SONYのオールインワン防災ラジオICF-B88の「死角」

Icfb88
 2013年7月下旬から売り出されたソニーの新しい防災ラジオの上位機種ICF-B88は、以前の製品からようやく東日本大震災の教訓を生かしたような機能強化が図られています。ポイントは4つあって、

・正式にiPhoneなどスマートフォンの手回し充電に対応したこと
・本体上面に太陽電池パネルを配置し、内蔵充電池を充電できる
・使用電池が単四から単三(2本)に
・AC入力がマイクロUSB 携帯・スマートフォン充電用出力が汎用USB出力に

 となかなか魅力的です。その中でも最後の汎用のUSB接続ACアダプタや(メーカー保証の使い方でないのでご注意下さい)、100円ショップでも手に入るUSBコードが使用可能になったことで、今までのように付属のコードや専用のACアダプターがなければせっかくの性能を発揮できなくなることも少なくなるでしょう。付属品のところを確認すると、専用の袋の他に、USBコードと携帯電話用の変換アダプター、そして非常時のためのホイッスルが付いています。とりあえずこれを非常持ち出し袋に入れておけば十分実用になることでしょう。先日店頭で実物を触ってみましたが、小さくまとまっていてかなり中味が詰まっているなという感じでした。隣に東芝のTY-JR50がありましたが、ハンドルの回しやすさと安定性はSonyの方がかなり優れているように感じました。今のところ同種のラジオを選ぶならこれ一択という感じもします。

 ただ、個人的にはもう少し完璧に機能に関する問題をつぶして発売してほしかったと思います。それは、私が以前からこのような手回しでの充電ラジオについて感じていた不満と重なってきます。

 まず、ラジオ本体の機能についてですが、今の段階で首都圏のAM放送がどうなるかわからないということなので仕方のない部分ではあるのですが、可能性として大手の東京のAM局が周波数が空いたFMワイドバンドに移行するのではないかという話があるので、90~108MHzもカバーするようにしてほしかったです。それと、これは個人的な希望で一般的なニーズとは合わないかも知れませんし、コストがかかることでNGになったのかも知れませんが、南海トラフが動く巨大地震を想定した場合、被災地周辺のラジオ送信局が使えなくなった場合も想定される中、Radio Nikkeiが受信できるよう短波が聞けるようにするか、Radio Nikkeiの周波数のみ受信できるようになれば、非常用ラジオとしての付加価値は上がるでしょう。

 また、カタログスペックを見て大変残念に思ったのが、太陽電池パネルの大きさと内蔵充電池とのアンバランスさでした。ソニーのホームページで確認したところ、太陽電池バネルを使い晴天の屋外で60分太陽に当て本体内蔵の充電池を充電するよりも、手回し発電機を1分間回した方が長い時間ラジオが聞けるというのは、いくらなんでも太陽電池からの発電量が少なすぎですね(^^;)。さらに太陽電池の発電性能は、曇りになったりガラス越しだと効率が落ちますので、純粋に太陽電池からの内蔵充電池のみでラジオを動かそうとすると、太陽の出ている時間にはほとんどラジオを使えなくなるように思います。

 さらに、内蔵の充電池については本体仕様にも記載がありませんが、容量は本体に入れる単三アルカリ乾電池2本で得られる電力とほぼ同じという印象でそれほど大容量ではありません。その充電池を空の状態からACアダプタを使って満充電するまでに約3時間ということになると、災害時にAC電源を3時間近くも占拠することは大いに顰蹙を買うでしょうから、災害時に充電池を満タンにしてラジオを聞いたりスマートフォンを充電するというのは考えない方が良く、あくまで非災害時の使い方としておいた方がいいでしょう。あくまで太陽電池パネルを搭載するなら、敢えて充電池を内蔵せず、本体を動かす電力を蓄電するために蓄電容量は少ないながらも繰り返し充電に強く耐久性のあるキャパシタ(コンデンサー)にしたほうが良かったのではないでしょうか。ソニーのような大企業が本気になって大容量のキャパシタの開発に着手してくれ、実装されればそのラジオは国内だけでなく、電池の供給が難しい世界各地でもニーズが出てくるでしょう。災害用ラジオというのはずっと使わないで持ち出し袋に入れたままそれこそ災害が起こるまで使わないということも考えられます。そうしていよいよ使おうと思った時に、内蔵充電池が劣化していてほとんど充電しないようなことになることを防ぐために、ぜひソニーさんには充電池の代わりにキャパシタを内蔵した災害用ラジオの開発をしていただきたいと思いますね。

 以上かなり言いたい事を書いてしまいましたが(^^;)、現状でも手回しハンドルから携帯電話だけでなくiPhoneを含むスマートフォンの充電ができるだけの出力を得られるだけのポテンシャルはあるということなので、発想の転換として汎用のUSBケーブルが使える発電用ダイナモの代わりとして災害時に使うのもいいかも知れませんね。ただそうするとわざわざ使えない太陽電池パネルが付いたICF-B88を買うよりも、同時発売された下位モデルのICF-B08の方がACアダプタは付けられないものの(内蔵電池の充電は手回しのみですが、単三アルカリ乾電池でスマートフォンを充電する事は可)全て手回しで行なうと割り切ればそちらでもいいのではないかと思います。今のところ両者の価格差はわずかなので、多少高くてもICF-B88を購入した方がいいのかも知れませんが、時間の経過とともにICF-B08が安く売られるようになったら、私も購入を考えるかも知れません。

(2015.10.31追記)

このエントリーで問題にしていた点の一つ、FMワイドバンドの対応をしたモデルICF-B99とICF-B09が2015年11月に発売になるそうです。


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SONYのオールインワン防災ラジオICF-B88の「死角」」への10件のフィードバック

  1. 匿名 投稿作成者

    数日前に当該商品を購入しましたが、カタログスペック見ただけの記事は語るだけ無駄ですね。
    どうしてこの記事がgoogleでヒットしてしまったのか・・・・・・・・。

  2. てら 投稿作成者

    Googleの検索結果については、1ユーザーがあれこれ語ってもなぜ1ページ目に来るのかというのはそれこそ語るだけ無駄ではないかと思います。恐らく新しい情報が入ってくれば私のページは自然と淘汰されていくのではないかと思えますので、購入後の詳しいレビューや感想などを、これからこのラジオを購入しようと思っておられる方のために書き記されることが具体的な解決策のように思えます。

  3. ICF-99ユーザです 投稿作成者

    防災ラジオをうたう割にはアレレ?と思う所が多かったですね。車中泊に持ち出していましたが、ソーラーパネルの能力がその程度では、ああなって当然と納得しました(笑)
     気に食わないのが、内蔵電池はユーザーでは交換不能にしている点やeneloop等を本器では充電不能な点です。リチウムイオンならともかく、ニッケル水素電池ですから、いわゆる単~乾電池規格で出回っている二次電池と同じにしてくれれば(ロジクールのワイヤレスマウスは蓋を開けたら単三eneloopが入ってました)良いと考えますし、手回し充電では内蔵電池しか充電出来ないというのも、電気的にはおかしな話で、これは単にソニーが単~形の二次電池を作っていない(?)という自社の事しか目に入っていないからかと。市販のニッケル水素電池用充電器は、対象外電池をセットしてもプロテクト出来ていますから、ソニーもその気になれば…と思うのですが。
     車中泊使用となると、スマートフォン用充電器(USBケーブル)を使いたくなりますが、結局後から高くつく内蔵電池を消耗させている訳ですし(Maxellにスマートフォン用充電器を電源とする充電器が出ていますが)、手回し充電機構をもう少ししっかりした物にすれば、汎用ニッケル水素電池充電器として、まさに災害時等では役にたつと考えるのですが…。
     しかし、このソーラーパネル、ニッケル水素電池の寿命に悪影響となる過放電を防ぐ程度の能力に毛が生えた程度かとも思いますが、防災袋に入れておいては役にたたないし(透明な防災袋かつ付属ポーチに入れないなら別(汗))、ラジオ電源としてはお飾りに近いし…
     因みに手回し充電、機構には無理を掛けている感は有りますが、USB充電よりも早く満充電に出来る様に思います。その間、ラジオが聴けないというのは泣けてきますが(泪)
     因みに、ICF-B?8シリーズでは向かって右端に書いてあった筈の90MHzですが、B?9シリーズでは目盛りの中央に有ります。チューニングダイヤルと受信周波数の変移関係がどうなったかは分かりませんが、少なくともFM放送局を目盛りで確定するのは難しくなっていると思います(苦笑)
    …ところで、四角四面のICF-B0?の頃は地デジ移行前製品で、いわゆるLow VHF 、今のFM補完放送受信出来ていたのですね…ま、これは日本の電波行政が悪いのでしょうが何だかなぁ…です。
    しかし、外見や細部は変化したとは言え、基本的な中身はF-B0?の頃から変わっていない様に思えます。
     私の書いた事も含め、そろそろフルモデルチェンジして欲しいです。防水性や強度は再考して欲しいです。今やスマホの方が丈夫です(笑)
    突然の長文失礼いたしました。

  4. てら 投稿作成者

    ICF-99ユーザ 様 コメントありがとうございました。
    私は以前にソニーが出した防災ラジオのICF-B100(現在は生産終了)を今も使っているのですが、今の防災ラジオは安易に手回し発電やソーラーパネルを採用しすぎのではないかと思ったりします。もしそうした発電機能をつけるなら、ニッケル水素電池に蓄電するのではなくキャパシタ(コンデンサ)に蓄電するタイプにすれば、蓄電容量こそ少なくなりますが、少ない労力で満充電でき、メモリ効果もないため、非常用持ち出し袋に入れたままにしていてもすぐにまた能力を発揮できるようになるんですが。
     まだこのブログでは紹介していませんが、ソニーは単三2本を使ったラジオをリニューアルして、ICF-P6と、ICF-P26 という2つのラジオを出していますので、特に充電式のエネループをたくさん余らせているかたはこちらのラジオを災害用として用意するというのもいいかもしれませんね。

  5. 匿名 投稿作成者

     今年2月発売の、東芝 手回し充電ワイドFMラジオ TY-JKR5 が、電気二重層コンデンサ & ワイドFM ですね。

  6. てら 投稿作成者

    新しいラジオの情報ありがとうございました。とりあえず紹介いただいたラジオを用意するのがベストの選択なのかもしれません。

  7. W 投稿作成者

    長期保管と思しきICF-B88を入手しましたが、USBでもハンドルを回しても内蔵電池に充電が開始されませんでした。
    USBは接続するとチャージランプがゆっくり点灯してから、いくらも立たないうちに消える。ハンドルは回してる時だけ各機能が作動する時と、各機能が30秒ぐらい作動する分だけ充電ができたような時が在りました。
    色々やった挙句、高出力USBアダプターと充電ハンドルの同時使用で充電できるようにはなりましたが、こんな状態になるなら非常用袋に入れっぱなしじゃなく常用した方がいいですね。過放電防止か転極チェックみたいな機能が働いてるような感じでした。手持ちのICF-B03はこのような事にはなっておりません。
    ラジオの感度自体はICF-B03より向上してますね。ボデイの強度も上がってる感じはありますが、B03でハンドル充電中にソフトランプのカバーにヒビが入ったのでB88以降の機種でもガッシリ握り込む癖がある人は注意してください。
    この製品は、お年寄りがすべての機能をすんなり使えるかと言うと?が付きますね。人によるとは思いますが余程、目と指先と握力が達者な人でないと使い難いと思います。かと言って非常用ラジオでスマホ充電機能付きはどれも似たような物なんですよね。

  8. てら 投稿作成者

    W さん コメントおよび細かい製品レポートありがとうございました。
    私の使っている充電池としてニッケル水素電池が入っている手回し充電ラジオは、たまに車の中で聞くためにハンドルを月に一度くらいは回しているせいか、少し回せばしばらくの間は聴けるようになっています。非常用持出袋に入れるというのなら、やはりキャパシタに充電するタイプのものを使う方がいいということの証明になるようなレポートに感謝します。
    この手のラジオを使う場合、あえてハンドルは回さないでエネループを入れた状態で使った方が長く使えるかも知れませんね。今後は手回しラジオでない新しい防災ラジオの形も見てみたいですし、メーカーさんの新しい試みがされるならそちらの方にも期待したいところです。

  9. 投稿作成者

    こんにちは。  返信ありがとうございます。
    ICF-B03からB88,B99系列へで改良の跡は確かに見受けられるのですが(ハンドルのツマミの大きさ、重さ。充電効率アップ。受信感度向上など)装備の組み合わせとかは中華製品の後追いに近いんですよね。
    中華製品は以前からAC電源での内蔵電池充電はやってましたし、しかも電池パック交換できるのが多いですし。(耐久性には難アリですが。幾つ壊れた事か。)
    日本製品はユーザーの誤操作事故が怖いんで、あのような構造になってるんでしょうけど。それだけクレーマー、取説を読まない読めない文盲が増えてるんでしょうね。
    通常、非常用と言われる製品ならマルチ電源なのが普通なのですがB88はそうはなっていないと思われます。
    AC電源、内蔵電池、乾電池、太陽電池、で各独立系統で電源供給できるのが当たり前だと思うのですが、乾電池以外は一度内蔵電池に充電されてから供給してます。冗長化をコストとかの兼ね合いでどこまで見るかと言う事なら、これで正解で良いんでしょうが、携帯とかスマホの充電不良での文鎮化で痛い目を見たんで、この構造は納得いかないんですよね。(御存知の通り携帯とかスマホは、充電が終わると外部電源に切り替わってから接続中はそちらで動作じゃなくて、また内蔵電池で動くようになってます。)

  10. てら 投稿作成者

    W さん コメントありがとうございました。
    元々、ソニーが初めて出したハンドルによる充電式防災ラジオを見た時はすごいと思ったものですが、徐々にこれならリチウム電池を内蔵して交換可能なICF-B100の方がよっぽどいいのではと思ったくらいです。私自身も直接市販の充電池に充電可能な中国のラジオを買って今も使っていますが、今では安く手に入る20Wクラスの太陽電池バネルと併用すれば、電池を入れないでも動きますし、実際何か起こった時には汎用性があるような気がします。
    個人的にはソニーの防災ラジオの中に入っている内蔵充電池をユーザーが交換できる仕様に変えるだけでも相当利便性が増すのではないかと思います。100円ショップでも手に入る単三ないし単四型の充電池であれば言うことありませんが、コードレスホン用の電池を流用するような形でも自力で交換できればなと思います。
    あとは、例えばパナソニックがエネループの充電器にラジオを付けるというような形で新しい防災用ラジオを作っていただけると、かなりクオリティの高いものができそうで、多くのエネループとセットにして使ってみたいですね。今のところは、それ自身がモバイルバッテリーとしても使えるエネループ充電器(電力供給はエネループから行ないます)があるので、それと電池式ラジオを組み合わせて持つという考え方もできるかと思います。

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