新たに物を作り出すには労力だけでなく多くのエネルギーがかかります。ですから、昔の日本では手に入れたものを使えなくなるまで使うだけでなく、さらに捨てる時にも単なるゴミにはしないで、再度何かに利用することを考えるという文化がありました。それが、「もったいない」という言葉になり、世界でも受け入れられている所もあるわけです。
現在、この夏の暑さだけでなくさらなる平均気温の上昇というものが予想されていますが、物を作るにあたって多量の二酸化炭素の発生が起こることで、地球の気温の上昇を考えざるを得ないので、かつての日本では普通に行なわれていた物を大事に最後まで使うということに注目が集まっています。
そんな中、使えなくなるまで整備して古い車に乗り続けることがさも環境に悪いかのように税制において登録後13年以上を経過した自動車は運行コストが高くなっています。古いものは当然壊れるわけですが、まだ十分に整備すれば乗れる車なのであれば、そのまま乗り続けたいと思う人は少なからずいます。どう整備してもまともに使えないことがわかれば買い換えということになるのでしょうが、そうではないのに新しい車に買い換えを促すような減税を新車に対して行なっている政策は地球環境ということを第一に考えた時に方向性が違ってはいないのかと考える人もいるようです。
ただこれは、自動車会社としては新車を作って売らないことには利益が出ないというビジネスモデルのもと業務を行なっているので、理想と現実が違うといってしまえばそれまでなのですが、私自身は古い車でも実際の燃費が長距離走行では20km/Lを超える車が環境に悪いとはどうしても思えず、現在のエンジンの調子は快調なので今年の車検もそのまま通そうと思っています。古い車である分、車検代がかさむという事は仕方がないと割り切って、整備業者からストップがかかるまでは乗り続けようと今は思っています。
同じような事が、最近というわけではありませんが、電池の業界でもあることをご存知でしょうか。ここで言う電池は、いわゆる単三や単四という乾電池と同じサイズのニッケル水素電池の事です。日本におけるこの分野の最大手は、「エネループ」事業を三洋電機から引き継いだパナソニックなのですが、現在店頭で購入できるパナソニックのエネループ用充電器の仕様に個人的には疑問を持っているのです。
例えば、私が持っているパナソニックの中でUSBによる急速充電が利用できるBQ-CC87という充電器があるのですが、この充電器には「買い替え目安診断機能」が付いていまして、電池をセットしてもLEDが点滅して充電できない場合には、この電池が買い替え時期だということを教えてくれる機能ということらしいです。
しかしながら、「もったいない」精神で考えてみると、ニッケル水素電池というのは内部の化学反応により充電によって再度容量を復活できるものであるので、単純に○と×といったことで分けられるものではありません。急速充電用に大きな電流を流すとうまく充電できないということはあるかも知れませんが、その場合は急速でない普通充電を試したり、いったん電池を放電させてからゆっくりと充電を行なえば充電自体は可能な場合もあります。
メモリー効果により満充電と表示されても容量が半分以下になってしまうということもあるかも知れませんが、その場合には利用する機器を変え、例えばテレビなどのリモコンに入れるようにすれば、古い充電池でもまだまだ現役で使えます。
私は、このようにして古いニッケル水素電池でも使うものを変えながら長く使い続けることによって、一回使ったらゴミになってしまうアルカリ電池やマンガン電池を買わないことで環境に貢献できるのではないかと思っています。少なくとも私が住んでいる自治体では乾電池類は普通のゴミとして出すことはできず、だんだん使えない電池がたまってくるに従って、かつてはかなりのストレスになってきていました。今は家の中で乾電池を使う機器に充電池を置き換えることによって、電池のゴミは著しく減りました。こういう事こそ、環境に優しい生き方なのではないかと思っています。
過去でも今でも、国産以外の充電器の中には放電機能や電池診断機能、制御した上での充電機能など様々な機能を持った充電器があり、BQ-CC87で「買い替え」と判断された電池をちゃんと満充電まで持っていけています。急速充電というわけにはいきませんが、充電器を変えれば普通に充電できるものを「買い替え必要」と診断されてしまうと、何のための充電池なのか? と疑問を感じざるを得ません。
ただ、だからと言ってどの充電器がベストバイなのか? と言われると、ネットショップで売られている海外製の充電器は様々なものがありすぎて、それを実際に試すこともできないので、ネット上での評価を調べて買うしかないというのがきついところです。
私の場合、急速充電器は普通に使っていて、その充電器で「買い替え」と診断された電池は改めて同じパナソニックでも急速でない充電器を使ってみて普通に充電されるものはそのまま充電し、その充電器でも充電できないほど深刻なものは、現在はもう古くて販売されていませんが、かつては私のような充電池愛好家が所有していたことで知られているBearmaxという会社の「スーパーチャージャー」という単一や9V電池まで充電できる大きな充電器に一本ずつかけて(複数同時にかけると平均値を取られるので、手間を掛けても一本ずつ充電になります)、必要であれば放電もして丁寧に充電させることで、古い電池でも廃棄せずに使い続けています。
個人的には日本メーカーで、同時に充電器にセットしてもきちんと一本一本その電池を診断し、その電池に合った電流で充電をし分けてくれるものがあればと思っているのですが、そんなものを作ったら、新しいエネループが売れなくなるとでも思っているのか、国内メーカーからはそうした充電器が出てこないのが残念です。
ただ、一つの希望的な話として、それまで少量のインクカートリッジを売って利益を挙げていた国内のプリンタメーカーは、今までの製品に加えて大容量タンクを装備して長く使えるタイプの業務用インクジェットプリンターを売るという方向も見せています。これは、海外のユーザーがプリンターを改造して大容量インクを取り替えて使えるようにした品が流れたため、そうした類の製品を自らも作って国内販売したという流れがあるのでしょう。また、最新の製品ではそれだけでなくクリーニングした際のインクを吸収する「インク吸収体」もユーザー自身で交換できるような構造とした製品も出てきています。
こうなってくると、業務で多くの印刷をする方々にとっては、本体が物理的に壊れるまでインクを継ぎ足しつつユーザー自身でメンテナンスをしながら使えるわけで、そちらの方では劇的に状況は変わっています。願わくば、ニッケル水素電池の世界においても、そうした流れになってきて欲しいものです。