AIによる字幕放送は実用になるのか?

一昨日、夜からインターネット放送のAbemaTVで、お笑い芸人の南海キャンディーズ、山里亮太さんと女優の蒼井優さんがツーショットで結婚会見を行なったものをノーカットで全て放送したものを見ました。なぜか会見は生中継されなかったものの、事前にAbemaTVが生中継をするつもりで用意していたと思われる会見での発言を全てAIが即時的に文字に起こす試みというものをやっていたので(サービス自体は2018年12月10日からニュース番組のリアルタイム字幕「AIポン」として開始)、今回は結婚会見とは全く関係なく(^^;)、そのAIによる字幕システムについて感想を書いてみたいと思います。

今回の会見について、会見が終了して主役のお二人が会見場から姿を消すまでは映像の中継はおろか、その内容を漏らすことすらも禁止するというお達しが告げられたのだそうで、AbemaTVでは「会見の生中継」を行なうことを基本路線にしていて、さらにもし映像が使えないのだったらその会見を見ているスタッフがその内容をアナウンサーに伝えて即時的な中継を行なうはずだったのがどちらもできなくなり、本当に残念なことだと思わざるを得ません。AIによる字幕というのは、生中継が行なわれる可能性が残っているうちは、少ないコストで多面的な放送を目指したものだということで、通常のNewsチャンネルで使われていることから、その後中継録画をノーカットで流した時にもそのまま放送されたのだろうと思います。

基本的には会見場から流れてくる音声を「音声認識ソフト」を使って文字起こしをし、間違って認識した部分について人間が直すというのが字幕の正確さを求めるためには一般的なのですが、どんな言葉がどのタイミングで出てくるかわからない会見の文字起こしというのは、人間を入れるにしてもその人に相当のスキルがないと難しいのではないかと思います。少なくともお二人の今までの芸能活動の事を知らないと正しく文字起こしできないような部分もありますし、わからないところで悩んでいたら、話はどんどん先に進んでいってしまいます。

そこでAbemaTVが採用したのが、他のニュースでも使っていて一部ではそのダメっぷりが話題になっているAIによって漢字変換を行なう字幕システムだったのですが、はっきり言ってしまうと人間でも難しい会見の文字起こしをプログラムに行なわせることは自動運転以上に難しいということが見ていてわかりました。なぜ難しいかというと、用意された原稿を読むというよりは質疑応答が主で、主役のお二人が話している時に取材陣から急にその言葉を遮るように合いの手が入ったりするので、人間なら合いの手を無視したり、しばらく間が空いたような場合はじっくり待って入力を行なうと思うのですが、AbemaTVの用意した字幕用AIは、のべつまくなしに入ってくる言葉を全て出力し漢字・カナへの変換を試みようとしていたようで、音声を消して字幕だけを見ていたとしたら何を言っているのか全くわからないような変な言葉が出まくるという、別の意味で面白会見になってしまったのではないかと思われます。

ただ、会見が終わった後の別番組で見たアナウンサーがニュース原稿を読む時にこのリアルタイム字幕画面が出ていたのを目で追ってみたところ、細かい違いはあるものの、それなりに読める字幕になっていたように思います。決まったニュース原稿の文章について使えば、長く使っていけばいくほどAIは専門用語を学習し、精度も上がりAbemaTVの魅力の一つに化ける可能性はあると思いますね。

ただし、何が起きるかわからないフリートークの場面では、さすがいくにこのレベルでは、インターネット放送のAbemaTVでは良くても、地上波・BSというテレビ放送で使うのはみっともないので止めた方がいいのではないかと思います。地上波のテレビでは会見の内容について要約したものをまとめたり、正確にお二人の発言を文字起こししたものを伝えていましたが、そのためにはやはりきちんと発言内容を確認する必要があります。そうした作業を全てプログラムが一瞬で行なえるようになれば、これはもうキーボードでの入力は必要なくなる時代が来ると思いますが、当分は人間がキーボードで入力をする方が早いでしょうし(現在の文字放送は特殊なキーボードを熟練のタイピストが入力して行なっています)、そこまでの費用を掛けられない場合には、要約筆記の形にするか、音声入力した結果をすばやく手動で直すことでさらに早く正確な文字出力を目指すのがいいところでしょう。どちらにしても耳から入ってきたものを頭の中で整理して、必要なところだけを出力する人間の知識と経験はAIにはなかなか置き換わらないことだけは確かなようです。


カテゴリー: 映像・画像関連 | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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