「ふるさと納税」で考えてもらいたいこと

住民税を自分の住んでいる場所以外の地域に寄付することのできる「ふるさと納税」の制度ですが、返礼品は地場産品に限る事とし、返礼品の調達額は寄付額の3割以下という条件を満たさないと返礼品を出せないように6月1日から変わりました。さらに、ニュースでご存知の方も多いと思いますが、大阪府泉佐野市や静岡県小山町のような政府の方針から外れた返礼の品や仕組みを続けていた自治体についてはふるさと納税を扱うことができないペナルティを課すような騒動も起きています。今後もこの制度が続くためには、どのような変化が必要なのでしょうか。

まず、ふるさと納税を行なおうとする利用者の側から見ていくと、今まではいかに少ない金額で高価な商品をもらおうとして加熱したということもあると思います。ポータルサイトを見ると全国の自治体が出している返礼品が検索でき、例えば同じビールでも1万円で一番多く用意してくれている自治体に寄付するような事が当り前のように行なわれていました。地場産品とはまるで関係なくても、黙って地元の自治体に納めるならば、少しでも返礼品が返ってくる方が嬉しいという感じでやっている人が多かったということが言えます。

私の場合は全国を車で回っていたこともあって、県レベルでの特産品については詳しい方だと思いますが、多くの人はそれすらもわからず、さらに細かいところで素晴らしい特産品があったとしてもなかなか気付くことができません。結果、おいしいところは宣伝がうまかったりすでに有名な地場産品を持つところに寄付金を出すということになります。ただそれでは今までと変わらないように思います。そこで寄付を選ぶユーザー目線でぜひお願いしたいのが、全ての自治体に公平で儲けを度外視した新たな「ポータルサイト」の立ち上げおよび育成を政府機関に行なって欲しいということです。

現在、テレビで「ふるさと納税」を行なうための「ポータルサイト」がコマーシャルを流しているのをよく見ますが、このポータルサイトは民間の事業で、思いっ切り儲けを追求しているので、そこのサイトから寄付をした場合には相当の手数料を自治体はポータルサイト運営者に払わなければなりません。本来はこの分のお金は税金になるものなので、他の地域への寄付に変わったとしても、こうした費用をまるまる自治体の事業に利用できればいいのですが、そのためには手数料を出さなくても寄付ができる、各自治体がそれぞれ持っているホームページからの集客が必要になります。しかし無名の自治体サイトに人を集める事は難しく、民間のポータルサイトの方もできるだけ豪華で人々が欲しがるような返礼品を用意している自治体が「人気ランキング」の上位に来るような形で多くの人間が自分のサイトを利用してくれるよう促し、結果として本来税金として収められるはずのお金の中から「中抜き」することでポータルサイトが儲かっています。つまり今までは税金になるお金を民間が吸い上げているわけで、本来は泉佐野市や小山町を非難する前にこのポータルサイトにお金が流れる仕組みを何とかすべきだったのではないかと私は思います。

もし政府が「地場産品」「現地体験型の返礼」、さらには自治体側の「現在必要なお金のかかる事業」を自治体の区別なく検索できるようなポータルサイトを作り、手数料は民間と比べて少額に抑えるようなことができれば、納税者の意識も変わり、単なる返礼品の豪華さで寄付する自治体を選ぶのではなく、その自治体固有の地場産品の有無や、魅力的な体験ができそうな場所、さらには自治体が対峙する金銭的な問題などを総合的に見極めて寄付ができるようになるのではないでしょうか。

そして、テレビ局などにお願いし、積極的に「儲け度外視」の政府の作ったポータルサイトの意義を説明し、多くの人をそのサイトに集める努力をすることによって、改めて納税者は「ふるさと納税」制度の目的を知り、意気に感じて自分と関係あるなしに関わらず、助けたいと思った自治体に寄付をすることができ、その善意が自治体の再生にもつながっていくことになるのではないでしょうか。

とにかく、今回のふるさと納税に関する騒動は、特定の自治体が悪者になっているだけで、その間にある多くの問題点があまりにも語られていない気がします。このままでは存続し得なくなる自治体も出てきてしまうかも知れませんが、もしこのふるさと納税の制度で助かる自治体が出てくる可能性があるのなら、ぜひ政府が音頭を取って動いてもらいたいと思うのですが。


カテゴリー: ノンジャンルコラム | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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