災害と鉄道との関係を改めて考える

私は学生時代、車を持たなかったり長距離を運転する自信がないということもあってまだ国鉄時代のローカル線を利用して旅をしていました。今回の西日本豪雨で被害を受けた中国地方の山間部もかなり乗ったのですが、国鉄がJRになるとともにいわゆるローカル線は廃線になったり、第三セクターによる別会社で運営されるような形で存続するかという形になり、魅力的な鉄道乗りつくし旅が行なえる周遊券も無くなるにしたがって、徐々に自分の車を使っての旅にシフトしていったという経緯があります。

おかげで車中泊を一応のメインテーマとしたこんなブログを書けているわけですが、車の旅を中心にしていると、体調を崩したり眠くてどうしようもなくなった時にはその場から一歩も進めなくなるのは仕方ないことだと言いつつも、やはり寝ていても目的地に向かって進んでくれる鉄道の有難さというのも実感する時もあります。

今回の西日本豪雨の影響で、2018年7月18日現在、大阪方面からの山陽本線は三原まで通じているものの、三原から広島の手前の海田市まで不通で、海田市から山口県の柳井までは通じていて、柳井から徳山までが不通になっています。JR西日本の発表では、山陽本線の全線開通は11月中を目指すという風に話していますが、貨物については不通区間については海上輸送とトラックで代替輸送が行なわれているものの、かなり長期間不便な代替輸送を強いられそうな感じになっています。

JR西日本の復旧計画では、まずは幹線である山陽本線の復旧を目指すということのようですが、もう一つ気になるのが今回被害が大きかった山間部を通っていた地方交通線の復旧をJR西日本がどう考えているかということです。

今回の大雨で不通になっている中国地方の山間部を走る地方交通線のうち、かなり悲観的な見通しが発表されたのが以下の3つの路線です。

・芸備線(備中神代駅(岡山県新見市)→三次駅(広島県三次市)→広島駅)
・福塩線(福山駅(広島県福山市)→塩町駅(広島県三次市))
・木次線(宍道駅(島根県松江市)→備後落合駅(広島県庄原市))

これらの路線では鉄橋が流されたりして、今だに手を付けられないような箇所も少なくないとのことで、全線復旧に1年以上かかるという話はあったものの、具体的にいつまでに全線開通になるかという時期について発表されることはありませんでした。

実際にこれらの路線を生活の足として使っている方からしてみると、現在でも交通が止まって大変なのに、今後への展望が交通機関についても見えてこないというのは相当不安になっているのではないでしょうか。JR西日本の発表の中では「復旧を念頭に置く」と述べつつも、「今後も激甚化する災害の脅威を受けるエリア、協議は必要」としてJR西日本だけではなく地元の自治体や地方住民との協議次第というような認識も示しているので、最悪の場合、そのまま廃線の方向になってしまう可能性もあります。

こんな話を聞くと、メインの幹線沿いに住んでいる人についてはすぐに復旧させる見込みを出すため安心できるものの、改めて地方と都市との格差というものを感じてしまいます。この辺が昨日書いた物流とは違うところで、現在郵便局はJRと同じように民営化されたと言っても、全国で同じサービスを提供することは法律によって定められているので、現在においても歩いてしか配達できない家が一戸だけのところでもきちんと郵便が届く状況はキープされ、物流に新規参入する楽天のような企業も、そうした郵便の配達網を一部利用させてもらうことで全国一律のサービスを利用者に対して展開することができています。

しかし、今の日本では地方交通線について、商売にならなければJRは廃線にするか、第三セクターによる地方運営の鉄道に変わらざるを得ない状況になってしまっています。東日本大震災で壊滅的な影響を受けた岩手県の三陸鉄道が復旧したという事例はあるものの、今回挙がった3つの地方交通線がどうなってしまうのかで、少々大げさではあるかも知れませんが今後地方は見捨てられてしまうか否かがわかってくるのではないかと思っています。

個人的には今回被害を受けられた方々の生活再建が成るように、住宅問題だけでなく交通問題も民間と公が一緒になって解決に向けて進んで行ってくれることを祈っています。


カテゴリー: 防災関連ニュース | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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災害と鉄道との関係を改めて考える」への3件のフィードバック

  1. ケータイオタク

    少子高齢化人口減少社会に向かっている流れの中では従来の鉄道網の維持は不可能だと思います。バス輸送も含めて総合的に考えるべきでは。南イタリアやスペインなども鉄道網よりもバス網が発展しています。
    鉄道は大量輸送に適した輸送手段であり、過疎化の進んだ地方には適しているとは言えないと思います。
    アジア諸国ではハイエースクラスの車もバスとして利用されていますね。予想される旅客数に応じた車両を活用すれば良いと思います。
    むしろバスの待合所の機能を拡充した方が良いのでは。待合所でバスの運行状況を把握出来る様にする。待合所にカメラを設置すれば本部でも状況が把握できる。
    日本人は鉄道に感情移入し過ぎでは。交通手段として何が合理的か考えるべきだと思います。

  2. てら 投稿作成者

    最近では鉄道だけでなくバス路線もバス自体の老朽化やオンシーズンとオフシーズンの利用客の差が激しいところではバスが廃止になるという時代です。公共の手が入らなければ、住民が助け合って相乗りするような形でしか集落が成り立たなくなってしまうことも予想される中、今回紹介した路線は通勤や通学の利用が比較的多い路線だということで、バスにはなかなか転換できないという地元の事情もあるかも知れません。

    これは私の体験ですが、長野新幹線の開通とともに廃止になった「横川~軽井沢」間のバスに乗ったことがあったのですが、電車を降りてバスに乗るのに、ダッシュしないと電車に乗っていた人全てがバスに乗れなくなる可能性があるので、必死になって横川駅から出たところにあるバス停に走りました。補助席で座れなければ次のバスを待つようなところがバスの代行運送にはあるので、通勤通学に利用する人にとっては大変です。路線を利用する人数が少なければ自動運転のマイクロバスにしてしまうというのも一つの手ですが、時間帯によって連結する車両を増やして対応することもできる鉄道の良さというのもあります。細かいことについては、実際に路線を利用している方々で決めていくしかないですが、すでに1年以上にわたってどうなるかわからないというアナウンスの中で、通学でなく下宿するという選択肢しかなくなったご家庭もあるそうです。

  3. ケータイオタク

    難しい問題ですね。かと言って少子高齢化人口減少社会化と言う現実は無い袖は振れない状況をもたらしている。バス代替では予約席の設定や定期券利用者の優先等も考えないといけないのでは?
    学生には下宿斡旋制度の充実や寮制度も考える必要があると思います。下宿費用の補助は必要になると思います。
    生活インフラの整備にも限界が見えています。限界集落などは集団移転も考える必要がありますね。少子高齢化人口減少社会化は変化を嫌う人々に厳しい現実を突き付ける事になると思います。

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