災害時の通信手段について改めて考える

 先日の大雪によって徳島県の被害がすさまじく、山間部における多くの集落が孤立し、安否確認がしばらくできないという状況に陥っていたようです。

 道が寸断され集落の安否確認ができないため、歩いて現場に向かった自衛隊員に付き添ったテレビのレポートを見ましたが、携帯電話での安否確認くらいはできるのではないかと思っていたら、取材を行なった場所では携帯の電波は届いていたものの、肝心の携帯電話の充電をする前に停電になってしまったのかわかりませんが電池切れを起こしたそうで、そこから発信も着信も全くできない状態だったそうです。さらに、つるぎ町と東みよし町は町を挙げて固定電話をインターネット回線のIP電話化していたことで、電力が復旧するまでは固定電話による安否確認ができないという状況になっていたようです。

 今回の場合は携帯電話は何とか使えたということで、長時間の停電が続いても携帯電話やスマートフォンの充電ができる環境を用意してあれば良かったですが、もし携帯電話の基地局も止まってしまったらと考えると、やはり考えなければならないのは全てをIP電話化してそのバックアップ対策を講じなかった行政の問題に行きつきます。住民レベルの対策として考えると、携帯電話を一時的にでも使うためには、手回し式の発電機能のあるラジオを一つ用意しておけば状況は変わったのではないかと思います。その際、携帯電話・スマートフォン充電用のケーブルと一緒に保管しておかないとラジオは聞けても携帯の充電はできなくなってしまうのでご注意を。

 話を公的な災害対策の話に戻しますと、小規模な集落の場合、普段の通信が遮断された時のことを考え、直接外部と連絡が取れる無線設備と発電機を用意しておき、集落内での安否情報をとりまとめて連絡するような用意はできなかったのかなと思います。無線だと免許なしでは使えないという問題もありますが、その場合には衛星通信を利用する携帯電話を1台用意しておくのもありでしょう。そうした対応策とは別に、集落の全てをIP電話に変更するのではなく、1回線でも従来のメタル回線および、停電でも使える電話機を用意しておけば、全く連絡ができないことは回避できると思います。まさかIP電話化についてのディメリットについて全く知らせないまま、住民の固定電話を強制的にIP電話化したこともないとは思いますが、もし今回のことで、IP電話からメタル回線に戻したいという住民がいたら、きちんと戻してあげるようなことも必要になってくるでしょう。電気とともに電話線も一緒に切れてしまえばどうしようもありませんが、要は複数の手段を持つことがいざという時に備えるためには大切だということです。もし電気と電話の両方とも切れてしまったとしても線をつなげばすぐに使えるようになるメタル回線と違い、今回のような災害とは全く関係ないネット上のトラブルが起こった場合に長い時間使えなくなる可能性のある別の危うさも持っているのがIP電話であるということも認識していただきたいものです。今回の雪に限らず、あらゆる災害・通信障害に対応するためにはできるだけシンプルな仕組みをどこかに用意しておくことの大切さというのが明らかになったような気がしています。

 このように書いていく中で、固定電話をやめて携帯電話に一本化した方が簡単でいいのではないかと思う方も多いと思います。実際、現代の生活においては携帯電話のみで固定電話を引かなくても一切支障は出ないわけですし。ただ、今回のような小規模な集落での安否確認という面で考えると、契約する電話会社を変更しても特別な事情がなければ電話番号が変わらない固定電話に対し、携帯電話の場合は契約者の側の思惑でMNPしないで電話会社を変えてしまうと番号が変わってしまうというのが問題です。もし役所に携帯電話の番号を届けてある場合、いざという時に安否確認のため役所が電話を掛けても、電話会社を変更した際に通知でもしていない限り、通じない場合も出てくるでしょう。そうなると災害時に携帯電話が使えていたとしても、役所が安否確認するためには役に立たないことになるわけですね。ですから、このような小さな集落で安否確認に携帯電話を使うということなら、回りの住民の方との連絡用としても使われることが想定されるので、できるだけ今使っている番号を変えないようにするか、変更時にはすぐに知らせるよう申し合わせをしておくことが大切になるでしょう。集落の中での連絡網を作る場合、個人情報保護法との兼ね合いもあるので、どのあたりまで情報を地域や役所を含めて共有すべきなのかという別の問題も出てきてしまいますが、これらの問題も含めて対策を考えておかないと、また同じようにライフラインが遮断された孤立集落との連絡が付かなくなることも起こりかねませんので、早く全国の行政には対応を願いたいものです。


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