シャープ「ザウルス」の顧客向けサポート終了に思うこと

スマートフォンを当り前に使っている方には全く縁のない話かも知れませんが、先日、台湾企業から支援を受けて経営再建をめざすシャープがかつて販売していた電子手帳「ザウルス」について、その顧客向けサポートを2016年3月末日で終了するというアナウンスがありました。

私自身は、実は「ザウルス」として値段を下げて発売する前の、今考えると相当高価だった電子手帳の時代からこのシリーズにはお世話になっていました。まだインターネットが一般的でない時代、住所録やスケジュール、ToDoをタッチペンを使って入力し、いつでも呼び出せるというのは実に効率的で、紙の手帳に直接書いていた頃にはまだ消せるボールペンなどない時代だったので、急なスケジュール変更になり何回も消して書いてを繰り返せる電子手帳は大変便利でした。

また、「ザウルス」は本体だけで完結するハードではなく、様々な周辺機器を買い足すことで実に色々なことができました。FAXモデムをつなげばパソコン通信やそれを利用したメールの送受信、もちろんファクシミリの送受信もできました。さらに携帯電話との接続ケーブルで直接通信できたり、パソコンとつなぐことによってパソコン内のデータを持って来ることができました。同時期にシャープは当時のアップルが出していたモバイル機器「Newton MessegePad」の製作にも関わっており、モバイル端末製造についての信頼はその頃から私の中にはあります。

私のモバイル遍歴を考えた時、その時に利用していたPHS電話機と固定電話を「ザウルス」に接続するためのFAXモデムを専用ケーブルでつなぐと、PHSの音質がその当時は相当によかったため、固定電話とつないだ時と同じように「見なし音声」と呼ばれるネット接続が可能だったので、旅にザウルスだけを持って行きながら、それにPHS電話機を繋ぎ、まだ携帯電話のiモードがない時代から外出先でのメールチェックなどを行なっていました。

ザウルス自体が紙の手帳の大きさぐらいだったので、むしろ今よりも荷物は少なくモバイル通信を行なうことができて大変お世話になりました。「ザウルス」自体はその後の携帯電話単体でのネット接続およびメールができるようになったことでその使命を終えた感がありますが、その思想は今のスマートフォンに引き継がれており、当時私が「ザウルス」を使ってやっていたことをそのままスマートフォンでやっていることも少なくありません。

あと、ザウルスの事で思い出すのは、カラーのザウルスが出てその事をネットで紹介したホームページを作ったところ、どうしても特定の型番のカラーザウルスが欲しいとドイツ在住のドイツ人の方が直接取引を要求するメールが届き、来日時にこちらの最寄り駅まで受け取りに来るというので、何とかその人の予算の範囲内でカラーザウルスを購入して(今考えると数万という建て替えをしていたのですが(^^;))受け渡しをしたことがあります。それまで、ザウルスはあくまで日本でのみ使われている電子手帳だと思っていたのですが、海外のガジェット好きの人にも魅力ある端末だったのだなとしみじみ思いますね。

もしも日本の携帯電話の仕組みが、iモードのような一つの通信会社に囲い込むようなメールアドレスやインターネットの仕組みなどではなく、もっと自由な形で使える規格を作って、その中でザウルスを開発できていれば、シャープが今のiPhoneやiPadのような「ザウルス」を出し、それが世界を席巻する可能性はあったと思います。当然、ハードは通信会社のひも付けではなく家電量販店でSIMフリー端末の形で売られ、自由に通信会社を選べるような形にしていれば、かなり早い時期に日本でスマートフォンが一般化し、ソニーなども対抗製品を出してきたのではないかと思います。

当時のソニーはPalmOSを使ったものを出していたので、もしかしたらそちらの方に浮気していたかも知れませんが(^^;)、国内での競争が起これば今ごろはデジカメ並みにスマートフォンと言えば日本製ということになっていたかも知れません。そんな感じになっていれば、三洋電機あたりも松下電器に吸収されることもなかったのではと、あらぬ妄想もしたくなるというものです。

残念ながら現在の通信端末の状況は、通信会社の中だけで縛ることだけでなく、私がかつて契約していた中ではイーモバイル(現在のY!mobile)では、Nexus5に入っていたSIMカードなどは同社のスマートフォンであっても使えないようになっていました。正確に言うと、事実上Nexus5ともう一機種でしか使えなくなっていて、もしハードの故障があった場合どうするのかと思ってとっとと契約を解消し、改めてMVNOのSIMを入れて現在は使っています。なぜ同じ会社の中でもSIMカードの違いによって使えるカードとそうでないカードを作るのか? と思います。SIMロック外しも一定期間を空けないとできないという話も聞きますし、今もなお、私たちがスマートフォンを選ぶにあたっての不自由な状況は続いているのです。

そういった状況の中、「ザウルス」の息の根が完全に止まるというのは実に感慨深いですね。最近になってようやく、複数の会社のSIMカードが使えるスマホやモバイルルーターが国内メーカーから出てきましたが、そうしたSIMフリーのスマホでは通信会社が行なっている機能の中で使えないものもまだ少なくなく、まだ完全にユーザーがどの通信会社と契約しても自由に使えるハードが出ているわけではありません。こうした状況が続く限りは日本メーカーはなかなか再浮上していかないのではないかとすら個人的には思ってしまいます。


カテゴリー: モバイル関連コラム | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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シャープ「ザウルス」の顧客向けサポート終了に思うこと」への4件のフィードバック

  1. けいたいまにあ

    日本が囲い込みをしたのは、外国から安い端末で国産機種が駆逐される恐れからだと思っていますが、
    国産メーカが作ったのは重くて不具合続出の使い物にならないようなandroidでスマホの評判を下げ、
    結局売れたのはアップルの高級品というのは非常に皮肉ですね。
    まあ、通信費込の支払いではアップルのほうが国産スマホより安かったというのもありますが
    最近、調べていてandroid2くらいの初期のころには意欲的な機種がたくさんでていたのは驚きました。
    今売られているのはiphoneベースにしたような似たような端末で選ぶ楽しみがあまりできませんが、
    結局売れないと作れないということにつきますね。
    国産メーカーをキャリアが支えていたおかげでいろいろ作れたのでしょう。

  2. てら

    携帯電話の時代から、端末は日本メーカーが作るのが当たり前だと思っていたのがそれこそザウルスが売れていた頃でした。
    その後、韓国や台湾、中国のメーカーが入ってきて、当たり前のようにそちらの製品を使うようになってしまいました。端末自体の安さということもありますが、基本的な部分の構造が同じなため、どこで作ってもそう差がでなくなったということも理由の一つだと思います。
    一通りのことをこなせるものと割り切れば安くていいとも言えるわけで、住み分けをするような形で安価でもそこそこ使えるハードの提供が続くのはそれはそれで嬉しいことです。ただ、ガラケーの時代からついていた機能をスマホでも使えるように、日本のメーカーもSIMフリースマホの開発には力を入れてほしいものだと思っています。

  3. >シャープ「ザウルス」の顧客向けサポート終了に思うこと
    顧客向けサポートの中身が何か理解しているの?
    「顧客向けサポート」と書いているのでアイティーメディアの情報しか見ていないじゃないの?
    メディアの情報を鵜呑みしないでシャープの公式サイトみたの?
    2016年3月31日に終了するのは何なのか理解していないじゃないの?

  4. てら

    「ザウルス」の顧客向けサポート終了について、何が終了するかという事につきましては、顧客向けの相談窓口(専用フリーダイヤル)であることは理解した上で書かせていただいております。
    ワープロのようにすでに新たな機種の販売がないまま推移し、今後修理のための部品も少なくなるであろう中でシャープという会社自体の経営再建のための買収話も大きなニュースになっています。そんなニュースを見ながらシャープという企業の出した製品を思い出す中で、「ザウルス」のサービスも徐々に縮小していくのだなあと少々感傷的になりながら書いてしまったことがご気分を害されたのだとしたら誠に申し訳ありません。
    その当時からモバイル機器を買って使っていた身からすると、国産のモバイル端末も「ザウルス」だけでなくトロンOSが入っていた「TiPO」なんてものもありましたし、こうしたものが残らなかったのは残念です。

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