NEXCO中日本は東名高速の下り線に新設する豊橋PAにおいて、「駐車場予約システム」の社会実験を4月12日(金)13時から開始すると発表しました。これだけ読むとどういう事なのかと思われるかも知れませんが、この実験は特大車や大型車など主にトラックやバスのような営業車の利用を想定しています。
さらに、予約を行なうためには車にETC2.0の車載器を搭載している必要があり、専用駐車場への入場管理を行なうそうです。今後こうしたサービスが一般車にも広がる可能性があるとしたら、従来のETC搭載機では新たなサービスを受けられなくなることが予想されます(以前このブログで紹介した一定時間内なら高速道路を出て給油や食事をして戻っても通しの料金で精算される実験がありました)。現在、車の買い替えを考えている方や、新たにETCを付けようと考えられている方は、こうした動向を考えた上で決めることをおすすめします。
当面は無料で実験は行なわれるものの、今後は有料化も視野に入れた考えではあるようです。先に大型車で実験が行なわれるのは、政府の出している「働き方改革」と関係があるということがあると思います。
普通の労働でもそうですが、あまり長い間連続して働かせたり、残業を長時間連続で強要したりすることは、昔は当り前であっても現代では適当ではありません。さらに、長距離ドライバーに長時間の運転を強要することは、事故の可能性も高まるのでトラックの積荷やバスの乗客を安全に定刻に届けられなくなるだけでなく、会社としての信用も失いかねません。
ただ、多くの車が行き交う高速道路では、会社の指令でサービスエリアやパーキングエリアで休憩を取ろうとしても、駐車スペースが全て埋まっていたり、一般車両が大型車両スペースに侵入してきて平然と停めているような事もあり、休憩エリアでトイレや仮眠をしたくても、停めるところがなく仕方なくそのまま走らざるを得ない状況や、危険を承知で路肩に車を停めて休憩・時間待ちをするという状況は全国いたるところであります。
今回の実験では予約の受付期間は利用の2週間前から予約日時の5時間前までで、予約可能時間は最大24時間までということで、あくまで貨物車の仮眠・休憩に使うということになりそうです。実験が行なわれる場所は中部の豊橋ということで、定期便のある大手にとってはとても便利になると思われますが、もし多くの新しく作られるサービスエリア・パーキングエリアの駐車場が拡張され、大型車両の予約が多くの場所でできるようになったとしても、今の状況は劇的に変わるとは言えないでしょう。それは、特に個人事業主については上記の「働き方改革」の手法が取れないからです。
大手コンビニで働くアルバイトについては最低賃金の規定もありますし、連続しての勤務・一定の時間を超える残業について無茶な働かせ方はできないように保護されていますが、その反面、労働者ではない店のオーナーがオーバーワークになっていて、その対策がなかなかできないというのはまさにこの問題と同じような感じがします。個人で荷物や人を運ぶ仕事を大手から請け負って行なっているようなケースでは、会社から雇われているわけではないので、大手との競争に勝って仕事を得るためには深夜割引の始まる・終わる時間ギリギリで高速道路に乗るか降りるかすることで経費を抑える必要もあるので、どうしても多くのトラックが高速道路の入口やパーキングに殺到し、休憩できずに困るところがあります。また、約束した時間通りに運ぶため、もし大きな事故で渋滞が起こるなど不測の事態が起こった場合には、いくら推奨されていると言っても途中で休みながら進むわけにはいかない状況というのも場合によってはあるでしょう。
そんな場合でも多くの人を確保できる大手の会社なら仕事を分けることで何とかできることもあります。今回の実験の恩恵を受けるのは正にそうした大手の会社ではないかと思うのです。こうした大手は優遇され、中小・個人にしわ寄せが来る傾向はトラック・バスを運用する企業だけの問題ではありませんが、特にこうした業界は仕事上のミスがすなわち大きな事故につながり、人命が危うくなるばかりでなく日本の交通網の一部をストップさせてしまうリスクもはらんでいます。ですから、大手や中小、個人に限らずに仕事で荷物や人を運ぶという仕事を行なうについて、少なくともどうしても停まって休みたい時に休める環境を作ることが大切です。今回の実験はいわゆる「ハード面」での対策ですが、それだけでは不十分であり、日本の社会の仕組みにもつながる「ソフト面」の改革(高速道路の料金改革やそもそものドライバー全般における働き方規定の徹底など)を全ての営業車において実施させるような政治的な決断事がないと、今の状況はそう簡単には変わっていかないのではないでしょうか。