モーターショーで出てこない技術

 今年も実に様々な方の訃報がありましたが、先日テレビで田中好子さん最後の主演映画『0(ゼロ)からの風』を見る機会がありました。役どころは悪質な飲酒運転をした車に轢かれて亡くした息子さんのため、「危険運転致死傷罪」成立に向けて奔走した日々を実話を基にして描いた物語なのですが、まさに皆既月食を見に行った帰りにまさに「危険運転致死傷罪」に問われるくらいに酒を飲んでいた車によって小学生2人の命が失われたという痛ましい事件が起きてしまったのです。

 多くの人に刑法が変わったことは認知されているとは思いますが、泥酔して朦朧とした状況の中でいくら罰金や懲役が増えたと諭したとしてもキーを持って運転するのを止めることはできない場合があるというのが実は問題なんですね。それでも複数の人で飲んでいれば周りの人でその人を止めることができるかも知れませんが、一人で飲んでいて車の運転するのを停める術というのは相当に難しいと思われます。

 こういった事故が起こるたびに話題に上がるのは、ある程度のアルコールを飲んだ状態ではエンジンがかからない車の開発です。東京モーターショーではさまざまな未来の車が紹介されていましたが、事故を起こさない車は市販までされているものの、飲酒運転できない車については私の確認した範囲では情報は流れてきませんでした。アルコール・インターロック装置というものはトヨタや日野自動車あたりで業務用として実行化に向けての取り組みが行われ、運送会社の中には自社所有の車に全てこの装置を付けているところもあるそうです。政府もアルコール・インターロック装置を義務化へ向けて検討会を行なったようですが、インターネットのキーワード検索で出てきたのは国土交通省の平成19年12月26日付けの資料が一番最初で、この文を書いている時からすでに4年が経過しています。本気で酒気帯びや泥酔状態での車両事故を無くそうと思うなら、そういった装置を全ての車に付けることを義務付けるとかしないと、また同じような事故が起こることは避けられないとしか現時点では言えないのがつらいです。

 ただ、こうした装置を付けることについての問題は、どのくらいまで検知器の感度を上げるのかというのがありますね。例えば車中泊で泊まっている道の駅でお酒を飲み、緊急時など移動しなければならない状況になった時、高感度の検知器が付いていたら一切車を動かせなくなってしまいます。複数の人数で出掛けている場合はいいでしょうが、一人で車中泊の旅に出ていて車内で酒を飲んだまま大きな地震に見舞われたら、車を使って移動すること自体できなくなってしまいます。私の場合はそういったことを考えて、ちゃんと宿を取らない限りはお酒は口にしないことにしていますが、そうした私の考えを全ての人に押し付けるわけにもいきません。ですから、前にも書いた事ではありますが、車中泊の車内でお酒を飲もうと思われている方は、くれぐれも飲酒運転にならないように気を付けて下さい。深酒をして早朝から出発する場合には翌朝にお酒が残る可能性についても考慮しましょう。

 そうは言っても、やはり何も悪くない人が理不尽に命を落とすような事が今後も続いていいわけがありません。原付のヘルメット着用義務やシートベルト義務化という時にも当初はかなり違和感がありましたが今では当り前になっていますし、新たな装置装着ということになればそれだけで日本経済が回っていくきっかけにもなるような気もします。今こそ日本の政府やメーカーが共同でやるべき事なのではないでしょうか。


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