昨日、たまたまテレビを見ていたら映画「コンボイ」が放送されていたので、字幕で画面に集中しなければなりませんでしたが、最後まで見てしまいました。1978年の映画なので今とは状況がまるで違いますが、今も昔も大型トラックで物資を運搬する運転手の方々の苦労は並大抵のことではないということがわかります。
映画では些細なことから保安官といさかいを起こし、仲間たちと隊列を組んで走行することになるのですが、隊列の規模は移動するに従ってどんどんと増えていきます。なぜそんな事になるかというのは、トラック運転手は各トラックにCB無線を搭載していて、発信する周波数を決めていることで、走行中に仲間と話しながら走行していた時代だったのです。
映画ではその交信を聞いた人が話に割って入り、そこから新たな仲間となったり、メンバーの緊急事態を無線で知らせることで、窮地を免れたりします。もし各々の運転手が単独で行動していたら映画そのものが成り立たないでしょうし、こうした無線によるコミュニケーションがあるからこその映画だと言えます。
日本でもかつては多くのトラック運転手たちは車に無線機をセットして、交通情報の交換や警察の取り締まり情報を共有したり、夜通し運転する中での眠気覚ましとして交信を楽しんでいたと思います。ただ、それには大きな弊害もありました。
この映画の影響かどうかはわかりませんが、無線というのは出力が大きいほど遠くまで飛ばすことができるので、高出力な輸入したいわゆる「違法CB無線」が横行し、国内ではトラックが通るたびに電化製品が誤作動したり、テレビやラジオに無線交信がそのまま強力に入ってくるなどの電波障害が頻発しました。
トラックではなく、普通の車で旅をする際にも車に無線機を積んで交信をしながら走る人たちもいました。その場合は業務ではないのでアマチュア無線を趣味にしている方がほとんどでしたが、仲間内との交信だけでなく、旅行先で電波を出し、周辺にいる無線家の人たちと交信をして楽しむという文化がありました。まあ、今も細々と続いている趣味ではあるのですが、こうした無線による交信というのは、ほとんど寂れてしまいましたね。それは携帯電話からスマホへと発展するモバイル通信の発達があってのことです。
トラックのCB無線はそれこそ無線局免許も持たないで輸入した高出力の無線機で交信していた人もいたらしいですが、アマチュア無線は国家試験のある免許が必要で、無線機を買ったら改めて申請してコールサインをもらい、それをきちんと更新するという手間がかかりましたが、今ではスマホを使えば免許も何も必要なく、スマホ一台だけの負担と自分に必要な通話・データプランに入るだけで国内では通話放題、データも使い放題になるわけですから、あえて今無線機を導入するという方は少なくなっていて、映画の世界というのはもはやおとぎ話のような感じでした。
現在、あえて無線機を購入して趣味として無線を楽しむということは考えにくいと個人的には思っています。というのも、映画のように誰もが無線機や無線の聞ける受信機を持っていて、こちらから何か発信した事にレスポンスが返ってくるかというと、もはやそんな時代ではありません。ただ、今年の能登半島地震によってしばらく携帯電話が使えなくなったことで、山間部などでどうしても外と連絡を取りたいというような場合は、仲間うちで小電力のものでも無線機を使って非常用の通信として使うという方法はありますが、そのためには自分だけ無線機を持っているだけでは駄目で、いざという時に無線機で通信できるようなネットワークを作っておく必要があります。
昔のようなトラック無線に代わるものとして、最近では電話回線を使った(データ通信)IP無線機もあるという事なので、そちらを導入して通信しているトラックもあるということです。これなら高出力の必要はなく、全国の仲間と交信できます。仲間内の連絡手段としては便利ではありますが、携帯電話と同じく通信障害や災害による大規模な停電があると使えなくなるという事はあるにしても、やり方次第で昔ながらの交信しながら夜の高速道路を走る手段が確保されていることは、今回映画を見て改めて調べるまでは知りませんでした。運転手の方々は労働条件が厳しく、色々大変だとは思いますが、昔ながらのコミュニケーション手段が残っているということは何か嬉しくもありました。