2025年7月23日に、東京都品川区にあるマンションの部屋から出火し、5人の怪我人が出たという火事のニュースがありました。この内容はネットニュースで知りましたが、その内容を報じたニュースの中で地元警察が「部屋で充電をしていたハンディファンから出火した」としていました。
最近、うだるような暑さでハンディファンを手で持ったり首からぶら下げたりして歩いている姿をよく見掛けますが、粗悪な品であったり古いものだったり、急に落として損傷したものについては内蔵されているバッテリーが出火や爆発を起こす可能性があるという事を啓発するニュースも多く流れていました。
私自身はハンディファンは持っていませんが、USBでモバイルバッテリーと繋いで利用することのできる簡易ファンは持っています。バッテリー内蔵型の製品の場合、年をまたいで使っているうちにトラブルに巻き込まれる可能性もあるので、その点には注意しようとは思っています。
ただ、最初に紹介したニュースには続きがありまして、先に発表された「火元は充電していたハンディファン」というのはどうやら見当違いであったということが後の調査でわかったのです。
本当の火事の原因は、絶縁された部分が損傷した延長コードから発火し、さらに延長コードの上には衣装ケースや布団が積み重なっていて、そこから火が燃え広がったということを改めて発表したのでした。
もちろん、リチウムイオン電池自体の管理の重要性に異論を挟むことはありませんが、その事を声高にアナウンスすることにより、今回のような別の原因である、まだリチウムイオン電池が生まれていない頃から言われていた延長コード・タコ足配線・プラグ部分のホコリなど、火事が起こるリスクについて現場検証で見逃されるという事になると、やはり問題かと思います。
恐らく、火事の原因を原場で調べるうちに焼け焦げたハンディファンを見付けたことで、まず注目がそこに行ってしまったということが考えられます。それが警察からの原因発表になり、さらにはその発表をそのまま掲載した大手マスコミの報道につながるようだと、実際は違う原因なのに、嘘の発表の方を信じて口コミが広がってしまったりする危険性が出てきます。
以前、地元テレビ局が主催した防災に関するシンポジウムに出た際、個人発信とマスコミの違う点は、多くの目がファクトチェックを行なうことだと言った方がいました。これはこれで事実ではあるのですが、今回のような場合、そうした複数の目のファクトチェックも役に立たなかったと言われてしまい、それがマスコミ不信にもつながってしまう(もちろん元発表を行なったところにも問題はありますが)ことにもつながるかも知れません。
今回の事例は、リチウムイオン電池の扱い方を誤ると危険という啓発とからめて発表したり記事にしたいという思いが強すぎたために本当の原因がどこかへ行ってしまったとも考えられなくもありません。
私たちも、ある「予断」から出発してその「予断」を真実なのかどうかきちんと確認せずに事を大きくしてしまうような事はあります。ただその前に純然たる「真実」があるわけなので、そこでちゃんとした真実を受けて考えられるようにしたいですし、自分の思い込みと真実が違ったとしても、それに対しては素直に受け入れることが大事ではないかと思います。フェイクニュースに引っかからないためにも、日々の生活の中で極端な言動や情報に踊らされないよう気を付けたいものです。