アメリカのプロ野球(MLB)のナンバー1を決める試合の事を「ワールドシリーズ」と呼びます。最近になってWBCという国別対抗戦が始まったことで、なぜ一つの国で行なわれるプロの試合に過ぎない試合に「ワールドシリーズ」と付くのかと疑問を持つ方もいたと思うのですが、昨日のロサンゼルスで行なわれたトロント・ブルージェイズ対ロサンゼルス・ドジャースの延長18回、六時間を超える試合を観てしまうと、もはや国別対抗戦であるWBCすら霞んでしまう感じがしました。
というのも、そもそもなぜ延長が18回まで続くのかということを考えてみると、最近の野球に関するルールがかなり変わっている中で、頑なに変えない一つの「ルール」が見えてきます。MLBのレギュラーシーズン(リーグ戦)では延長になるとタイブレークで「ノーアウトランナー二塁」から始まりますが、チャンピオンを決めるポストシーズンに入るとそのルールは撤廃され、決着が着くまでアドバンテージ無しで試合が続きます。結果、昨日のワールドシリーズのように延々と延長戦が続くような事も起こってきます。
WBCの場合はMLBのレギュラーシーズンと同じように延長は「ノーアウトランナー二塁」からのタイブレークがあり、ピッチャーの投球制限もあります。WBCの場合、各国のプロ野球の選手が選抜されてくるので、どうしても本国リーグ優先という形でルールが作られていて、その分いつ終わるかわからないような試合が続くパターンにはなりにくいですが、テレビ中継などの関係で長時間の試合は行ないたくないようなルール設定になっています。
日本の高校野球についても「ノーアウト一塁二塁」から延長をスタートする方式に変わって試合が行なわれるようになってからは、スリリングな接戦はあっても、過去の名試合のような延長十八回再試合とか、延長十九回、二十五回(最長の甲子園での延長戦)のような試合は見られなくなっています。高校野球の場合はまだ成長期の生徒を疲弊させるという批判もあり、スピーディに決着を付けることが多くの人の支持を得ていますが、日本でも試合登録人数が多いプロ野球の日本シリーズくらいは徹底的に延長戦を行なうようにしても面白いのではないかと思ったりもします。
そういえば、昔の日本シリーズは平日でもお昼からのプレーボールでした。これなら、昨日の6時間超のとんでもない試合であっても、夕方から夜には終わりますが、現在のように午後6時から始まるような場合だと終了時にはもう翌日の午前0時を過ぎてしまいます。あと、日本シリーズはタイブレークは無いと思いますが、最終戦を除けば(最終戦は決着が着くまで行なわれる)延長12回で打ち切り(引き分け)になっているので、戦略を色々考えるには面白いかも知れませんが、サスペンデット(一時中止)試合の規定も日本のプロ野球では無くなっているので、いつ終わるともわからない試合を見る楽しみというのはMLBのプレーオフ(ワールドシリーズを含む)のみになってしまいました。
考えてみると、ほとんどのスポーツは予定された時間通りに終了するため、その日の予定がスポーツ観戦(テレビ含む)で崩れることはないのですが、昨日はさすがに途中で試合を見るのを止めるわけにもいかず、一日テレビの前から離れられないということはありません。しかしだからこそ面白いですし、後々まで語られるような共通の記憶になるような試合が生まれるわけで、日本の人気プレーヤーがMLBを目指すのもわかるような気がします。
日本のプロ野球も面白いですが、限られた試合くらい一切の制限を外したルールで、テレビ中継の事など考えず(今の時代はサブチャンネルもネット配信もあるので見たい人はとことん見られるようになっています)、行なえるようにあって欲しいと昨日の試合を通して見てしまった事で思いました。