軽自動車の「買い換え需要」は本当にあるのか

 軽自動車の自動車税について、与党の税制調査会は軽自動車の増税についての新たな内容を発表しました。ニュースでは増税になるのは平成27年4月以降の新車に限ると発表され、多くの人は胸をなで下ろしていかもしれませんが、政府とメーカーにとっては都合のいい内容であっても、ユーザー側にはそこまで税金が上がらなかったと安堵できるものではないように思われます。というのも、私が参考にした一連の内容を報道した四国新聞の記事のよると、以下のような記述があります。

(ここから引用)
 ただ既存車の税額を据え置けば、新車への買い替えが進まない恐れがあるため、一定期間を過ぎた車の税額を重くする制度も導入する。
(引用ここまで)

 つまり、古い車(一説では新規登録から13年を超えるものに20パーセント増しという話もあります)に乗っている人は、税金を上げるのでそれが嫌なら買い換えなさいという事でしょうか。しかし、私自身はたとえ税負担が今より上がるとしても、車を新しい年式のものにしようとは思いません。お金がないからという事が全てではなく、以前にも書きましたが、私が現状の軽自動車を購入したくない理由には装備に不満があるといことと、増税分以上にかかるかも知れない維持費の問題があると認識しているからです。それは「エコカー補助金」を出すために政府とメーカーが一体となり、とにかくカタログ値の燃費を伸ばそうとしたことにより、数々のことが変わってきてしまいました。具体的には以下のようなものです。

・新しい軽自動車のほとんどがスペアタイヤを搭載していない

 これは、車のタイヤがほとんどパンクすることがないという統計から、スペアタイヤおよび工具を積むとその分だけ重くなることで燃費が悪くなることを回避しようとしたメーカーの方策で変わってしまったものです。街乗りだけならそれでもいいでしょうが、山の中で修理不能なパンクをした場合、救援が来るまで身動きが取れなくなります。新車にオプションでスペアタイヤとジャッキを加えてもいいですが、新品の値段は高いですし、税金の負担分以上にコストが掛かるでしょう。個人的な見解ですが、古い車なら最初からスペアタイヤが入っていますし、それで多少燃費が悪くなるとしてもどうせ旅行する時にはそれなりの装備を積んでいきますので、標準価格の中にスペアタイヤと工具が入っている車の方が私はいいです。ついでに言うと、スペアタイヤの代わりに搭載されているパンク修理剤には消費期限があり、いざ使おうと思っても消費期限切れになっていてうまく修理できない場合も想定されます。常に非常時の事を考えるならばパンク修理剤の定期的な買い替えおよび古いものの廃棄が必要になり、その負担はユーザーが負うことになるでしょう。将来的にパンクしないタイヤが一般化すればいいのでしょうが、乗り心地の問題はどうかということもありますし、少なくとも今のタイヤ代と同じくらいにならなければまだスペアタイヤ搭載の方がコスト的には一番有利でしょう。

・アイドリングストップ機能に関する専用バッテリーおよび高品質オイルのユーザー負担

 アイドリングストップ機能についても、燃費をよくするために軽乗用車の新車にはほとんど搭載されていますが、機能が搭載されていないものと比べて トータルの維持費が安くなるのかはなはだ疑問です。以前こちらのブログにコメントいただいた方からの情報によると、アイドリングストップを実現するために装備されているバッテリーは従来のバッテリーに加えて2つ目のバッテリーとして搭載されていて、交換費用もそれなりにかかるそうです。また、元々小さいエンジンでそれなりに重くなった車体を動かすため、以前から普通車と比べると高い負担のある軽のエンジンをアイドリングストップ機能は自動的に切ったり入れたりすることになるので、従来よりも細やかなメンテナンスが不可欠になります。具体的には今までカー用品店でオイル交換をする場合、従来はある程度安いオイルでも問題なかったものが、少なくともメーカーの純正オイルにしないと長い間使っているうちにエンジン負荷による不具合が出る可能性がないとは言えません。こうしたアイドリングストップ機能を維持するための費用がガソリン代と自動車税増税分より高くなるかどうかは検証してみないとわからないかも知れませんが、バッテリー代だけでも一度に高額な負担になると思うので、それなりの距離を乗る人でなければ燃費および自動車税の差額でこうした維持費を回収できないのではないてしょうか。

 今回紹介した内容はもちろんそのまま適用されるかはわかりませんが、もしこの通り古い軽自動車の税金が上がるとしたら、確かに買い換え需要で中古市場に増税されるような古い車が安く出てくることは間違いないでしょう。私のように新しい軽乗用車に乗りたくないと思っている方は、あえて古い車でほとんど乗られていないものがあったら(もしもの時の足用としてただ置いてあるだけというご家庭も多いと思うので)、それを中古車で買うという選択も十分にありだと思います。本心では軽自動車のメーカーには燃費の数字を伸ばすことだけを気にせず、装備はシンプルでエンジンだけでそこそこの低燃費を実現し、もちろんスペアタイヤ標準搭載の軽乗用車が出てきてほしいですが、今まで通りの新車のラインナップでは買い換える気が起きないユーザーがいる事もメーカーには考えて欲しいものです。


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軽自動車の「買い換え需要」は本当にあるのか」への6件のフィードバック

  1. 桃太郎@東大阪 投稿作成者

    昔、ギリギリの装備で『アルト、49万円』というのが有りましたが、そう言うのが欲しいですね。
    ○2代前のワゴンRか、1代前のムーヴの車体
    ○ラジオ・エアコン・ABSと横滑り防止装置以外はオプション。
    ○価格は70万円
    があれば、新車でも買ってみたいです。

  2. てら 投稿作成者

    桃太郎@東大阪 さん コメントありがとうございます。
    個人的には最低限の装備でも自分でそれなりに揃えられると思いますが、一部の車種でスピーカー付きラジオが標準になっているものは、普通の車には埋め込まれているはずのスピーカーが最初から付いていないものもあるそうで、それはさすがに勘弁してくれと思います(^^;)。49万円のアルトもありましたね。マイティーボーイなんてのもありましたが、今そういう車を出せば、トヨタがしゃかりきになって需要を喚起しようとしている若い人が新車を買うのではないかと思いますね。
    エコカー補助金が始まって、一部のメーカーなどは燃料タンクの容量まで小さくしてまでカタログ上の燃費を上げ、ハイブリッドに対抗しています。どうせなら軽自動車のエンジンを推進力に使わず、全てを発電用にし、発電機から充電した電池で走る車という形にしてくれたほうが、車中泊派にとっては夏のエアコンや冬の暖房、車内で電子レンジもノーマル状態で使えるようになる車ができるかもしれません。電池がたとえ劣化しても、発電機が回り続ければモーターの推進力は得られるわけですし、燃料は普通にレギュラーガソリンで済みますし、スズキあたりが作ってくれないものでしょうか(^^)。

  3. 桃太郎@東大阪 投稿作成者

    てらさん。
    スズキが開発しているレンジエクステンダー・スイフトが期待大ですね。
    発電エンジンを軽自動車の660ccにするか、バイク用の400ccになるかが決まっていないようですが。
    軽自動車で言うなら、400cc3気筒エンジンにターボー付けて52馬力前後の出力を出してダウンサイジングターボにしてみたら、どんな燃費になるか見てみたい気がします。ダイハツが2気筒エンジンを開発中ですが、振動を考えるとこの方が現実的な気がします。

  4. てら 投稿作成者

    桃太郎@東大阪 さん こんにちは。
    未来の車としてハイブリッドや電気自動車、燃料電池車という風に出そろっていて、来年以降はラインナップも揃ってくると思うのですが、やはりまだまだ実戦的に旅行に使える車ではないのですね。
    以前、ダイハツのアトレーに発電機をオプションで搭載したモデルがあったように記憶していますが、今あえてそういう車が出てきたら結構欲しい人はいるのではないでしょうか。

  5. 匿名 投稿作成者

    アイドリングストップ付車でもバッテリーは一個ですよ
    従来の鉛バッテリーが「充電制御車対応」の鉛バッテリーになっているだけです
    ホームセンターで売ってる廉価なバッテリーよりはちょっとお高いですが、燃料節約効果を打ち消す程ではありません
    例えば軽で一般的な40B19タイプですと廉価品は3,000円~4,000円前後ですが、充電制御車対応バッテリーは5,000~6,000円程度です
    スズキのワゴンRなどに採用されているエネチャージ搭載車は、鉛バッテリーとは別に小容量のリチウムイオン充電池も搭載されていますが、こちらは車両寿命まで交換不要です
    ご存じかもしれませんが、リチウムイオン充電池は「いたわり充電(満充電にしない)」/「いたわり放電(低容量まで使い切らない)」を心がけるだけでバッテリーの寿命を飛躍的に延ばせます
    エンジン始動や停車時のアクセサリー電源としても使われる鉛バッテリーは、ユーザーの使い方によっては想定寿命が著しく短くなってしまう事もありますが、エネチャージ搭載車のリチウムイオン充電池は完全に車載コンピューターによって充電/放電が管理されていますので、常に万全のコンディションが保たれており車両寿命まで交換不要となっているのです
    また最新型は軽量化技術で劣るホンダを除けば各社とも以前の物より確実に軽量化されています
    現行モデルのワゴンRは僅か780Kg(CVT)/750Kg(5MT)と、エアバックすら付いてない時代と大差ない重さですし、新型タントもボンネットやバックドアを樹脂製にする事によって、旧モデルに比べて50Kg以上もの軽量化を実現しています

  6. てら 投稿作成者

    コメントありがとうございます。アイドリングストップ用のバッテリー云々というのは私がオイル交換を頼んでいる修理屋さんから聞いた話なのですが、その方はスズキ関連のお仕事もされている方なので、エネチャージの事を言っていたのを私が勘違いしていたのかも知れません。訂正いただきありがとうございました。
    自動車メーカーの技術革新ははたから見ていてもものすごいものがありますが、その分トラブルが起こった場合に、昔のように簡単に部品交換で直るのか、電子制御そのものに問題があるのか判断に迷うことが出てくるでしょうね。部品を代えてみて直らなかったら制御するコンピューターの故障を疑わなければなりませんし、そうなったらいくらくらい交換にかかるのでしょうか。となると、やはりそういった車は新車で買って保証期間があるうちに相当距離を走り込むような乗り方のほうが、燃費の差も実感できるので有利になるような気がします。
    あと思ったのが、エネチャージ搭載のスズキ車は、果たして車両寿命がどの程度想定されているかなんてのも気になります。現状の中古車は年式と走行距離で中古車価格が変わってくるように思いますが、今後は純粋に登録時からの年数であと何年乗れるかという感じになるのでしょうか。そうなったらなおさら年間の走行距離をほとんど乗らない方はあえて車を所有せず、使う時だけレンタカーという選択肢の方がいいような気がします。

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