ライドシェアへの急激な移行の前に考えた方が良い地域と働き手への対応

以前このブログでも紹介したことがありましたが、現在国内だけでなく海外から多くの観光客が訪れることによって手薄になっている地域の交通であるタクシーの輸送を補完するものとしての「ライドシェア」について、政府がテコ入れするというニュースがありました。当然、タクシー業界は猛反発していますが、タクシー会社の中には運転手不足ということで使われていないタクシーをライドシェア用に提供したり、運転手への研修などを請け負うというような形で協力していく向きもあるようです。

ただ、このニュースが個人的に気になるのが、以前コロナで人々が出歩かなくなり、海外からの観光客も来なくなった時期に、仕事がなく収入を得られないという理由でタクシーの運転手が減ったように思えるのですが、今後もし同じような事が起こった場合、タクシーおよびライドシェアに携わる人々の雇用が守られ、生活が続けられるような事ができるのか? という事です。今のニュースは、それこそ空前絶後の中国からの観光客が来ていて、そのおかげで儲かっている観光に携わる人たちの様子を報道していた時の事を思うと、今タクシーが足りないから、すぐにそれを埋めるためにライドシェアの方向に走ってしまって良いのか? という事も思うわけです。

業種は違いますが、メール便をヤマト運輸が止めるにあたり、相当な人数の雇用を切ることになり、一部の地域では新たにパート従業員が労働組合を作って会社と交渉を行なうということがニュースになっています。ニュース報道によると、たまたま宅急便の荷物の方でなく、メール便の方に配置換えになったために解雇通告を受け、荷物の仕事に戻ることもできないと言われた人もいたようで、会社は人を減らしたいと思っているのでしょうが、そこで働き生活を維持している人にとってはたまったものではないでしょう。

ライドシェアの運転手として働こうと思った場合、需要があれば良いですが全く仕事がない状態で経費の支払いばかりになり、とても続けられないとなった時に運転手を雇用する側が助けてくれるのか、その辺がはっきりしないままライドシェアを始めてしまうと、特に過疎地域の公共交通そのものがボロボロになってしまう恐れもあるのではないでしょうか。

例えば、その辺の議論をしっかり詰めないままライドシェアを行なうことになって、地域で営業してきたタクシー会社が廃業に追い込まれたとします。その後、ライドシェアがうまくその地域で回っていけば良いですが、もしまた感染症蔓延が再び日本国内で起き、観光客はおろか地元の人も出歩かなくなるような事になると、ライドシェアの仕組み自体も地域では成り立たないような事になったらどうなるでしょうか。

少なくとも専業で地域の交通を担う人がいなくなると、元々過疎化していた地域もさらに寂れてしまう可能性があります。そうなればその地域自体が無くなってしまうような恐れも出てきます。それも時代の流れだと言ってしまえばそれまでですが、山から人がいなくなると、山の中でもきちんと人の手を入れていた頃とは明らかに変わってくる事になるでしょうから、様々な野生生物が里に下りて来るような流れもなかなか止められなくなってしまうのではないでしょうか。最近の熊が人を襲うニュースを耳にするたびに、単に気候変動の影響だけではない生態系の変化が、私たちの社会の変化によって作り出してしまっているのではないかという事も思います。

ライドシェアの考え方自体は悪いものだと思っていないのですが、単に急激に増えた需要を満たすために、その時だけ使える人材を用意すれば良いという感じで考えられてしまうと、最悪の場合、その地域そのものを潰すような事にもなりかなねい仕組みでもあるので、まずは地域できちんと永続したサービスを続けられるように、タクシー業者の方々ともよく話し合い、さらにはライドシェアに関わる人材を使い捨てることのないような仕組みについても考えた上で実施する方向で考えていって欲しいと思うのですが。


カテゴリー: 旅行・交通関連ニュース | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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ライドシェアへの急激な移行の前に考えた方が良い地域と働き手への対応」への2件のフィードバック

  1. 匿名

     てらさん、こんにちは。
     最近病院に行く用事があり、タクシーを何回か使っているのですが、そんなに遠く無い場所ですが、片道3500円位掛かるので、何回も続くと結構な出費です。
     一応バスも有りますが、駅からの発着になるので、結構時間が数倍掛かります。

     ライドシェアをタクシーの代替ととらえると、タクシーと完全にバッティングするので、タクシー業界は反対しますよね。上記の様な病院への定期便を、既存のバスと異なるルートで相乗り運航する様な用途で、料金もバスよりは高いけど、便利な分は高くなる位(上記の例で言うと千円位?)に設定すれば、バス、タクシーに加えての選択肢になる気がします。

    では~
                             ahiru

  2. てら 投稿作成者

    ahiruさん コメントありがとうございました。

    現在のタクシーにかかる費用と自分で車を買ってそれを維持管理する費用を比べると、頻繁に利用すると確かに結構な金額にはなりますが、それでもタクシーのほうが手軽で安く上がることが多いのではないでしょうか。ただ、タクシーを読んでもなかなか来ないような状況は、これからは頻繁に起こるような感じになっています。ある程度の車の台数を確保した上で、運転できるひとをどう配置するかというのもなかなか大変な問題です。

    観光地の移動だけなら、タクシーでなくても小型の電気自動車や電動キックボードを自分で運転して観光ポイントで乗り捨てて使う、レンタサイクル方式の運用もできるようにすれば、運転手の足りない問題を回避することもできるかもしれません。それこそ、電動アシストシステムを積んだ自転車タクシーの展開とか、地域によってはライドシェアを整備するよりも小回りが効いて便利かもしれません。どちらにしても、お上から一方的に決められるようなことは止めてほしいものですが。

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