限られた時間の中で流す曲にも思い入れを!

本日、車を運転しながらラジオを聴いていたのですが、たまたま付けていたのがNHK第一放送で、午前中の放送は「すっぴん!」という帯番組でした。番組で一つテーマを決めてそれに沿ったお便り・メールの紹介や、それらしい曲を掛けたりするというバラエティー色の濃い番組なのですが、2017年2月16日木曜日のテーマは「不器用」ということでそれに関する話や曲が流れていました。

番組で流れている曲はテーマを基にして選ばれたものが多いのか、本職でなさそうな人が歌ったり、いわゆる下手ということで有名な歌手の方の歌が多く流れたのですが、時間的には午前9時半前、関東や関西では交通情報を流すバックグラウンドで流れる曲として紹介されたのが(交通情報のない地方都市ではそのまま曲が流れます)、私の大好きな「生活向上委員会大管弦楽団」の「A列車で行こう」でした。

「A列車で行こう」というのはゲームの方ではなく、ジャズの超有名曲であってそのメロディを聴けば多くの人がわかってくださるほどジャズとしてはメジャーな曲なのですが、恐らくラジオから流れてきたものは、もはや器用だとか不器用だとかいう以前に、どこが「A列車で行こう」なのかわからないまま終わってしまいました(^^;)。

個人的にこの「生活向上委員会大管弦楽団」の事を良く知っている身としては、あまりにもこの曲を「不器用」というキーワードの中で選曲されたこと自体が信じられませんし、曲の長さ的には9分以上あり、実際に聴けるのがさわりの2分くらいだけという状況の中、なぜこの曲を選んだのかという気持ちが沸き上がってきました。

恐らくこのバンド名をいきなり出してもすぐにわかる人などいないだろうくらいのマイナーなバンドで、せっかく全国放送で流れたのに、何やらわけのわからないでたらめな演奏を「A列車で行こう」と称して世に出したのではと誤解を受けるように多くの人に思われてもこちらがいやな気持ちになります。そこで、興味のない方がほとんどだと思いますが、具体的に今回放送された内容について紹介させていただくことで、いかにNHKのラジオ担当の人がいいかげんに曲を流したかという一つの例として紹介させていただくことにします。

このように、文字だけで音楽を語ったとしても、その曲を聴いた事がない人にとっては何が何やらわからないというのが正直なところだと思いますので、今回流れた「A列車で行こう」がたまたまYouTubeにアップされていたので、最後のところにリンクを貼らせていただきましたので、読みながら音楽を聴ける状況にある方はぜひ曲を聴きながら以下の文章をお読みいただけると幸いです。

この曲のポイントは複数ありますが、まず有名なメロディーに入る前に、当時はやっていたフリージャズの演奏家としても活躍されていた原田依幸氏のピアノソロがおよそ3分間に渡って繰り広げられます。演奏者の頭の中に浮かんだフレーズを、がむしゃらにピアノに向かって叩き続けるさまは、こうしたジャスが好きな人にはたまらない時間なのですが、ジャズと言えばスイングジャズというイメージを持っている人や普通の人が聴けば単にピアノをメチャクチャに弾いているとしか感じないでしょう。

この辺は抽象画の評価が人によって違うことにも似ています。ピカソの絵ならどんなにひどい絵だと思ってもそれなりにかいがいしく見るのが一般人の絵の見方なのかも知れませんが、名前も知らない日本人の描いた抽象画を前にしても、自分には全くわからないとそのまま通り過ぎるような形でラジオからピアノのアドリブが一通り流れてきたわけですので、後からこの曲が「A列車で行こう」と言われても知らない人は訳が分からないでしょう(^^;)。

しかし、この曲は原田氏のピアノソロが終わったとたん全く違った印象を聴く人に与えるものに変わっていきます。というのもバンドの名前が「生活向上委員会大管弦楽団」と称するように日本の当時のジャズ界でも有能なソリストが集まった集団であるので、まさにジャズのビッグバンドが演奏する体で、有名なメロディーの演奏が始まるのです。

その後、さらに日本の鉄道に乗って旅をしているのではないかと錯覚するほどに、きわめて日本的な情緒を持ったアドリブを挟んで、最後は実に格好良く曲が締まるように終わります。個人的には日本人のバンドが演奏した「A列車で行こう」の中では一、二を争そうくらいのアイデアが詰まった素晴らしい演奏だと思っているので、もしこの曲を「不器用」というキーワードで選んだ人がいたとしたら、がっかりしてしまいます。

さらに何よりも、最初の2分しか流れないのがわかっていて、全部で9分以上ある曲で、さらに中盤から終盤に盛り上がりのあるこの曲の最初の2分間だけを切り取って流すというのは、演奏する人の気持ちがまるでわかっていないことが悲しいです。お笑い芸人の出てくるネタ番組でさえ、同じように少ない時間で切ってはしまうものの、その時間の使い方は演者の考える余地があるわけであり、今回のように演者の意図をまるで考えずに単に面白そうだからとスタッフに好き勝手に切られるというのは、ラジオで音楽を流す資格すらないのではないかと、そこまで思ってしまったのでここまで書かせていただきました。よろしければ、リンクした曲の方を一通り聴いていただき、最初の2分でこの曲を切るのが有りなのか考えていただけると幸いです。


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