アメリカのドナルド・トランプ大統領がかつての「強いアメリカを取り戻す」ための関税を他国に課す政策というのは、本当にそれで強いアメリカが復活するのかと思ってしまうのですが、今回は自動車や鉄鋼などの製造業ではなく、エンタメ系の産業においてもアメリカ国内に海外のものが入っていく場合に関税を課すような事が発表され驚いています。
ニュースになったのは、アメリカ発のコンテンツとして世界をリードしてきた主にハリウッド発の映画についても海外映画をアメリカに入れる場合に関税を100%課すという内容でした。実際にどうなるかわからない事ではありますが、アメリカ以外の国で作られた、アメリカからすると「外国映画」は輸入する場合に今までより購入額が上がるということになります。
それをアメリカの興行主がどうするのかはわかりませんが、コストを観客に負担してもらうということにすると、単純に海外映画をアメリカ国内で見ようとすると、映画館で払うチケット代が関税分高くなってしまうということになるでしょう。問題なのは、単にチケット代が安いというだけでアメリカ国内の観客は外国映画を敬遠し、今後も国産映画を見るようになるのかということだろうと思います。
もちろん、それほどの話題作ではないミニシアター系の映画については、あえてアメリカに輸出するだけのメリットがなくなるので、その分国内のクリエイターの活躍する余地は出てくるでしょうが、観客の選択肢は狭くなってしまいます。
エンタメ系の関税ということで、まずは映画がピックアップされたということになるのですが、日本にとってはアニメーション作品もアメリカで上映しにくくなる可能性も出てきます。コアなファンについてはそれなりに継続するとは思うのですが、そこまでコアなファンではない人がふらっと映画館に足を運んで、そこで日本を含む海外映画のアメリカ映画との違った面白さに気付くというような事はなくなってしまうかも知れませんね。
今後の事を考えると、エンタメ系の規制が映画だけにとどまらずビデオゲームあたりにも波及した場合、関税がどのくらいになるかにもよりますが、確実にこれから出てくるゲーム機やゲームソフトのアメリカでの購入価格が上がってしまうでしょうから、こうした事に対する不満は出ないのかということも気になります。アメリカ第一の思想を持っている人であれば、国内で作られたコンテンツを見たり楽しんだりすることの方が古き良きアメリカを復活させるには大事だから海外のエンタメコンテンツに今までかけてきた費用を国内で作られたものに振り替える感じになるのか、それでアメリカに住む方は満足なのか、気になりますね。
ちなみに私は日本に住んでいても国産のコンテンツばかりでは満足できず、海外からのコンテンツについても積極的に観られる環境があることが素敵だと思っています。気分によってアメリカの映画を見たい時もありますし、ヨーロッパ・アジアもまた違った趣があるので、見られるならまんべんなく見る中で、日本で作られる映画もそうした海外の映画と比べて見劣りしないくらいのレベルを高めて欲しいと思っています。
今回のトランプ大統領の政策は大いなる実験ではあるのですが、もしこの政策が彼の任期中続いた場合、アメリカの映画産業は力を取り戻し、私たちに今よりも良質で面白い映画を輸出してくれるのか、そもそもアカデミー賞などでの外国映画の扱いはどうなるのか、その辺の事を心配しつつも状況は冷静に見ていきたいですね。