「MD」(ミニディスク)の生産が終了することになり改めてパーソナルオーディオの流れについて考えてみる

音楽にしろ写真にしろ、インターネットが常につながっていてつなぎながらずっとスマホでの利用が可能になっている現在、いわゆる「専用メディア」を買わなくなりました。アナログの時代は音楽はレコードやカセットテープ、カメラはフィルムに現像、紙へのプリントとそれぞれにお金がかかる時代を経験してきたのですが、音楽がデジタル化する中で色々なメディアが出てくる中、小さくて扱いやすいメディアが今回話題に上げさせていただくミニディスク(MD)です。

デジタルオーディオはアナログレコードからCDに変わっていましたが、その取り扱いには神経を使う事となりました。アナログレコードの場合、手で触って指紋や汚れが付いたとしても汚れを拭き取れば良く、最悪傷が付いてもポツポツと音が入っても再生できましたが、CDの場合は汚したり傷が入ってしまったら音自体が出なくなってしまうので、CDはあくまで保管用として購入し、外で聞いたり車の中で聞くために別のメディアに録音し直して楽しむということが当時は一般的だったように思います。

録音可能な音楽用のメディアとして、今回紹介するMDの他に、カセットテープとサイズが同じで、専用デッキにアナログのカセットテープをセットしても使用できるという「DCC」(デジタルコンパクトカセット)という二つの規格が競いました。昔の資産を大事に使うという意味ではDCCに優位性がありましたが、二つの中で普及したのは結局カセットテープとは互換性のないMDになりました。

これは私が直接に聞いた話ではありませんが、現在沖縄音楽の世界において有名なりんけんバンドの照屋林賢氏の父親で、自身も優れた音楽家、プロデューサーとして活躍した照屋林助氏が喜んでMDを使っていたという話があります。なぜかと言うと、DCCはテープメディアなので、どうしても切れたりランダムアクセスするのに時間がかかるなど、昔のカセットテープのディメリットをそのまま踏襲しているのに対し、ディスクメディアで保護カバーに入っているMDは、ランダムアクセス可能で、さらにデッキ(プレイヤー)によってメディアが壊れる心配も少ないというメリットがあります。さらに照屋林助氏は野外に出て積極的に道端で音楽を奏でる人の音を録音し、その中から私たちが今でも聞くことのできる素晴らしい音楽家を発掘されたりした方なので、録音用メディアとしても安心して利用できるMDの良さというものを登場時から感じていたのではないでしょうか。

私自身も、こうしたメリットを利用して、ポータブルオーディオとして外での音楽を楽しんだり、録音などが許可されていた場合のライブハウスでの演奏をMDに録音して楽しんできました。ただ、デジタル圧縮方式が独自で、さらになかなかパソコンとの相性が良くなかったこともあり、その辺から他のメディアにシフトしていくことになります。

やはり、MP3という圧縮方法によってICレコーダーから派生したポータブル録音機が普及するようになって、microSDカードに録音したものをハードディスクに移したり、クラウドにアップロードすることによって、メディアを買い足さなくても良くなりました。パソコンにもCD-Rの焼けるドライブが付くようになり、CDのコピーをCD-Rで作って車のCDデッキで十分に使えるようになったので、気軽にそしてお金を掛けず(CD-Rメディアは一枚あたり数十円で購入できた)楽しめるようになりました。また、音楽を聞く場合にはフラッシュメモリに多くの曲を入れることができるようになり、今はインターネット経由での配信で十分楽しめるようになってきたので、録音するという行為自体も必要なくなりました。

MDはその大きさから、もしパソコンにドライブを内蔵したような製品が出ていたら、また違っていたのではないかと思います。写真や音楽、動画だけでなくデータ記録と保存用のメディアとして一般化してしまえば、何しろ保護ケースが付いているのでそこまで扱いに困ることもなく、パソコンやそれこそスマホに接続するための製品も出ていたかも知れません。昔、MDに記録できるデジカメもありましたが、これは音楽用のメディアは使えないというもので、その辺も何とかならなかったのかなと思いますね。

まあ、今はそうしたものがSDカード系になっているので、さらに小さく便利になっていますが、日本のメーカーは当時中国から出ていたUSBメモリやSDカードに直接録音可能なラジオなども最初は出していませんでした。

今やカードスロットを搭載していないiPhoneユーザーに向けて、データのバックアップや移動が簡単にできる外付けSSDも出ているので、もはやMDの出る幕はなく、生産終了も止むなしかという感じはします。しかし、やり方によってはもう少し何とかなったという感じがあることもありまして、ここ最近の日本メーカーの状況を見る中で残念な気持ちになってしまうということはありますね。

現在の音楽配信の世界というのは、永遠にお気に入りの楽曲をネットから自由に聞けるかわからないところもありますので、やはりきちんと自分の好きな音楽をデータ化して持ち運んだり収納するメディアというものが必要なくなるということはないと思います。MDはそうしたメディアの中で、それなりの足跡を残したことは確かでしょう。今のスマホはiPhoneにしてもPixelにしてもメモリカード非対応のものが増えてきましたが、全てを本体内とクラウドに依存するというのには抵抗があるので、新たにさらなる利便性のあるメディアが出てくることを期待したいですね。

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てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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「MD」(ミニディスク)の生産が終了することになり改めてパーソナルオーディオの流れについて考えてみる」への2件のフィードバック

  1. ひさご

    以前より拝読しております。
    初コメントですが、様々なリスク管理の考え方など、大いに勉強させていただいております。
    ありがとうございます。

    MDの話題につられて出て参りました。
    私は1999年頃からMDを使い始め、約800枚ほど録音しました。
    音源は衛星音楽放送のスターデジオとスペースディーバでした。
    前者はスカパー内のチャネル、後者はTOKYO FM系ですが、こちらはJCSAT-2Bという通信衛星を使っていて、専用のアンテナとチューナが必要でした。
    その後ストリーミング全盛となり、どちらも昨年放送を終えました。

    MDデッキも作られなくなり、800枚のMDを何とかしたいと考えましたが、直接パソコンに取り込む手段を持っていません。
    また音源がデジタルなので、MDのコピー制限規格(SCMS)によりデジタルのまま別の機器にコピーすることができません。
    そこでSCMSをスルーできる業務用のメモリーレコーダを入手して、ようやくmp3化した次第です。
    作業終了までMDデッキが壊れないよう、祈りながらの作業でした(笑)。
    MDやVHSのように、記録媒体が残っていても再生機器がなくなってしまっては、お手上げですねぇ。

  2. てら 投稿作成者

    ひさご さん 初コメントありがとうございました。

    衛星放送ラジオは、それこそ昔の話になりますがセント・ギガはBGM的に聞いていました。衛星ラジオは、以前このブログでも紹介した方がミュージックバードでジャズの番組を持っていたので興味はあったのですが、さすがにコスト的に折り合わず見送っている間に終了してしまいました。もし聴いていたら、膨大な番組を録音したソースが残ったと思いますが、今の世の中ではそれを使えるようにするのに一苦労してしまうというのも大変ですね。

    私はデジタル録音はDATがメインだったので、オリジナルのMDソースはそこまで持っていなかったのですが、MZ-RH1は買いました(今は手元にありません)。主にPCM録音用にと買いましたが、当時はこれを使ってオリジナルMDの内容をデジタルコピーするために買っていた方も多かったように記憶しています。

    さっき調べたら、今ではMZ-RH1がなくてもデジタルコピーができるという情報を載せているページがありますね。

    https://lets-program.com/mz-rh1_vs_netmd/

    ただ、そんなに数が多くなければ専門の業者さんに変換をお願いする方がコスト的には安いということらしいです。個人的にどうしても人の買わないような規格のものを買って後で困るということの繰り返しなのですが、それはまたそれで良い思い出にはなるのですね。

    ちなみに今、LIVE録音をする場合にはメモリカードが使えるレコーダー一択でしょう。

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