが欲しいとドイツ在住のドイツ人の方が直接取引を要求するメールが届き、来日時にこちらの最寄り駅まで受け取りに来るというので、何とかその人の予算の範囲内でカラーザウルスを購入して(今考えると数万という建て替えをしていたのですが(^^;))受け渡しをしたことがあります。それまで、ザウルスはあくまで日本でのみ使われている電子手帳だと思っていたのですが、海外のガジェット好きの人にも魅力ある端末だったのだなとしみじみ思いますね。

もしも日本の携帯電話の仕組みが、iモードのような一つの通信会社に囲い込むようなメールアドレスやインターネットの仕組みなどではなく、もっと自由な形で使える規格を作って、その中でザウルスを開発できていれば、シャープが今のiPhoneやiPadのような「ザウルス」を出し、それが世界を席巻する可能性はあったと思います。当然、ハードは通信会社のひも付けではなく家電量販店でSIMフリー端末の形で売られ、自由に通信会社を選べるような形にしていれば、かなり早い時期に日本でスマートフォンが一般化し、ソニーなども対抗製品を出してきたのではないかと思います。

当時のソニーはPalmOSを使ったものを出していたので、もしかしたらそちらの方に浮気していたかも知れませんが(^^;)、国内での競争が起これば今ごろはデジカメ並みにスマートフォンと言えば日本製ということになっていたかも知れません。そんな感じになっていれば、三洋電機あたりも松下電器に吸収されることもなかったのではと、あらぬ妄想もしたくなるというものです。

残念ながら現在の通信端末の状況は、通信会社の中だけで縛ることだけでなく、私がかつて契約していた中ではイーモバイル(現在のY!mobile)では、Nexus5に入っていたSIMカードなどは同社のスマートフォンであっても使えないようになっていました。正確に言うと、事実上Nexus5ともう一機種でしか使えなくなっていて、もしハードの故障があった場合どうするのかと思ってとっとと契約を解消し、改めてMVNOのSIMを入れて現在は使っています。なぜ同じ会社の中でもSIMカードの違いによって使えるカードとそうでないカードを作るのか? と思います。SIMロック外しも一定期間を空けないとできないという話も聞きますし、今もなお、私たちがスマートフォンを選ぶにあたっての不自由な状況は続いているのです。

そういった状況の中、「ザウルス」の息の根が完全に止まるというのは実に感慨深いですね。最近になってようやく、複数の会社のSIMカードが使えるスマホやモバイルルーターが国内メーカーから出てきましたが、そうしたSIMフリーのスマホでは通信会社が行なっている機能の中で使えないものもまだ少なくなく、まだ完全にユーザーがどの通信会社と契約しても自由に使えるハードが出ているわけではありません。こうした状況が続く限りは日本メーカーはなかなか再浮上していかないのではないかとすら個人的には思ってしまいます。

サーモス真空断熱アイスコンテナー FHK-2200

今年の夏を前にして、サーモスからまた面白そうな製品が出てきました。フードコンテナーの発展形とでも言うべき、「アイスコンテナー」です。これは、氷を運ぶことを考えて作られた製品で、ステンレス製の真空断熱構造の魔法瓶の中に内容器が2つ入り、この内容器に氷を入れることで氷を溶かさずに長時間持たすことが可能になります。

容器を2つに分けたことで、中で氷がくっつくことを避け、さらに容器を一つだけにして空いた空間に氷のうや食品を入れて持ち運ぶ事も可能になります。ちなみに、内容器一個あたりの容量は0.7lで、一般的な氷が2つの内容器で約60個(3×3×2cmの角氷)入るとのことです。1つの内容器には氷が約400グラム入るとのことなので、外で氷を購入する際の参考にして下さい。

この製品は一シーズンの一発屋的な製品として終わるのか、フードコンテナーのように他社からも同じような製品が出るほどのヒットになるのかはわかりませんが、車中泊のためにいろんなものを車に入れており、大きなクーラーボックスを持って行けないという場合に役に立つケースは出てきそうです。

というのも、バーベキューなどで食材を出発時から持って行くのでなく、旅先でどうしても冷やしたまま持ち帰りたいものが急にできてしまった場合にクーラーボックスを使いたいという場合を想定しています。ハードクーラーボックスを車中泊の旅にそうした理由で持って行く場合、何も入っていない大きなクーラーボックスに入っているのは保冷剤のみで、もし出先で何も冷やしてまで持って帰ろうと思うものがなければ、単にクーラーボックスが車の中のスペースを占拠するだけの存在になってしまいます。

このアイスコンテナーの場合、出発時から氷を入れて持って行く必要すらありません。クーラーボックスは折りたたみできるソフトクーラーボックスにすれば、とりあえず冷蔵が必要な買い物をして、保冷剤どいっしょに入れつつ、別に「ロックアイス」のようなこのアイスコンテナーの内容器に収まるような氷をコンビニで調達したら、購入場所でもらった保冷剤が溶けてしまった頃を見計らって氷を一容器ずつ補給していけば、ソフトクーラーボックス内の温度を上げてしまう恐れは減ります。もちろん、出発時から氷と出先で冷やして食べたいものを内容器の一つずつに入れて持って行ってもいいのですが、この製品が小さくて持ち運びしやすいということもあり、中に氷を入れるのを忘れてもどうとでもなるということで、あるうちに一つ確保しておきたいと思える品です。

Google自動運転車の起こした事故の内容を見ると

未来の乗り物とされる機械による自動運転というのは、今までの自動車の概念を変えるのではないかと思える程のインパクトが有ります。いわゆる、  レールや専用レーンだけを走る自動運転車ではなく、公道を自動運転で走るには、かなりの乗り越えなければならないハードルが立ちはだかります。

そんな中、自動運転の実験を繰り返していた米国のGoogleが作った自動運転車が試験走行中に事故を起こしたということがニュースになっています。ただ、今回の事故についての報道の内容を詳しく見ると、なかなか全ての事故を避けることは難しい事がわかってきます。

事故の内容はこんなものです。自動運転車は交差点を右折するために道路の右側で止まっていて、普通ならそのまま信号が変われば交差点の中に入って車の切れ目を狙って右折すればいいわけですが、その道路の右側の一部に土のうが積まれており、右折するためにはいったん土のうをかわすために道の中央に戻りつつ、また右側に行き交差点に入る必要がありました。

後ろからやって来る車には当然その様子が見えていたはずで、もし先に自動運転車が進むのが見えたら、その動きを待ってから自動運転車の左側をすり抜けるように進む必要がありました。しかし、実際に自動運転車とぶつかったバスはそうした配慮をすることなく自動運転車が進まないだろうと思って進んでしまったのでしょう。さらに、自動運転車も後ろのバスは待ってくれるだろうと自動運転車が判断したことで事故になってしまったということです。

この手の事故は止まっている車に追突されたのではなく、相方動いているためお互いの過失割合が出ることになってしまうので、そういった過失のある事故を自動運転車がしてしまったことが大きなニュースになったということなのです。

同じケースに遭遇したら、自分でも全く事故にならないかと言われれば絶対起こさないとは言えないでしょう。ただ、地元のバスは道を譲らずに入ってくるというような、きわめてローカルな情報を知っていたらあえてバスが行くのを待ってからスタートしたかも知れませんし、旅行で初めて来た地であったらそうした細かい情報が入らないのでそのまま進んだかも知れません。つまり、こうした細かい情報によって事故が起きるか起きないかが変わってくるとしたら、相当な情報量を車にインプットしなければならず、どこまでの情報をインプットすればいいのかというのは今後議論になってくるのではないでしょうか。

さらに、ニュースを読んで思ったことは、自動運転でない車を運転していて自動運転車と事故を起こしたケースを想定すると、相手の過失を認めさせるためにはかなり大変ではないかということです。まだ実験段階なら誤作動もあるでしょうが、市販レベルの自動運転車が出てきたとしたら、リコール級の不都合が証明されなければ、機械が運転を誤るはずがないという風に話が進み、もし自動運転プログラムの内容に問題があったと後でわかったとしても、それが軽度なら見過ごされる形で過失割合のうち、より多くの過失をしたととられてしまう事も起きそうです。

現状ではすぐに今の車が全て自動運転車に置き換わるのではなく、しばらくは手動運転のみの車と混在しながら走るようになると思いますが、全てが自動運転でなくても、人間の動きを助ける形で自動運転車のための技術が利用されていくことにはなるでしょう。そこから、当り前に自動運転車が走るまでの間というのは時間がかかるにしても、私たちは自動運転車と一緒の公道を走る世界での対策というのは徐々に考えておいた方がいいような気がします。少なくともドライブレコーダーの車載くらいはやっておき、いざという時のために、自分の正当性を客観的に証明する手段を持っておいた方がいいかなと考えさせられた今回のニュースでした。

今後の消費税対策に少額の普通切手の用意を

年度末ということで国会での論戦が盛んになってきています。今のところ、来年2017年からの消費税10%は決まるのかどうかわかりませんが、政治に関心がない人でも実際の消費活動に影響が出てくるのですから考えなければいけないところです。

多くの場合、今後出費するお金が増えるということになるのですが、私がもしもの時のためにと家の中や車の中に入れてあるハガキ(返事をもらいたい場合は往復はがきが有効、電話網が使えなくても連絡が取れます)と、ミニレター(切手のように糊代が付いた一枚の紙で、内部に通信文を書くことができ、25gまでの薄いものなら、中に入れて送ることができ、しかも封書より安い「ミニレター」とも呼ばれる郵便物です)を備えているのですが、実はそれらのものは消費税が8%に上がる前に入手したので、このままではポストに入れると料金が足りないということになってしまいます。

先方に出した場合、先方に料金を請求されることになるので、こうした料金が足りなくなる事はできるだけ避けたいものです。というわけで、今さらではありますが、ハガキにもミニレターにも一枚貼ればそのまま出せるように普通切手の額面が「2円」の切手を買ってきました。

ただ、消費税が8%のままならこれでもいいのですが、来年消費税が10%に上がった場合にどうするかということも気になります。現在のハガキは52円、25gまでの封書は82円、ミニレターは62円ということで全て2円増しで大丈夫なのですが、現在郵便会社の中でも配達業務が赤字だと聞きますので、55円・88円・66円という消費税通りに値上げされることも考えておかなければいけないでしょう。今回はついでにその点も考えて「3円」の切手も買ってきました。

これなら5円だと「2円」と「3円」で、6円だと「3円」2枚で、8円では「2円」と「3円」2枚で額面通りの料金の切手を貼ることができます。とりあえず各10枚ずつ買ってきましたので直接の負担は50円で、自宅にある古いハガキを活用することができます。

以前にも書きましたが、大きな災害の後では郵便しか連絡手段が取れないケースも起こりかねません。もちろん、災害時にはハガキや切手、ミニレターを直接入手することは難しいでしょうから、事前に買っておくだけでなく、消費税が上がることでの影響を避けるためにはこうした少額の普通切手の用意は欠かせないでしょう。

 

 

個人的には多少の郵便料金の値上げは仕方ないとしても、今後消費税が上がるたびに新たに違う額面のハガキや切手などを印刷する手間を掛けるなら、何とか同じ額面のもので使えるようにして欲しいと思うのですが。

それを考えると以前はワンコインの500円でいろいろ送ることができていた「レターパックプラス」や、さらに安く350円で書類などを送れていた「レターパックライト」の値段がそれぞれ510円と360円になったように、消費税10%でまた価格が変わってしまうことになってきます。すでに今使える「レターパック」を多く持っている場合には私のような少額切手を用意する場合には、額面「10円」の切手を多数用意しておくのが無難でしょう。特に「レターパックプラス」の方はとにかく封筒が閉まる程度に詰め込んで送っても大丈夫なので、まとめて用意してあるご家庭もあるのではないでしょうか。いざという時に料金が足りなくてポストに入れて送ることができないという事がないように、しっかりと準備しておきましょう。

西田善夫さんを悼む

 元NHKのアナウンサーで解説委員、横浜国際総合競技場の初代場長としても活躍された西田善夫さんが80才で亡くなられました。このブログの内容とはほとんど関係ありませんが、個人的には機会があれば講演会などへ出向いて直接お会いしたいと思うほど好きなアナウンサーでしたが、その願いは叶いませんでした。そんなわけで、その想いも込めてここで、私なりの西田さんに対する思い出などを書かせていただきたいと思います。

このブログではしばしば今の日本のテレビについて言及することがありますが、テレビというメディアは同時に多くの人の目を集中させ、その感動なり悲しみを共有できるものです。ドラマとかバラエティは作り手の考えを一方的に伝えるだけですが、生中継のライブというものは放送すると同時に多くの人の目が集まります。その中で、実況をするアナウンサーが現地の様子をどのように伝えるのか、それによってテレビを見ている人の印象も変わってくることがあります。

西田さんはスポーツアナウンサーとして多くの感動を生む現場に立ち合ってきた方です。若い頃からラジオから聞こえてくるオリンピック中継に興味を抱き、1964年の東京オリンピックから実況放送の現場に立ち合っています。その際、若手なのになぜ抜擢されたのかというと、担当のバレーボールについて、当時は9人制が主流の中でいち早く6人制バレーボールの審判研修に出向くなど、実況のためにそのスポーツを探く掘り下げる行動が評価されたということのようです。

アナウンサーとしての初任地が北海道の室蘭だったこともあり多くのウィンタースポーツ、特にアイスホッケーの実況でも定評があり、1980年レークプラシッドオリンピックの男子アイスホッケー決勝戦で、当時アマチュアで敵無しと言われたソビエトをアメリカのアマチュアチームが破ったことで奇跡と言われた「アメリカ合衆国」VS「ソビエト連邦」の試合の実況も担当しました。

新聞の追悼欄にはバレーボールの名実況や野球の実況に関しての経歴が紹介されていましたが、私が西田さんのすごさを認識したのが1984年に開催されたサラエボオリンピックのスピードスケート男子500mの実況でした。

当時は日本のスピードスケートのメダリストはおらず、その第一号として相当期待されていたのが黒岩彰選手でした。カーブを曲る技術は世界一と評され、前年の世界スプリント選手権で総合優勝という成績をたたきだしていた黒岩選手は、日本の期待を一身に受けレースに臨むこととなったのです。現地レースが大雪の影響で5時間遅れたことで、レースが始まったのが日本時間の深夜でしたが、当時の日本から応援する人は眠い目をこすりながら日本初のメダルの瞬間を見逃すまいと注目していたのです。

現地の天候は開始時間を遅らせてなお最悪で、野外リンクの上に雪が降りつもるようなレーンコンディションでした。その上、当時のレースは抽選でインコースかアウトコースか決められたらそのコースでの一発勝負になる決まりでした。もし黒岩選手が長野オリンピックの頃にピークがあったら、その技術を十分に見せた上での好成績が期待できたのかも知れませんが、残念なことに黒岩選手が引いたくじは全ての選手において不利となるアウトコースからのスタートだったのです。

加えて大粒の雪が黒岩選手の技術を阻み、当然同走者にも敗れた黒岩選手のタイムの横には「5」という数字が表示されました。

「黒岩、メダルの希望がなくなりました」

実況を担当した西田さんのある意味冷酷なまでのこの一言は、国内で大いに期待して中継を見ていた人たちを現実の世界に引き戻すかのようなアナウンスでした。しかし、黒岩選手のすぐ後のレースでさらなるサプライズが待っていたのです。

日本のレース出場者の中で、黒岩選手以外はほとんど顧みられなかった中、本番における一発の魅力があるということで選手された選手がいました。それが当時法政大学の学生だった北沢欣浩選手でした。彼自身、黒岩選手の影に隠れる形で全く注目されていませんでしたが、その分、自分のルーティーンを守って普段通りの状態でレースに臨むことができたのです。北沢選手は大雪に対する自分の滑りについても冷静に分折していて、カーブでの技術よりも雪を蹴散らすように滑るというより走るという、力の滑りを心掛けたことで、同走者を引き離してゴールしました。

「北沢、二位の記録です」

西田さんはこうアナウンスしたと思いますが、この時点では単に北沢選手が黒岩選手の上に行ったくらいの認識しか西田さんにもなかったと思います。その後、大雪の天候が続く中で有力選手が全く記録を伸ばせない中、北沢選手のメダルへの期待がどんどん高まっていったのです。そのうちに西田さんの興奮はテレビを見ているこちらが大笑いしてしまうほどにヒートアップしていきます。

「皆さんは、恐らく北沢の「き」の字も御存知ないと思います」

と言いながら北沢選手のプロフィールを紹介していましたが、このアナウンスなどは、ほとんどの日本の視聴者が思っていたことを代弁するようなコメントでした。さらにメダルが確定するかどうかという時になると、その興奮度は半端ではなく、順位の記されたボードを紹介しながら、見ているこちらも失笑してしまうようなアナウンスを発しました。

「現地の人々は北沢の名前を知りません!!」

 日本で応援している人すら当日のレースまでその名前を知らなかったのですから、それも当り前の事なのですが、それほどの意外性ある事を強調したコメントを出していたのでした。そして、全ての選手が滑り終わり、北沢選手の銀メダルが確定した時にはついにこう叫んだのです。

「”一発”の北沢、やりました!!」

こうしたフレーズ(以上の言葉は、ほぼ私の記憶に基づいたものなので、細かい所に違いがあるかもしれませんが、その点はご了承下さい)を西田さんが連呼することで、いかにこの結果が偉業であるのかを私達に伝えてくれたように思います。西田さんとしてもウィンタースポーツを多く見ながら、なかなかメダルに届かない日本のスピードスケートの事情を相当取材しており、いかにこのメダルが関係者にとって悲願だったかを知っていたからこそ、あのような実況になったのでしょう。

その後、その年の新語・流行語として「現代用語の基礎知識」に若者言葉として掲載されたのが「黒岩る」(事前に大いに期待されていたが、本番で実力を発揮できないこと)、「北沢る」(事前に期待されていなかった人が、本番でいい結果を出すこと)という新語でした。こうした言葉が少しの期間でも使われた裏には、日本人の多くがサラエボオリンピックのテレビを見ており、私と同じようにレースを伝えた西田さんの語り口に大いなる影響を受けたからではと今でも思っています。

このように、いくら事前に想像していたことでも、それに反するとんでもない事が起こったりすることがスポーツの面白さで、実況中継をするアナウンサーはその感動をしっかりと伝えられるかどうかによって、評価が決まると思えるようになりました。それはインターネットが主体となった今の時代でも変わりません。これまでのオリンピックでも感動するアナウンスは多くありますが、これはあくまで個人的なことになりますが、事前にある程度こうなったらこう言おうと思っていて、その通り実況するというのはアナウンサー本人の興奮はそれほど伝わってきません。それよりも、嬉しくなりすぎて絶句してしまうようなアナウンサーや解説者の方に感動をもらう事があるほどです。

それは例えば、バルセロナオリンピックで岩崎恭子さんが金メダルを取った時に解説だった高橋繁浩さんの「やった!」という叫びです。過去にメダル候補と言われながら、高橋氏個人潰しとしか今となっては思えない彼のスタイルである水没泳法が泳法違反で何度も失格を取られた経験や、教え子である林亨選手がわずかの差でオリンピックのメダルに届かなかったという過去があるからこその叫びであったでしょう。

テレビ観戦している側としては、そうした情報も紹介してもらいながら、放送席の歓喜の瞬間の感動を多くの人々に伝えるようなアナウンスを、選手の頑張り以上に求めたいですし、西田さんはそうした事を考えつつも的確に現地の感動を伝えてくれた名アナウンサーだったと思います。今後、西田さんに続くような、テレビ観戦している人を大いに盛り上げる名調子を発してくれる人は現れるのでしょうか。

故人のご冥福をお祈りいたします。