静岡県牧之原市にある認定こども園に通う園児が乗っていた通園用のマイクロバスに取り残されて、熱中症で命を落とした事件は、本当に胸が痛みます。謹んで御本人のご冥福をお祈りいたします。一連の報道によってなぜこんな事が起こってしまったのかということがわかってきましたが、普通であれば落とすことなどなかった命がどうして失なわれたのかを考えることは大切だと思います。
夜のテレビニュースでは、当該の施設でないところが取材を受けていました。その場所では園児の手首に端末を付けることで、一人一人の園児がどこにいるのかということをパソコンやタブレットの画面に表示することができ、人の目では逃してしまうようなところでも発見につなげることができると紹介していました。
確かに、先日富山県で起こった幼児の行方不明になった事例を見ていくと、お母さんがちょっと目を離したすきに自分で戸を開けて外に出ていってしまった可能性もあるだけに、小さい子が嫌がって外さないようなタグやプレートを利用し、もし目を離したすきにいなくなった場合でもだいたいの居場所を知ることはできます。今ある製品でも利用可能なので、本気で不安になっている方は、お子さんから目を離さないことが大前提ですがそうしたタグをお子さんに付けることも検討して良いようには思います。
ただ、そのような新たな技術を使ってシステムを作ったとしても、やはり大切なのはそうした技術を使いこなすだけの人間のスキルという問題が、今回行なわれた牧之原市の認定こども園での記者会見を見ていて思いました。理事長で園長を兼ね、さらに今回の通園バスを運転していた方の発言を聞いていると、そこまでの危機意識が感じられず、園全体としての最悪の結果を出さないためのきめ細やかな対策が欠けているような気がしてなりませんでした。
今回の話を聞いて思ったのは、専用アプリを使わなくても、通園バスに児童が乗り込む時に番号札が付いた札を首から掛け、降りる際に外して再度確認するというような、スマホも電気も使わずに、用意した札が回収できないことで異常に気付くというような、アナログ的な方法でも十分対応できたように思います。それをしないばかりか、多くの関係者が自分がすべき仕事を人まかせにしてそのまま何となく過ごしているような環境が出来ていたのでは? と疑うことがありました。もし私の予想が当たっているとしたなら、先述の園児へのタグ付けなどをこなしたとしても、画面でのチェックを忘れるような現場の緩みが起これば、お金を掛けてシステムを作っても同じような事故をまた起こす可能性は出てくるでしょう。
最新の技術は、確かに人間が全て確認することができないようなところまで代わりの目で見てくれる、うまく使いこなすことで大変便利なものです。今回の事件の背後にも登録していた運転手全員が通園の際に集まらなかったという、慢性的な人手不足ということがあったということですが、だからこそ普段からその業務を行なっていない人を補助するという意味での技術の導入には意味があるでしょう。しかし、先にすぐ導入するのではなく、そうした技術導入をしなくてもできることを考えつつ、二重、三重の対策を考え、その考えを現場が共有することでようやく、新しい技術を使いこなすことができるのだということをまずは考えるべきではないでしょうか。
この事故のニュースを聞いてアメリカの黄色いスクルーバスは事故防止をどうしているのだろうか?と思っていたらネット記事がありました。
ドライバーは専門で専門以外のものは運転していはいけない運用であること(専門性)。
児童を乗せて到着し降車させてからエンジンキーを抜くとブザーが鳴動し、スクールバスの最後部のスイッチを操作するとブザー鳴動の解除ができる仕組みにしてあること。
スクールバス車内を後部へ往復するときに児童が隠れていたりするかいちいち確認をする運用を徹底していること(責任の明確化)。
これらで事故防止をはかっているということなのでブザー鳴動以外の特段のITレベルの仕掛けなしで目的を達成しているようですね。
コメントありがとうございました。
アメリカは日本以上に訴訟社会なので、スクールバス自体にも対策をしてあったり、もし運転手が確保できない場合はスクールバスの運行自体をできないようにすることで、専門性のない人間が関わることを防いでいるような気かします。
今回の事故に限らず、大きな事故というのは必ず日常的にある小さなミスやアクシデントが重なることによって起こるのだろうと思います。牧之原市の幼稚園でも、雇っていた運転手が休み、代わりの運転手を確保できないという状況がなければきちんと車内の点検はしただろうと思いますし、当時バスに同乗していた人も、期間雇用の方で、正社員ではなかったようです。これももしかしたら正規職員が休んでいて、急にバスに乗ることが決まったのかも知れません。その他、担任の先生の確認不足、親への電話連絡をしなかった事についても、一つ一つはそうした取りこぼしを起こしても、大きな事にはならなかったので、つい軽く考えてしまったということもあるのかも知れません。
ただ、大きな事故になれば自分の働く場所もなくなりますし、その園を利用していた人たちも困ります。現在、この事故を受けて園児たちにバスのクラクションを鳴らす体験をするところも増えていますが、そうして大きな事故にならないあらゆる可能性をつぶしつつ、「もしかしたら自分は間違えるかも知れない」という気持ちを持ちながら、仕事を緊張感を持って行なうことがどの業種でも大切だと思いますね。私が見てきた人の中には「自分は絶対失敗しない」という自信満々な人もいましたが、オートメーション化された工場でも良品のみ100%作ることはできないので、そうした考えは今回のような事故を起こす可能性の一つとなるでしょう。お互いに気を付けたいものですね。