ほんのちょっとの判断の遅れで後味の悪い事に

昨日は、鈴鹿サーキットで行なわれる恒例のレース「鈴鹿8耐」が行なわれました。昨年までは衛星放送のTwellVで生中継しているのを見ていたのですが、今年から放送するのがBS日テレに変わり、巨人戦をはさんでの中継にちょっとした違和感を感じながらゴールの瞬間を固唾を呑んで見ていたのですが、今年のレースではチェッカーフラッグが振られることは有りませんでした。

レースは「カワサキ」「ヤマハ」「ホンダ」という国内トップのワークスマシンがずっと競っていて、最後までどこが勝つかわからないような状況だったのですが、終了前に起きた数々のトラブルの対応を巡って、非常に後味の悪い結果になってしまいました。

レース終了一時間を切る中でトップのホンダをカワサキがかわし、トップに立ちました。カワサキのスピードはホンダやヤマハを凌駕するもので、このまま行けばカワサキの優勝は間違いないと思われたのですが、途中で3つの大きなトラブルが有りました。一つは、バイクの部品が路面に落下していて、走っている一台がその部品にまともに乗り上げてしまい火花を散らしながら転倒したのですが、たまたまその転倒したバイクのすぐ隣をトップのカワサキのマシンが走っていました。ぎりぎりで転倒したマシンをかわすことはできたものの、落下物を発見した時点で何かできることはなかったのかとまずは思いました。

その後、無事にレースは進んだもののコースの一部で雨が降り出し、何やら不気味な予感をテレビ観戦している側にも感じさせる状況になりました。そんな時、レース終了5分前に次のトラブルがやってきます。

上位を走っていたスズキのバイクが突然煙を吐き出し、コースにオイルを撒き散らすようにして走る様子がテレビに映し出されました。ライダーの気持ちとしては「あと5分なのに」という気持ちがあってエンジンが壊れるほどの大きなトラブルにも関わらず、すぐにコースアウトすることをせずに、結果として結構な距離のコースにオイルを撒き散らしていきました。テレビ解説者は、この時点で雨の心配もあるし暗くなってきたのですぐにレッドフラッグを出し、ペースカーを出してここまでの結果で順位を確定させるべきだと言っていたのですが、そうした対応を運営側は行ないませんでした。そしてレース終了の1分間に最後にして最大の悲劇が起こってしまったのです。

レース終了一分前にカワサキがトップでホームストレッチを通過して周回を終え、ほぼ優勝を確信したカワサキでしたが、たまたま前のトラブルでスズキがオイルを撒き散らした地点を通過した際に、恐らくそのオイルに乗ってしまったのだと思いますが、まさかの転倒になってしまいました。その前後(転倒する前だったのか後だったかはテレビ中継ではわかりませんでした)、運営側はレッドフラッグを出しペースカーを出しました。この時点でまだレースは終わっていません。

後から発表されたのですが、この時点から5分以内にカワサキがピットに戻ることができれば優勝だったのが、マシンのダメージが大きかったためか動かすことができず、結果は何とカワサキはリタイヤ扱いになって入賞すらできないという裁定になってしまったのでした。

もし、運営側がスズキの起こしたトラブルが発生した時点で、他のマシンの転倒の危険性をきちんと認識していれば、終了5分前にレースは中断し、その中断時の順位でレースが確定していたはずなのですが、終了のタイミングぎりぎりでレースの流れを切ることが忍びなかったのか、レッドフラッグを出すタイミングが遅れたことで、さらに状況は悪くなってしまいました。

最終的にはヤマハの5連覇という偉業でレースの幕は降りましたが、オイルを撒き散らしたのがスズキで、ヤマハ・ホンダ・カワサキの優勝争いだっただけに、多くの人からすると納得がいかない結果になったのではないでしょうか。レース終了後は多くの車が帰途につくことになると思いますが、鈴鹿サーキットからの高速道は渋滞の名所であるため、帰る人たちの間でイライラしていることが原因で大きな事故が起こらないか、そんな事も心配されるような今回のレースでした。

モータースポーツの場合、最後までコケなかったチームが勝つことは間違いなく、実際レース終了間際で転んだのはカワサキだけだったという意味で、チームが反省する部分もあるでしょうが、今回の場合は運営の対応によって全く違う結果になった可能性が高いということで、改めて全ての人が納得する裁定をきっちりと早急に下す必要があったのではないかと思えます。

恐らくこのニュースは他の注目度の高いスポーツニュースに埋もれてしまうかも知れませんが、8時間という耐久レースで、チーム同士がぎりぎりのところで鍔迫り合いを繰り広げてきた素晴らしい途中までの経過があっただけに、最後の5分間で運営によって複数の結果が考えられるような裁定を出したということは重く考えるべきです。

これは、単なるスポーツの問題だけではなく、私達の生活の中でもまれではありますがあることなのですね。何か自分が失敗をやらかしてしまった場合、自分の責任だけで済む状況ならいいのですが、学校や仕事上で多くの人が関係するような中で起こった失敗の場合、その事をできるだけ早く報告することで、その粗相を同僚や上に立つ人との間で共有できるので、自分一人では解決できないような失敗でもその影響を少なくすることは可能です。しかしそうした申告を後回しにしたり、嘘の証言をしたりすることによって、正しい対応を個人や組織が行なうことができなかったとしたら、確実にその人たちは信頼性を失なってしまうことになります。

具体的な誰でも起こしそうなリスクとしては、車で事故を起こした場合、何もなかった事にしようと逃げたり、うその申告をしたりすると、大概はそうした不正は見抜かれるものですので(保険会社の査定の方々はそうした点ではプロなので、その場しのぎの嘘や隠蔽工作を行なった場合など)、そうなったらさらなるペナルティが待っているということにもなるでしょう。もし、ついその場で悪い事をしてしまっても、その後の対応が早ければ早いほどダメージは少なくなります。アクシデントは思ってもみなかった所で起こるものですが、もしこの夏自分に起こってしまっても慌てずに正しいと思える対応を心掛けるようにしたいものです。

(2019.7.30 追記)

2019年の鈴鹿8耐の最終結果ですが、上で書いている内容とは変わった内容で確定されたので、ここで紹介します。上のような結果で暫定の表彰式が現地で行なわれ、翌日の新聞でも「ヤマハが5連覇」と書かれていたのですが、カワサキ側から抗議が提出され、レースディレクションがこれを受理し、検討の結果、「レースリザルトについては、赤旗掲示前にラップリーダーならびにラップリーダーと同一周回のライダーがフルラップをこなした時点のものを採用する」という規則に則り、終了1分前の時点でラップリーダーだったカワサキが優勝という最終判定になりました。

このようなぐだぐだの結果でカワサキの鈴鹿8耐の26年振りという勝利の味が違ったものになってしまったのは本当に残念でしたが、この判定がレース直後に行なわれていればという点はあるものの、多くのファンがすっきりとした気持ちで満足できるものとなったことについては良かったと素直に思えます。


カテゴリー: 車中泊・車関連コラム | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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