モバイル運用が当り前になった社会を支える電池の進化

2019年のノーベル化学賞は、吉野彰氏のリチウムイオン電池についての研究に与えられることになりました。毎年のように候補に挙がっているという点では、もはやいつノーベル賞になるかということが注目されていたようなところがありましたが、人間というのは寿命もありますし突然の事故ということもあります。ご本人が研究を行なっていた企業に関わっている中で受賞できたことは、ご本人にとっても企業にとっても大いなる喜びだったのではないでしょうか。吉野氏の開発した技術をパソコンやスマホのモバイル運用で活用させていただいている身として、心より祝福の言葉を送らせていただきたいと思います。

私が初めてパソコンを購入したのは外に持ち出さないデスクトップパソコンでしたが、二台目のパソコンとして私が選んだのは、当時はまだ大きくて重かったノートパソコンでした。その電池は当時はまだリチウムイオン電池がなかったので、大きくて重いわりに長時間使えなかったので予備電池を用意しなければならなかったニッケル水素電池がノートパソコン用の電池でした。

デジタルカメラもまだ単三のアルカリ電池を使って電池を使いすてる機種が主だった時代で、これもニッケル水素電池の単三型の充電池を使うことで使いすての利用からは脱却できたものの、当時のニッケル水素電池は長期間の保存をしていると放電してしまうので、常に充電状態を把握しておかないと、新しく充電した電池を入れたのにすぐ電源が落ちて全く使えないような旅先での悲劇も経験したことがあります。また、電池の特性上アルカリ電池では1.5Vある電圧が1.2Vしか出ないため、動作が不安定になることもあったのかも知れません。

こうした不便さを一気に解消したのがリチウムイオン電池で、小型化と大容量化(高電圧化も)、継ぎ足し充電ができる(ニッケル水素電池は昔は継ぎ足し充電をするとメモリー効果で本来の容量よりも利用できる時間が少なくなる問題をかかえていたのです)というメリットは、モバイルでの電子機器の利用を便利にしてくれました。

さらに、スマホの薄型化にも電池の進化は一役買い、さらにモバイルバッテリーの一般化がなっていく中て、様々な電子機器をモバイルバッテリーで充電することができるようになったことで、旅行の時だけでなく、災害に備えるという点でも生活を変えてくれました。

車中泊用に以前購入したポータブルバッテリーは、車のバッテリーと同じ鉛蓄電池を使っていたものを当初は使っていたので大きく重く、充電するにも時間がかかっていたのですが、先日購入したACコンセントのあるポータブルバッテリーはリチウムイオン電池搭載で小さく軽くなり、さらにソーラーパネルからの充電も可能なので、もしこの文章を書いている時点で日本に接近している台風で自宅が長期停電になったとしても、台風が通り過ぎて晴れればその日の夜に使う電気を自分で発電して貯めて使うことができるという、ちょっと前なら考えられないような便利な事になっています。

現状でもう少しお金を掛ければ家全体の電気をまかなうくらいの容量のあるリチウムイオン電池を設置し、自宅の屋根にソーラーパネルを付けることで何もしなくても太陽から自分の家で使う電気を供給することもできるようになりました。電気自動車に備えられた電池で自宅での生活をまかなうシステムもすでにできていますし、こうした状況は吉野氏が今回評価を受けた研究によってなされたことだということを改めて考えると、やはりもっと早くノーベル賞を受賞しても良かったのではないかなと思います。

将来的にはさらに大容量で、充電も早く爆発の危険のないスーパーキャパシタや全固体電池など、現代の研究者がしのぎを削って新たな電池の開発に邁進されていますが、今回の吉野氏の受賞はこうした次世代の電池を研究されている方にとっても励みになるでしょう。

電池の進化というのは世界のエネルギー問題を劇的に解決する可能性を秘めています。太陽光や風力など自然の力を使った発電がいまいち日本で普及しないのは、発電した電力をためておくことができないため、常に発電所を動かし、さらに遠くに送電することでの発電ロスをも考えた上で運転をしているためどうしても安定して動かすことのできる火力発電や原子力発電に依存してしまうところがあるように思います。

もし大容量の電力を貯められる新たな電池が開発されれば、家庭で使うくらいの電力なら十分にまかなえるくらいになるでしょうし、電池自体をコンテナに積んで運ぶことで、日中の晴れ間しか発電できない太陽光発電でも、パネルで発電した電気を少ないロスのみで利用することができるようになるのではないでしょうか。

これから電気自動車が普及していくかは、リチウムイオン電池の次の電池が担っているとも言えます。現在地道な研究を続けている方々には、こちらからは応援するしかできませんが、今来ている台風の生む原因とも考えられる地球温暖化を止めるためにも、新たな電池の開発を心からお願いしたいと思います。


カテゴリー: 通信サービス全般ニュース | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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