格安SIMときちんと比較しようとしない新聞の不思議

 今年も一ヶ月が過ぎただけではありますが、心踊るニュースというのはスポーツで健気に頑張っている姿を見るのみで、なかなか明るい気持ちになれないというのが正直なところです。特にこの一月のニュースを見ていて思うのは、多くの人がマスコミの主導するスキャンダルで叩かれる中、同じようなことをしていても微妙に叩かれない人たちがいるということです。こうした現実を見るにつけ、不公平だなと思いつつも、多少正義感を振りかざしたくらいでは微動だにしない力を持った人によってこの社会は動いているのかも知れないなと半はあきらめに似た想いを持っています。

 と書くと、政治の話や芸能界の話になっていきがちですが、直接このブログとは関係ない話なので、ある意味政治的なイデオロギーとも芸能人のファン気質とも関係ないところで、最近ムカついた話をしていこうと思います。

 これは今に始まったことではありませんが、一般人がいきなりニュースのネタになりバッシングを受けることが良くあります。ツイッターやSNS、ブログなどで社会通念上不適切だと非難されるような発言をアップしたり、自ら証拠となるような決定的場面が写った写真をアップしたりして会社をクビになったり学校を退学になったりすることが面白おかしく報じられることは列挙に暇がありません。

 そうした報道の解説の中で、アップする前に他人の目を通さないで直接多くの人の目に触れる場に意見として出せてしまう、個人の発信の危うさということが指適されることがあります。それとは対極的に、マスコミの出す情報というのは記者が書いたものを編集者がチェックして出す分、いわゆるとんでもない発言は少なく、今後インターネット普及の中でその存在が危ういとはいっても無くなることはないのではないかという意見を持つ人も少なくありません。きちんと取材して正しい事を報道してくれるものならば私もそうした意見にくみしたい側の人間ではあるのですが、昨日の朝日新聞の朝刊の一面の記事を見て、愕然としてしまいました。

 このブログでは何度も書かせていただいている携帯大手3社のスマートフォン用の安いプランについての記事ですが、朝日新聞では高速クーポンが1GBと少なく、さらに一回5分以内なら定額の1,700円で使える通話セットの金額が、ほぼ3社横並びで4,900円くらいになっていて、思いの外下がっていないと報じています。さらに、セット料金を下げたことで端末の価格を実質値上げすることと、値段と同時に多方面から批判のあったいわゆる契約の2年縛りについて、多少解約に手数料のかからない期間を増やすものの2年縛り自体はなくさない方針であることが紹介されています。

 その事自体は正しいことで難癖を付けるものではありませんが、私がびっくりしたのがこうした携帯大手3社に対抗する「格安SIM」を提供する事業者の例としてあの「楽天モバイル」の名前を紙面に出したことです。このブログを読んでいる皆様の中には既に御存知の方も多いと思いますが、日本にあまたあるMVNOの中で、携帯大手3社のプランに正面から対抗する形で戦略的な通話定額とのセットプランを出してきたのは2016年1月の終わりでした。

 格安航空のLCCのニュースが新聞だけでなくテレビでも大々的に報じられたことと比べても、そもそもこの衝撃的なニュースがインターネット以外のメディアではほとんど報じられなかったことすら不公平だなと思うのですが、私は昨日新聞で「楽天モバイル」の文字を見た時、ついに格安SIMや格安スマホの業者にスポットライトが当たり、今後はMVNOでも通話定額のプランが当り前になるのではと思いました。しかし、記事の内容を読んで大変がっかりせざるを得ませんでした。

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 写真の記事は「楽天モバイル」のプランについて書かれているところだけを一部抜粋したものですが、その中に書いてあるのは携帯大手3社とほとんど同じように1回5分以内の通話定額プランが使え、さらに高速クーポンも3倍以上の3.1GBまで使えて毎月の利用料が約半額の「通話定額オプション」付きプランの紹介ではなく、従来の月1,600円で高速クーポンが3.1GB使え、通話料が30秒20円という、通話定額オプションには全く触れない旧プランの紹介のみでした。これなら別に紹介するのは「楽天モバイル」にこだわることはなく、携帯大手3社プランと同じ高速クーポン1GBに通話SIMをセットできる「DMM mobile」のプラン料金1,260円と、月4,900円の携帯大手3社プラン(実際はソフトバンクとauのプラン)と比べるべきでしょう。

 さらに、この「DMM mobile」では「楽天でんわ」の仕組みと同じく今の携帯電話の番号を使って先に4ケタ番号を自動的にアプリが付けることで30秒10円と半額の料金で電話できる「DMM トーク」を無料で使えます。高速1GB程度ならあまり付いていても意味がないと思う人がいれば、「DMM mobile」には高速クーポンが付かない月額1,140円のプランもありますし、so-netの「0SIM」だったら待ち受け専用でメールとウェブをちょっと見るだけで月間の高速通信を499MB以下に抑えられれば月額700円しかかからずに電話番号を持ちスマホを使えます(通話料及び500MBを超えるデータ通信には追加料金がかかります)。

 こうした内情を知らないで署名入り記事を記者が書き(実際の記事では実名での署名があります)、編集過程も通ったということはまず考えられませんので、あえて読者にとって有益な情報を報じない新聞社の姿勢の裏には、記事の中で携帯大手3社の動向を批判するようなスタンスを取っていながら、大手に対抗しようとしているMVNOの情報をなるべく報道しないように努める力がどこからか働いているのではないかと邪推したくもなろうというものです。

 さらにこういう報道が出てしまったことで思うのは、これから新聞社がいくら正義ためにペンで戦うというような社説を載せたとしても、結局はどこか強大な力がある勢力にべったりの報道しかしないのではと思えるだけですし、素人がトンデモ発言や写真をアップして墓穴を掘ったしても、その事をことさらに追求して個人のプライバシーを広く晒すことに一役買うような報道をすることは、強大な力と戦わない代わりに反論してこない弱者にはきつく当たるという、自らの事を顧みない行き過ぎた報道ではないかと思わざるを得ません。

 マスコミの中でもテレビや新聞というのは多くの人がその情報に影響を受ける分、金額で比較するなら条件を公平にし、同様のプランがあればそれを調べて読者に判断してもらうべきです。この事は社会の問題の中では大した事ではないかも知れませんが、私個人は新聞自体の情報についての疑いを持たれるきっかけになっても仕方のない報道であると思います。


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格安SIMときちんと比較しようとしない新聞の不思議」への2件のフィードバック

  1. けいたいまにあ 投稿作成者

    マスコミの人は基本的に忙しすぎるのであまり勉強する暇がないようですね。
    また記事の決定権を持つ上位の人ほど新しいことについていけないとおもいます
    なので、公平かを判断することもできないので、
    信頼できる筋からの情報を流しておけばOKとなるのでしょう
    今回の件ではMVNOの情報をなるべく報道しないように努めるというよりも、
    単純に広告費をあまり出さないMVNOを取り上げる必然性がないだけに思えますし、
    ショップもある大手3社の安心体制のほうがおすすめの方も多いと個人的に思います
    ただ、現在はネットを探せばいろいろ情報がでてくるので
    マスコミの情報が知るきっかけになると思えばいい時代だと思っています

  2. てら 投稿作成者

    実のところ、こうした新聞を含むマスコミのMVNOについての報道が少ないことによって、膨大なユーザーの流入が抑えられることによって、私などは安定してスピードが出る回線を使わせてもらっているという側面もあるので、あまりMVNOでの契約が一般的になることは使う側からするといいことばかりではありません(^^;)。
    しかし、最近では専門ショップにおける拠点で来店によるサポートを充実させているMVNOもありますし、事実は事実としてきちんと報道することが新聞には求められるのではないかという風には思います。エントリー内にも書きましたが、MVNOと同じように大手と安さを前面に出して競っているLCCと比べて、通信におけるLCCの扱いはマスコミにおいては不当に低いと、私がスマートフォンを使い出した頃から思っています。
    ちなみに、私の初スマートフォンはPHS回線を使ったシャープのW-ZERO3でしたが、マスコミでは全く話題にはなりませんでした(^^;)。

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