日本のバターは安くなるのか

日本の農業を考える時、今までは大きな組織による既得権益によって多くの農家は守られてきました。そのため農業が生き残ってきたという側面はあったのかも知れませんが、今後は農業も例外なく海外との競争にさらされるようになることは容易に想像でき、またさらに日本の農業は厳しい状況に突入するのではないかと心配になります。

特に、日本産の価格と海外産の価格差が大きく、過去には品薄によってスーパーマーケットからもその姿が一時消えた「バター」について、貿易協定により安い海外産が普通に買えるようになったら、日本産のバター全体が淘汰される可能性すらあります。そうなるとバターの原料である生乳を作る酪農家はどうなってしまうのか? と農業とは関係ない仕事をしている中でも心配になるのです。そんな中、テレビ東京系で放送された「ガイアの夜明け」という番組の中で、国産でも安いバターを作ろうとする酪農家や事業者の奮闘ぶりを取材しているのを見て心強くなるとともに、本当に今後どうなってしまうのだろうとも思いました。ちなみに、私はテレビ東京の番組がリアルタイムで見られる地域に住んでいないので、週遅れで「ガイアの夜明け」が放送されるBSジャパンで見ることができました。

普通なら同じ日本産の原料で安くバターを作ることができるなら多くの人に歓迎されそうなのですが、農業というのは実に複雑な既得権益がからんでいるようで、積極的に安いバターの実現を目指す人たちや、その人たちに生乳を売る酪農家に対して取材を行なってくるうちにこれは「いじめ」や「事業者つぶし」ではないか? と思えるような逆風にさらされているということが取材で明らかにされます。現在日本で購入できる国産バターの価格はほぼ横並びで、品質については海外の専門家も褒めるものの、その価格があまりにも高いことと、メーカー問わず味も均一になっているようだと指摘されていました。同じ乳製品でもチーズは補助金が入ることで作りやすくなっているようですが、バターに使う生乳の価格については相変わらず安いままで、今の仕組みで生乳の流通が続いていると仮定すると、日本で安いバターを作るのが現状では難しいままになってしまうと言わざるを得ません。

番組ではとある事業者が酪農家から生乳を従来の業者より高く買い取り、それをバター作りに回すという中、試験販売という形で、「北海道デイリーみんなのBUTTER」という製品を100g・150円という価格で売り出していました。同じ100gでも現在の国産バターの価格は250円くらいということなので、確かに安いですし、この新しい国産バターが全国で流通するようになれば、バターを使ったケーキが手頃な価格で買えるようになるかも知れませんし、今までマーガリンで我慢してきた人がバターを使うようになれば、その美味しさにさらなるお米離れが進むかも知れません。

番組では従来の生乳価格より高い価格で仕入れるのに、なぜ国内生産のバターの価格を下げられるのか? という疑問については製造工場に入れる機械をヨーロッパの最新式にすることでコストを抑えられるという説明をしていましたが、それ以上に日本のバターの価格というのが競争のない安定した高値ということも問題でしょう。もし番組で出ていた試作品のバターが今回出た同じくらいの価格で販売されたら、さすがに大手メーカーもバター価格を見直さざるを得なくなるでしょうし、海外のバターに対する競争力も付いてくるのではないかと考えることもできます。

恐らく、今もって新規参入が難しいのは、そうした流れになると困る人たちがいるということなのでしょうが、考えてみると日々の消費活動というのは限られた人たちの思惑によってコントロールされているという部分は確かにあります。スーパーで売っている品物もそうですし、車で旅に出た先でスーパーより安いとつい買ってしまう大きな直売所や道の駅に出店している農家の方々も実は地元との結び付きが強くないとなかなか出店することも難しいだろうと思います。私もそこまで深く考えることなく日常でも旅先でも食品を購入していますが、今後は購入する前に考えることも必要なのかなと思えてきました。

もちろん、一口に農家といっても大規模に生産だけでなく販売までこなす、農協に頼らないような地力のある人たちもいますし、組合に入っていなければ生計を立てていくことが難しい零細の人たちもいるわけで、既得権益や組合が全て不必要だとは思いません。ただ、今回テレビで紹介されたバターの件について言うと、もし何らかの理由で生乳の生産が落ち込んでしまった場合、いつまたバターの品薄が起きてしまうかも知れません。そうなれば国内で安いバターの生産が軌道に乗る前に、他国の日本に対する圧力に屈する形で、海外産の安いバターが日本でのスタンダードになってしまうような事が起これば、今の日本の状況で必死に生産を続けている酪農家の方々はどうなるのでしょうか。日本では酪農家はいらないと思うのか、現状で今より安くて高品質なバターを作ることで、それが海外産のバターと競争できるようにしていくことで日本の酪農家を守る方向に行くのか、今後の事を考えてみることが大切なのではないでしょうか。


カテゴリー: ノンジャンルコラム | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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