ネットで配信されている日本経済新聞のコラムを見て、ちょっとげんなりしました。東京芸術大学教授の布施英利氏のコラムの題名が「キーボードが消える日」とあったので、どんな事を書いているのか、無料の会員登録をして読んでみました。
その内容を簡単に要約すると、一昔前には普通に仕事や家庭で使われていたファクシミリが現在ではあまり使われなくなって、世間的には消えたことを紹介し、文字入力に使われている「キーボード」も同じように消えてしまうのではないかと思い始めているそうです。
氏は愛用しているApple Watchに話し掛けると、その声が文字に変換される技術を体感し、AIを使った音声認識が進化することで、AIボイスレコーダーを使えば声が瞬時に文章(テキスト)になり、散歩をしながらしゃべるだけで文章が書けるようになる、だから今後は文字入力方法としての「キーボード」に取って替わり、「ファクシミリ」のように「キーボード」はなくなるのでは? という感じのコラムでした。
氏は以前はペンで書いていた文章をキーボードで打つようになり、将来はAIボイスレコーダーに向かってしゃべる形での執筆活動に変わっていくと考えていらっしゃるようです。論文などを作る場合には、さすがに散歩をしながらボイスレコーダーに喋りかけるだけではだめでしょうが、パソコンのマイクに話し掛けつつ画面に出てくるテキスト文を編集するだけなら、キーボードに慣れ親しんでいない方にとっては革命的な作業になるだろうとはおぼろげに理解はできます。
音声の認識についてはAIを使えば誤変換の類は減るとは思いますが、音声認識による文章作りが万能かというと、私はそうは思いません。例えば、学校の授業でクラス全員で作文を書かせるような場合、パソコンやタブレットを使っての授業で、課題提出の方法もテキストデータをメールなどで送るのが普通になる中、生徒全員が音声認識入力を行なうために声を出すのでしょうか? また、新幹線など移動中に車内コンセントを使ってパソコンを動かして仕事をする際、静かな車内で文書を作ったりメールを送る際には皆声を出して入力するのでしょうか?
特に企業での文書にはその内容を知られたくないような時もありますし、さらに言うと、スマホの入力にも音声入力を使うなら、SNSなどで友人たちとやり取りする内容を声を出して入力するのが当り前になるとでも言うのでしょうか。
パソコンのキーボードにしろ、スマホのソフトキーボードにしろ、頭の中で考えたことを手を使って文字化するというやり方を、ファクシミリのように気付いたら誰も使わなくようになったとしたら、その時代に外に出ると、聞きたくもない他人のコミュニケーションの内容をどこへ行っても聞かされるようになってしまうのでしょうか。
将来的に、パソコンのキーボードよりもスマホを入力装置として使用し、ソフトキーボードでフリック入力をする方が主流になるかもということは予想は付くものの、キーボード自体が無くなることはないというのが私の思うところです。ちなみに、キーボードとフリック入力とで入力速度を競ったサイトがあって、色々調べたら一般的にはフリック入力の方が早いという調査結果を見付けました。
ただ、両手で打つキーボードの場合はローマ字入力だけでなく、入力スピードに特化した様々な入力方式があり、極端な例ではありますが、専用キーボードを使ったテレビの字幕を付けるための専門の職業があるので、全ての状況でフリック入力がいつも速いとは言えないかも知れませんが、それでも音声認識よりも速くフリック入力できてしまう人は多いのではないか? と思います。そうなると作業効率という点からも音声入力よりフリック入力を含めたキーボードからの入力を選ぶ人はいくらAIが進化しても無くなることはないと思います。
ちなみに、日本語の同音異義語についてはAIで何とかなると思うのですが、例えば普通の人の名前など同じ「ジロウ」でも「二郎」なのか「次郎」なのか、「治郎」なのか「二朗」なのかなど、どうしても入力後の修正が必要になってくると思います(有名人の場合はGoogle日本語入力でかなり正確に表示は可能ですが)。一文字だけ修正というような場合は、やはりキーボードを使う必要が出てくるのではと思います。新しい入力方法としてAIによる音声入力を使いつつ、キーボードと併用するのが賢いやり方だと思います。キーボードが消えるような方向でやっていく事はないのでは? と思うのですが。
もし、キーボードがなくなるとしたら、人間が頭の中で考えていることを瞬時にテキスト化して画面に表示できるような、音声認識を超えた技術が出てくるまでかかるのではないかと思います。コラムとして「○○が終わる日」というのはちょっと挑戦的で、今回の私のブログもそうですが多くの人がいぶかしがって注目するとは思うのですが、今回はその内容を読ませていただいた上で自分なりの考えとしてまとめさせていただきました。
てらさん、おはようございます。
以前コメントしましたが、出先でメールをタブレットで音声入力した事が有りますが、変換精度も高く、実用レベルに近いと感じました。ですが口頭ですと不要な文言も文字起こしされたり、纏まりの無い文章に成りがちなので、後で清書が必要です。
今後、AIによる修正(「ええと」とか「あー」とかを消すとか、文体を要約する等)で清書出来る機能も出てくるかもしれませんね。ただ、ここまでやると良くある「AIが作成した感じの文書」になってしまう可能性は有りますが・・
あと、キーボードだとIMEでユーザー辞書を登録する事で入力を省略出来ますが、音声入力だと全部話さないといけないのも逆に不便ですね。(例;住所等)そういう意味でも音声入力とキーボードの併用と言うのが良い気がしますね。
では~
ahiruさん コメントありがとうございました。
今回紹介したコラムを書いた方は、小さなAIボイスレコーダーを服に付けて、手ブラで散歩しながら執筆活動ができると、「ウォークマン登場という革命に匹敵する」とも書かれています。
外でヘッドフォン(イヤホン)を使っての音楽の聞き方というのは、今ではスマホに音楽を入れることで、さらに導入はしやすくなっているものの、それでそれ以前からあった家で音楽を聞く習慣や器材(最近は安いミニコンポもけっこう充実しています)が消えるということはありませんでした。
単に音楽の聞き方の一つの方法が増えたという風に捉えれば、AIボイスレコーダーによる文字のテキスト化というものも、文章を書き方の新しい方法の一つとして捉えれば良いだけで、必要に応じて使い分ければ良いことだろうと思います。まあ、政治の世界でもそうですが、とにかく「仮想敵」(今回の場合はキーボード)ををディスることで自分の書くものに注目させたいというところもあるのでしょうね。そこにはいかにして文字入力の快適さを上げていくかという観点がずれてしまって、今回の場合はキーボードを必要とする人にとって良くない事にもなりかねないと思ったので、あえてそのコラムにからんでしまった次第です。