一般道にある深夜営業のドライブインは貴重な存在

 車中泊の旅に出る際、大事であり問題をはらむのがどこで車中泊をすべきかということです。インターネットもなく、世間の考えも鷹揚な時代なら道端に車を停めて朝まで過ごしても直接非難を浴びることは少なかったと思いますが、元々日本中の土地の中でだれの土地でもない場所というのはないわけなので、ひとたび土地の持ち主や管理者から車中泊はダメだと言われれば黙って出て行くしかありません。ただ、長距離の運転に疲れ、運転し続けると事故による生命の危険がある場合は、公共の駐車場で仮眠を取ることぐらいは許されるべきだと私は思っているのですが。

 そうした仮眠休憩に使える場所として、さまざまな道の駅や高速道路のサービスエリア、パーキングエリアが今では利用されるようになっています。ただ残念なことに、深夜にそうした場所に辿り着いたとしても、売店やお風呂などの営業は終了していることがほとんどで、単に車の中で仮眠を取るだけの場所になってしまっています。まだ高速道路が全国に張り巡らされる前は、国道沿いには深夜営業のドライブインがあり、食事休憩や仮眠ができるところもそれなりにあったように思います。

 そんな中、現状でも多くのトラックが休憩に立ち寄り、食事やお風呂を24時間営業で提供しているドライブインが三重県桑名市に存在しています。国道23号線沿いの長島温泉にある「オートレストラン長島」で、ここには大浴場もあり、安い値段で温泉に入れます。一時期ほど高速料金が安くない今、一般道をひた走るトラックドライバーのオアシスのような場所で、休みを取りながら国道を名古屋から関西方面(当然その逆もあり)に旅行している一般車にとっても有難い存在ですが、何と言うことか事件報道によりこの場所がクローズアップされてしまうという皮肉な事になってしまいました。

 トップニュースになる重大な事件などというものはめったに起こるものではありませんが、事件の被害者が施錠された車の中から発見された時以降にこの施設を利用していた方は大変だったと思います。事件に関する証言を得るためでしょうか、捜査員の方々が仮眠中のトラックや車の中にいるドライバーを起こして事情を聞いているような映像がテレビニュースで流れていましたので、仮眠するつもりで停めにきた人たちは体が休まらなかったでしょうから。早くに犯人と思われる男性の身柄が確保されましたので同じような警察官の巡回はなくなるでしょうが、今後しばらくは事件の認知度もあって、また元のようなドライブインの使い勝手を続けられるのかという不安も出てきます。

 どういうことかというと、仮眠のため車内で横になっていたら、車の中にいる人は大丈夫か? と過剰な気を回され、とても仮眠も取れないような雰囲気になりはしないかということです。それでなくても、その場所で起こった事件が事件だけに、トラックでもキャンピングカーでもない車の中で明らかに人が横たわっているのを車の外から見たら、やはり考えなくないようなことを想像されてしまうでしょう。誤解を受けたくなければ車中泊ではなくきちんと宿を取った方がいいという話に持って行かれるかも知れませんが、現状では予約いらずで格安に使える宿というものが日本では成立しにくいところがありますので、週末の限られた休みに行程を欲張って長い距離を移動しようとすると、時間の節約のためにはどうしても車内で仮眠を繰り返すような形になってしまいがちです。今の生活パターンの中でもいろんな所にお金を節約しながら行きたいという場合には、やはりこうした施設の存在があること自体が有難いものです。

 今回紹介した「オートレストラン長島」周辺の駐車場にこれから何らかの規制がかかるのかどうかはわかりませんが、今までと同じように国道を走る車のオアシスとして存在し続けて欲しいものです。また、特に民間で頑張っているドライバーの休憩施設は積極的に利用し、旅行者とドライブイン側が共存共栄できるように努力していきたいものです。


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