ページャー・ポケットベルの一般サービス停止の報にふれて

一世を風靡した通信機器であるポケットベル(「ポケベル」は略称でポケットベルは商標なのでページャーと呼ばれることも)のサービスを現在まだ行なっている東京テレメッセージが、2019年9月いっぱいで停止することを発表しました。まだ基本料が高くて携帯電話を個人で持つことが難しかった時代には、毎月の利用料が安かったこともあり学生に大流行したことは過去の流行りものを紹介するテレビ番組でたまに出てきますが、さすがに今後はフードコートや病院・金融機関の待合室での呼び出しや、災害用のラジオとともに緊急情報を文字で伝えるサービスなど、主に業務用としてのみ生き残るような感じになってくるのでしょう。

サービス開始当初の利用のしかたは、サラリーマンが営業職の人に持たせて、ポケットベルが鳴ったら折返し会社に電話するというパターンで使われていたのですが、ポケットベルで数字や文字が送ることが出来るようになったことで、用途が変わってきたことも確かです。

数字しか表示できない頃には、数字の組み合わせに意味を持たせて数字だけのやり取りでコミュニケーションを取ることがブームになりましたが、当時は発信するためには公衆電話を使うしかなかったので、公衆電話に並んでベル送信のための順番待ちをする光景が普通に見られたこともありました。

さらに、数字の組み合わせでカナ文字が送れるようになったことで、今でもガラケーやスマホで日本語入力する場合の「ベル打ち」という入力方法が生まれたことも、ポケットベルという文化があったおかげだと言えます。この入力方式は2タッチ式でガラケーでの日本語入力や、あえてスマホのアプリでベル打ちを実現するとか、今に至ってもその影響が残っている点だと言えます。

この他、定型文を表示する機能を使って、簡単に仕事などの用件を伝えることもできるようになり、一部漢字での表記にも対応しました。同一エリアに天気予報などの情報を一斉送信するサービスも当時からありました。私自身もその時期にポケベルを使っていましたが、当時はもちろんまだ携帯電話が高額で、過去には保証金を別に払わないと使えない時代もありましたので、特に旅行中に自宅に電話が入った場合に連絡が付くように、仕事でなくてもポケットベルを持って行って便利に使っていました。

当時のドコモのポケットベルサービスは、日本全国のサービスではありましたが地域によって呼び出し局が変わっていたので、全国を車で移動して呼日出しエリアが変わってしまった場合センターに電話して呼び出しエリアを現在地に変える必要がありました。そうしてエリアの変更にさえ気を付ければ、かなり山の中に入ってもポケットベルの呼び出し電波を受信することができたので、留守電にメッセージが入った時に電話機に転送機能があるものを使い、ポケベルに向けて「留守電メッセージあり」という定型文を自分のポケットベルに飛ばす設定にしていました。こうして留守電に何か入ったらすぐに通知してくれるシステムがあると、何か自分に対して連絡を取りたい人がいたとして、自宅の電話に留守番メッセージを残しておいてくれればポケットベルが鳴るので、そこで外から留守電の内容を聞いて(自宅の番号に電話してそこからプッシュトーンを送信すると電話に入っている留守番電話に入っているメッセージを聞くことができます)改めて相手に電話をするという流れをつくっていました。

今では直接スマホに電話かショートメールをもらえればそれでいいのですが、携帯電話がなくポケットベルだけの環境でも留守番メッセージがいつ入ったのかわかり、当時はそこかしこに公衆電話があったのでそこから留守電を聞き、必要があれば相手に公衆電話から連絡することもできました。

さらに今ではできませんが、当時は公衆電話からの電話代を後払いにできる専用のカードを電話会社に申し込むと発行してもらうことができました。専用カードを電話機に入れて発信した通話料は自宅の電話代と同じタイミングで決済されるので、コインやテレフォンカードのように途中で残高が0になって切れてしまうことがなく大変便利でした。今ではカード式の公衆電話の使い方がわからないなんて話もあるくらい公衆電話が使われなくなってしまいましたが、当時は携帯電話がなくても「ポケットベル」と「公衆電話」の組み合わせで全国どこへいても連絡を付けることはできていました。ただ、ポケベルを鳴らしても気付かずにコールバックしてこなければ連絡は付きません。当時は携帯電話を使っている人は少なかったので、常にそうした連絡は把握することはできても、すぐに返答して対応することまでは要求されない、ある種の人々にとってはいい時代だったと思います。

ポケットベルを私が手離したきっかけは、現在のソフトバンクモバイルで当時のJ-PHONEが「スカイメール」というサービスを始めたことにあります。いわゆるキャリアメールなのですが、最初の全角64文字まで(タイトル含む)までは基本料金だけの通信料無料で受信できたので、携帯電話でメールを使えるならポケットベルのような使い方ができ、さらにエリアの切り替えも必要ありませんでした。当然その頃には携帯電話を契約するための保証金がなくなり、端末代も0円で売られることが普通で、さらに毎月の基本料金が下がってきたことで携帯電話を多くの人が持てるようになると、多くのポケットベルユーザーが私のように携帯電話のメールに移行してユーザーを減らしていったのだろうと思います。

現在の東京テレメッセージの契約者は1,500人に届かないくらいということで(^^;)、さすがにそんな人数ではサービスを続ければ続けるだけ赤字になるだろうなと思うので、人々のポケットベルに対する郷愁とは別に、業務用としての用途は残す形でそのまま成仏させてあげるというのが正しいポケットベルの見送り方なのではないでしょうか。


カテゴリー: 通信サービス全般ニュース | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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