日本の有名な温泉地で日帰り客を含めた入場規制を行なうようになったニュースを聞き旅の変化を思う

山形県の銀山温泉といえば、川を挟んで古い木造建築の旅館が立ちならび、そのひなびた雰囲気は昔から温泉ファンの間でも人気がありました。特に海外の方々がイメージする日本の温泉というものに近いイメージがあるからなのかも知れませんが、新型コロナ騒動が落ち付いた今、内外から相当の観光客が押し寄せていて地元の方々を巻き込んでた大変なことになっているようです。

2025年1月7日から、温泉地付近のマイカー規制を行ない、利用者は近隣の駐車場に車を停め、有料のシャトルバスを利用しないと旅館の立ち並ぶエリアには行けないようになったそうです。ただ、問題なのは宿泊客だけではありません。場所柄新しく宿泊施設を作るわけにもいかない中、その雰囲気を求めて多くの宿泊しない「日帰り客」も押し寄せることがさらに問題になっているので、その対策として宿泊しない17時以降の観光利用者に1人1150円のチケット制にして、ネットでの予約でチケットを販売しているものの人気で多くの日はキャンセル待ちになっているそうです。

有料のチケット制というと白川郷の入場にも今はお金がかかるようになっているようですが、私は幸いにも多くの観光客が押し寄せる時期よりかなり前に訪問することができました。銀山温泉にはちゃんと宿泊してその様子および共同湯を楽しみました。ただ、その頃も観光地としての銀山温泉は大人気で、第一候補としてリストアップした宿は予約でいっぱいで泊まれませんでした。また、私たちが泊まった宿も、川に面した部屋はかつての客室だったようですが、私が泊まった時には食堂として使われていて、夕食時に窓から川を挟んだ旅館のライトアップや橋に人が出て花笠温度を踊っている様子を見ることはできました。まだインターネットがそこまで普及していない時代で、当時海外からやってきた女将さんがいる「藤屋」さんを正面に見ながら(泊まった宿はその反対側でした)、いい雰囲気の温泉情緒を楽しんだものでした。

改めて銀山温泉について調べてみると、先述の藤屋さんはもうなく、私たちの泊まった宿も名前を変えてリニューアルして営業されています。ちなみに私たちが泊まった時の宿泊料金は一泊二食付きで9千円くらいだったのですが、今同じ旅館に泊まろうとした場合一人25,000円くらいから泊まれるものの、今からだと3月いっぱいは予約すらできない大盛況でした。

ひなびた温泉が好きで自分が体験したことなどを作品として発表している漫画家のつげ義春さんのエッセイを以前読んだことがあって、ひなびた温泉宿に泊まる時の予算は、一人1万円でお釣りが来るかということを基準にしているという話を読んだことがあります。私が行った当時の銀山温泉はその条件にはまっていたのでした。

私も以前このブログで紹介し、私の温泉趣味の師匠とも言えるジャズ・ライブハウスのマスターで本人もジャズ・ピアニストとして活躍され昨年逝去された明田川荘之さんから教わった宿も、人もそれほどいないひなびた温泉宿の雰囲気を楽しめるような宿でした。

確かに時代は変わり、以前はつげ義春さんの出す条件を満たすだけの宿はどんどん減っているというのが正直なところでしょう。物価の上昇などを考えると一泊1万5千円から2万くらい出せばそうした温泉の雰囲気を楽しみながらゆっくりできる場所に泊まりに行きたいと思いますが、現在は東京で温泉もなにもないホテルに泊まっても相当高額だったりしますから、古き良い日本の温泉を宿で楽しむことはだんだん難しくなっているように思います。

ちなみに、もうすぐ来てしまう阪神・淡路大震災が起こる直前、私は友人たちといっしょに明田川さんから教わった岩手の大沢温泉・山水閣に泊まり、前日の夜中に帰って17日の月曜日は代休を取って家で寝ていてその状況をテレビで見ることになりました。楽しかった湯治場の雰囲気の残る温泉宿から、一気に現実に引き戻されてしまった思い出があります。その時の衝撃は大きく、たまたまその直後知人から被災地に未使用のタオルを届ける役目をお願いされたので、現地まで他の支援物資を持って訪れたことも連動して記憶しています。

災害の記憶とは悲しいものですが、温泉の仕組み自体も地震の原因にもなる火山との関係もありますし、日本で生きていくということは、その場所の様々なところを見て、それを楽しんだり涙を流したり、そうしたことを記憶していくことが大事だと思っています。今後、様々な場所を訪れたいとは思っていますが、チケットで入場制限するような場所というのはどうしても人気で海外からの人が集まりやすいように思います。私自身は、今までの思い出などともからめながら、単純に景色がきれいというような事ではなく、色々なものを読んだりしてその場所に思い入れを作ることで、その思いを共有する人が少ない場所へ行ければいいなと思っています。

カテゴリー: 旅行・交通関連ニュース | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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日本の有名な温泉地で日帰り客を含めた入場規制を行なうようになったニュースを聞き旅の変化を思う」への2件のフィードバック

  1. ケータイオタク

    オーバーツーリズムの影響は色々ありますね。以前より個人旅行がしづらくなった感じがします。有名施設の多くが事前予約制になって日程を決めておかないと回りにくい。
    以前ドイツのノイシュヴァンシュタイン城やオランダのアンネフランクの家なども予約なしでふらりと個人で行けたのですが、今は予約が無いと入れない。
    手ごろなホテルも予約が無いと簡単に泊まれない。個人的には多くの施設を回っているので良かったですが。ドイツのヴィーナス教会やルートヴィヒ2世のヘレンキムゼー城やリンダーホーフ城も交通の便は悪かったけど訪ねておいてよかったです。
    スペインで4週にわたり闘牛を見たのもいい思い出です。
    災害と言えば阪神大震災から早くも30年。以前神戸市東灘区に住んでいたこともあり、当時はTVに見入っていました。そのあと神戸を訪ねた時は変わりすぎて道に迷いました。見覚えのある家並みの被害には何とも言えなかった。

  2. てら 投稿作成者

    ケータイオタクさん コメントありがとうございます。

    今現在の旅行を楽しむ人にとっては、昔話などはあまり意味をなさないのかも知れませんが、日数が限られた中でもふらっと色々なところに行けた時代に旅をできたことは個人的な体験としては良かったと思っています。逆に、今は旅行に限らず基本的にはスマホを中心にしたネットをからめた方が快適な旅行ができますので、今の環境の中で自分でどう楽しむかということを考えることも大切だろうと思います。

    先日、熱海のMOA美術館に行った際、美術館の駐車場に車を停めた時点でスマホから電子チケットを買いましたが、それでも通常の価格より安く入れましたので、そういう事を知っているかいないかで旅の行動も変わってきます。事前にネットから入場可否がわかれば、無駄にそこまで行かずに他の行程を選べます。車での旅であれば、まだまだ自由気ままに旅ができるのではないかという気もするので、昔を懐かしむだけではなく、新たな旅のプランを考えて実践したいものです。

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