ラジオを聞いていたら、今年(2025年)で創刊100年を迎えるJTB時刻表の編集長である梶原美礼氏へのインタビューを放送していました。氏は2001年入社で、その多くを時刻表の編集部で活動したそうなのですが、なぜ就活でJTBを選んだかについては学生時代に旅行を楽しんでいたことが関係していたそうです。
ただ、今も昔も学生の旅といっても出掛けるとなると費用がかかります。氏はできるだけ安く旅に出るために、利用していたのが当時の「青春18きっぷ」だったそうで、日本全国の普通列車乗り放題の旅を効率よく楽しむため、旅のお供に「時刻表」があったことがこの仕事を志望した動機だと語っています。
改めて当時(氏の学生時代)の青春18きっぷについて調べてみると、恐らく氏が大学生の時代には以前は一回分が5枚という形で販売されていたものが、一枚に5回分のスタンプを押す形に変わったのが1996年だったので、恐らくこの形の18きっぷを使っていたものと思われます。このタイプでも金券ショップでの購入はできたものの、ちょっと以前の形と比べると扱いにくくなりました。さらに1997年には長野新幹線が開業することになり、峠の釜めしで有名な横川駅~軽井沢駅の区間が廃止・バス代行(18きっぷは使用不可)になったりしました。以前は横川駅で気動車を連結するため停車時間が長く、その時間を利用して駅で売っている釜飯を買って列車の中で食べるのが当り前になっていたのですがそれができなくなり、代行バスも定員があるので列車から降りたらすぐにバス乗り場に走らないとバスに乗れないような事になってしまうので、釜飯を買うどころではなくなったという事もありました。
ただ、青春18きっぷを有効に使える列車として知られていた「ムーンライトながら」は定期列車として走っていて、座席指定券をゲットできれば、東京から九州まで一回分で行くことも可能でした。もっとも、ムーンライトながらの前に同じ区間を走っていた通称「大垣夜行」はグリーン車はありましたが他は自由席だったので予約不要で18きっぷ利用での乗車ができたので、氏はその時代には18きっぷを使っていないかも知れません。
ただ、5回分で大体1万2千円で5回分を自分一人で使うも良し、仲の良い友人と一緒に旅するも良しということで、時刻表が一冊あれば、いきなり経路を変えることも大変ではなかったので、氏も18きっぷでの旅をしながら、時刻表の魅力にはまっていったのではないでしょうか。
現在の18きっぷは連続しての使用が必要なので、かなり自由度が低く、また乗ることのできる列車も少なくなっていて、学生の帰省にも使いづらいため、一部の方にはうまく利用できても、今の学生が列車の旅や時刻表にはまるきっかけになるようなきっぷにはなっていないと思います。となると、今後学生はもはや時刻表を必要としない旅に出るようなライフスタイルに変わっていくようになるのではないかと思います。
具体的には、陸路は鉄道ではなく長距離バスで移動し、ネットを使って安く購入したLCCで空の旅を楽しむようなライフスタイルです。地域の乗り放題きっぷがないと、ピンポイントで事前に決めた場所への旅が多くなり、いわゆるいきあたりばったりな何が起こるかわからないような感じの旅行にはなりにくいのではないかと思います。
そうなると、今の状況での「旅好き」な学生達は、鉄道以外の道を目指すような感じにならないかとふと思ってしまいました。18きっぷへの批判の中には、名前に「青春」とありながら若い人が使わず中年から老年の人たちが多く使うようになってしまったことで、あまりこのきっぷについて良く思わない人を生んだのかも知れません。
そんなわけで、このままでは就職前に列車を乗り尽くすために時刻表を調べまくるような旅をするような人材はもう求めようがなくなってしまうような気がします。JR東日本の乗り放題きっぷの多くも廃止の方向で決まっていますし、そうなると必要な時に必要な場所へ行くために区間きっぷを買うだけの旅が主流になります。そうなると、乗り換えアプリでピンポイントの区間の時刻を知ればそれで足りてしまいます。もはや時刻表を開きながら(今は紙の時刻表をスマホやタブレットで見られるアプリもありますが)あれこれ空想するような事をする若い人もいなくなってしまうのではないでしょうか。
ということで、表題の連続させないで期間中に使える以前のタイプの青春18きっぷを学生証の提示のある場合に発行する余地はないかと思ってしまうのです。少なくとも、将来鉄道の仕事に関わりたいと思う人を増やすためにも、損得勘定は抜きにして企業は何かしないと将来に自分の首を締める結果になってしまうのではないかと本気で心配しています。