古いテレビドラマ自体が放送当時の風俗や状況を後世に伝えてくれる思わぬ効果になっていることを改めて確認

先日、BSで渥美清さん出演映画の特集がありました。渥美さんというと「男はつらいよ」というイメージが強いですが、私が見たのは東京発九州行きのブルートレイン(映画では複数の列車)に乗る車掌さんに扮した「喜劇・急行列車」という映画でしたが、これが当時の鉄道事情を見事に記録した映画になっていたのです。私としては過去に寝台列車として使われていた車両を客車に改造した列車に乗ったことはありますが、三段式寝台車が出てきて、当時の旅はたとえ寝台列車に乗れたとしても大変だったという事をしみじみと感じたものです。こうした昔の映画で出てくる昔の町並みも、今はもう見ることはできない当時の風景を見ることができて、今となってはストーリーがどうこういうことはなく、私にとっては魅力的に映ります。

その他には、当時の列車にはきちんとした食堂車があったりとか、今では考えられなかった優雅な食事をしながらの移動風景を見ていると、もはや今の世の中では相当なお金を出した観光列車に乗るか、長距離フェリーに乗るかしないと実現はできないので、ただただ羨ましく眺めていました。

ちなみに、喜劇・急行列車は1967(昭和42)年封切りで、今から50年以上前の映画ですが、そこまで古くはなくてもかつてテレビ界で一斉を風靡した「2時間サスペンス」ドラマも、なかなか画面を注視していると面白いものに当たることがあります。昨日私が見たのは1999年といいますから今から25年前のサスペンスドラマでした。全国の観光地にスポットを当て、地域の観光地でロケをして、地元のホテル・旅館などとタイアップをしながら作っていたもので、こうしたサスペンスに興味がない方なら放送当時は全く見ていないと思いますが、今改めて見ると、なかなか面白いものがあります。

ドラマで出てくる有名な観光地は、大きな災害などがない限り今もちゃんと存在しているので、放送当時のコンセプトと同じように見ることはできます。ただ、この当時はまだ「携帯電話」すらも無い時代だったのです。そうした中、主人公はどのようにして東京と地方で連絡を取り合うのか? という感じで見ているととても興味深いのですね。

まず、外出中に重大な事を伝える場合、連絡手段は近くにある公衆電話になります。主人公はテレホンカードを、その時には存在したグレーの電話に入れて相手の固定電話に電話します。連絡相手は持ち場から動くことなく、デスクワークをしていて、すぐにどこからか電話が掛かってきても受けられるように準備しているというのもその当時のセオリーだったことでしょう。

逆に、地方にいる主人公の方に連絡をする場合、まずは主人公が探索の拠点としているホテルや旅館の全景が映し出され、その後ホテルの部屋の電話(固定電話)が鳴るという形になっています。恐らく、活動を始める前の朝の時間か、活動終わりで部屋に戻る時間を打ち合わせしてあることで、定時連絡は当時もできたものと思います。

でもそれだと、緊急に用意ができて主人公に連絡を取りたいと思った時にはどうにもなりません。そういう時のためには、当時はビジネスパーソンを中心に会社から「ポケットベル」が支給されていたので、「呼び出されたら公衆電話からでもコールバックする」という手法で当時でも連絡はできたのですが、ドラマでは主人公はポケベルを持っていませんでした。当時はまだ、呼び出しても音が鳴るだけの単純な仕組みのポケベルで、まだ広く一般には広まっていなかったのでは? とも思えます。だいいち、無機質で大きな音でドラマの流れをぶった切ってしまう可能性もあったりします。

ちなみに、ポケベルというとスマホの位置情報を掴んで持っている人間をピンポイントで狙われないために、ポケベルを使うところを中に爆弾を入れて狙われるという、まさに作られたストーリーのような現実の事件が起こっています。現在の日本では、フードコートの食事完成の案内くらいにしか使われないポケットベルですが、個人的には今後直接通信衛星を通じてのやり取り(受信だけでなくメール送信も?)ができるものが出てくると、世界のどこにいても連絡を付けられるようになるので、スマホの補完として使うなら、個人的にはStarlinkよりもいざという時に役に立つのでは? と思っています。

また、主人公がホテルで原稿をまとめるために当時のポータブルワープロをホテルに持ち込んでいるのにも時代を感じました。大きさはともかく、当時のワープロはプリンター機能も内蔵されていたためか、大き目のノートパソコンと比べても厚さが3倍くらいあるので、持ち出すのも大変だったろうなと推測します。ワープロ機能と印刷機能を分け、単三電池2本で起動でき、さらにはワープロ通信(パソコン通信でインターネットはまだなかった時代に使われた)がある「オアシスポケット」はすでに販売されていましたが、当時のドラマではそうした携帯性より、作った文章をホテルの中でも印刷することのできる大きなワープロの方が一般的だったということを示してもいるかと思います。

最近のサスペンスドラマでは、例えば目標とする犯人の顔写真が手に入ったら、捜査員にその写真をデータ化して一斉送信するというようなシチュエーションもあり、さらに犯人の行動についてはNシステムおよび、全国いたるところにある監視カメラの映像を確認することで大規模な聞き込みを行なわなくても明らかになってしまいます。もはや実際の操作では、主人公がわざわざ全国を飛び回らなくても、現地の担当の人たちとリモートでつながってしまえばそれで完結ということになってしまい、ドラマにならなくなったというところもあるのかとすら思ってしまいます。ですから逆に、昔のこうしたドラマや映画を、現代の常識と比べて見ると、面白い発見というものが結構あるわけですね。

テレビの場合、ネット配信とは違って作品を決めて見るということではなく、たまたまテレビを付けたらその番組がやっていたというところで、思ってもみなかった番組に遭遇できるという特徴があります。テレビ離れということが言われて久しいですが、私のように実際に体験した人が見るよりも、教科書にもなかなか載ることのない少し前でも知られていない事を知るための材料の一つが、こうしたドラマの中にあるというのも面白いものです。

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てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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古いテレビドラマ自体が放送当時の風俗や状況を後世に伝えてくれる思わぬ効果になっていることを改めて確認」への4件のフィードバック

  1. 匿名

    てらさん、こんにちは。

     最近ネットニュースを見ていたら、「俵万智さん 長年愛用のワープロとお別れ」と言う記事を読みました。富士通製の「OASYS 30-AP101」だそうです。最近迄使っていたのか、ずいぶん物持ちが良いなぁ、と思いましたが、親指シフトに慣れていたみたいですね。
     物書きを生業にしている方は、キーボードの使い勝手は重要なんだろうな、と思いました。

     話は変わりますが、中東でのポケベルの爆破事件。未だにポケベルが使われていて意外でしたが、理由が位置を特定されない為との事ですね。あの小さい体積の中に殺傷能力を持つ爆弾と誘導装置を仕込む技術と、長年時間を掛けて計画的に実行された事に驚きと恐怖を感じました。。日本製の物も使われたと話題になっていますが、恐らく模造品でしょうとの事でしたね。

     では~                      ahiru

  2. てら 投稿作成者

    ahiruさん コメントありがとうございました。

    先日私が購入したThinkPad X270はキーボードのタッチだけではなく、トラックポイントやトラックパッドの操作性も良く、モバイル用に持ち歩くものはCPU性能だけではなく、道具としての使いやすさも必要だと思います。富士通の親指シフトは、ワープロ時代から使っていると、専用のキーボードもありましたが、ワープロのキーボートとはまた違いますので、使えるうちは打ち慣れたワープロを使い続けたいというのもわかる気がします。私自身はそこまでキーボードは気にしない方でしたが、早く正確に長い文章を書かなければならない場合には、外付のHHKを使っていましたが、ThinkPad X270のキーボードもそれに匹敵するような打ち心地です。

    日本製の無線機に爆弾が仕掛けられた? という話ですが、具体的にはICOMのポータブル無線機にという話らしいですね。ですが、ICOMは昔から世界にその性能を知られたブランドなので、そのブランドを真似たらしいという話でした。かなり前からラジオについては中国製の方が性能が良いという感じに変わっていますが、こんなニュースでも日本のブランドに光が当たるというのは個人的には嬉しいものです。

  3. 匿名

    BSではよく昔の時間モノを再放送していますね。地上波でも「踊る捜査線」屋「医龍」など放送していますが、みんな若いですね。
    意外な大物が出ていたりします。「踊る捜査線」の年末特番でも伊藤弘明だけでなく武末涼子や仲間由紀恵が出ていました。今は亡きいかりや長介も懐かしい。
    Gメン75でも麻布十番近くの交通公園が良くロケ現場に使われていましたが、地域に子供も少なくなったこともあり、今はなくなってしまいました。昔よく行ったのでちょっと寂しい。
    そんな古い番組でなくてもアンテナを伸ばす携帯電話が利用されていて考えてみればあっという間にスマホが普及したのだと感じました。ただポケベルは今でもシステムとしては有効だったのでは思ったりします。民生用としてではなく、官庁の広報システムとしては有効だったのでは。

  4. てら 投稿作成者

    コメントありがとうございました。

    今回の話題と関連しますが、現代のドラマで、1980~90年代を舞台にするような場合、当時は当り前に皆が使っていたデバイスが手に入らず、風俗考証をする方はかなり苦労するようです。考えてみると、例えば数字だけでなく文字も画面に表示できるポケットベルとか、自宅電話の子機としても使えるPHSの親機とのセットとか、PHSといえば腕時計型の端末もありました。

    ポケットベルは、発信してメールを打つことができるものがあれば、小さい子供に持たすならわざわざスマホでなくてもそちらの方がお金もかからないし今でも使えるのではないかと思います。通信衛星を利用して携帯の電波の届かないところでも使えるなら、スマホがつながらない時のために持っていたいくらいです。

    BSやゴールデンタイムでない時間のテレビプログラムは、安易に昔のドラマを流すことへの批判はありますが、個人的には同じドラマを何回も再放送しないで、時代別に当時の生活のわかるようなドラマを選んで流してくれると、特にその当時の事を知らない人にとっては興味深いプログラムになるのではと思います。私自身、当時から結構ドラマを見ている方ですが、その私でも知らないようなものが見られると良いのですが。

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