災害に備えてお風呂の水は残しておくべきなのか?

一昨日は北海道の胆振地方で昨年9月の最大震度7の地震の余震と思われる大きな地震がありました。地震の規模と震度は震源の深さや地盤によって決まるため、今回のデータで気を付けなければならないのは「最大震度6弱」ということではなく、地震の規模である「マグニチュード5.7」という数値ではないかと思います。今後もそのくらいの余震が起きれば札幌でも大きな揺れがやってくるかも知れませんし、改めて地震に対する備えと正しい防災知識が必要になってくるのではないかと思います。

そんな中、地震が起こった数時間前に放送されていたテレビ朝日系列のバラエティ「日本人の3割しか知らないこと くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」では数多くの知識の一つとして「地震に備えて自衛官が行なっていることは?」という形で、自衛隊そのものではなく自衛官の自宅で基本的に行なわれているという防災対策についての紹介がありました。実はこれは番組が独自にリサーチしたものではなく、マガジンハウスが出している「自衛隊防災BOOK」という様々な防災に関する知識を集めた本の中味をそのまま紹介したものですが、表紙には協力として「自衛隊」「防衛省」という文字がならび、本の中味にお墨付きを与えているかのようです。

その内容というのは「自衛官の自宅では、お風呂の水は空にしない」ということで、あえて自衛隊本体のお風呂のことについてではないということがポイントです。そうして溜めた水の利用法については「トイレ用水・洗濯水・火災時の消火用」という風に紹介していますが、実はこれはかつては常識とされていたものの、現在では間違った知識として防災の専門家が警鐘を鳴らしている危険もはらむ知識であることをご存知の方も少なくないでしょう。

まず、単なる水道水や雨水ではなく人が入ったお風呂の水というのは人間の体に付いている雑菌がいて、長時間置けば置くほどその雑菌は繁殖します。ペットボトルに入った飲み物を短時間で飲み切ることが推奨されているのと同じように、人が入った後のお湯を捨てないでためこむことによっていざその水を利用しなければならなくなった場合、どれだけ不衛生なのかということを想像すれば、洗濯用に使うことなどやめた方がいいでしょうし、あえて自宅のお風呂に残り湯を溜めるメリットというものはありません。

そして、断水した際のトイレを流すために利用するという考え方ですが、これが建物の崩壊を伴わない災害の時に利用するならいいのですが、地震で断水までいたるというのは、見てくれは通常と全く変わらない状態だとしても水道回りや下水管が地震による損傷をしている可能性についても考えなくてはいけないでしょう。もしご自宅がマンションやアパートだった場合、下水管が漏水するほど損傷していたら、何回もお風呂の水を使ってトイレを流すことによって管から水が漏れ、ひどい場合には階下のお宅に水漏れの被害を与える可能性もあります。そしてその水は汚物とともに雑菌も繁殖した水であることを考えれば、いったん大きな地震が起こった際にはトイレの水は流さずに、以前紹介した便を水で固める災害用トイレを作ってその都度処理するか、災害時に用意された公衆トイレを利用することが基本中の基本です。

さらに、火災時の消火用には防災用として消火器を常備すれば済む話で、これもわざわざ雑菌の繁殖した水を持っていってかける必要はありません。そもそも、水をくんで出すにも時間はかかりますし、その間に火が回ってしまったら命の危険も生じるかも知れません。

はっきり言ってこの本を出した出版社、さらに本の発売に協力した自衛隊と防衛省だけでなく、本の内容を疑うことなくそのまま放送に乗っけてしまったテレビ局は、ここまで書いてきたような観点からの批判についてきちんと返答する必要があると個人的には思います。少なくともここを読んでいる方は、火災が心配なら家庭用の消火器を、トイレが使えなくなることに備えて災害用のトイレグッズの準備を、さらに飲料水や料理のために利用するミネラルウォーターの準備を行ないながら、できるだけお風呂の水は再利用しないように心掛けることが大事であることをこのブログとしては推奨いたします。北海道にお住まいの方々は今後続くかも知れない余震によって、雪崩が起きる危険性も出てくると思いますので、その点にも十分にご注意下さい。


カテゴリー: 防災コラム | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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