テレビで紹介されたバス路線が使えなくなる?

2018年の年度末(2019年3月末)で廃止されるのではないかとこのブログで紹介していたのに清水港~土肥港を結ぶ「駿河湾フェリー」の存在がありました。ただ、かつては海上を結ぶ県道としても親しまれたものだけに大きな反響を呼び、現在はまだ県をリーダーにした継続を目論むプロジェクトチームが発足しています。

そんな同じ時期に、静岡県ではもう一つ、ひっそりと変わろうとしている地方交通の流れがあります。たまたまテレビを見ていたらテレビ朝日系のゴールデンタイムで「秘境路線バス旅」として、サンドウィッチマンのお二人とゲストがサイコロを振って、出た目の停留所にある飲食店を探して進むというテレビの企画に大井川鉄道の千頭駅から寸又峡温泉を結ぶ路線が紹介されていました。

寸又峡温泉と聞くと、年配の方はあまりいい印象はないかも知れませんが、現在はアルカリ泉の「美女づくりの湯」として有名で、温泉から歩いて行ける距離にテレビでも紹介された「夢の吊り橋」があり、首都圏から車を使わなくても安く早く行ける温泉として通年にわたって魅力がある温泉だと思います。18きっぷのシーズンなら、金谷駅までは関東からも関西からも安く行きやすく、金谷駅から大井川鉄道に乗りかえ、古い私鉄の車両や蒸気機関車に乗って千頭駅まで行き、そこから寸又峡温泉行きのバスに乗れば、一気に温泉まで到着します。様々な乗り物に乗って行く途中も十分に楽しめる路線です。

ただ、今回テレビに出たバスはシーズン以外には赤字を常に出しているらしく、先日の報道では2019年3月をもって通年の運行を終了すると発表されました。これは、寸又峡温泉の関係者だけでなく今回紹介された途中の停留所や駅周辺で営業し、今回のテレビで紹介された飲食店や日帰り温泉、民宿にとっては相当の痛手になるでしょう。もっとも運行する大井川鉄道自体が本業の鉄道事業が大変で、「機関車トーマス」を走らせていることで多くの売上げは上がっているものの、トーマスの走行には権利関係もからみ、来年以降も走るかどうかははっきりとはわからない状況です。そんな中とても今走っているバス(狭い道を走るため普通のバスより長差が短い特別製なのだそう)を維持することができないというのが正直なところだろうとは思います。

シーズンがいつからいつまでなのかという事ははっきりとどの新聞にも書いてありませんでしたが、夏のシーズンだけということになると綺麗な秋の紅葉を見に行く時にはどうするのかとか、春の桜のシーズンはどうかとか気になります。宿泊とセットなら宿でも送迎バスを持っているところでは千頭駅まで迎えに来てくれるとは思いますが、日帰りでの観光を考えている場合は、人数がまとまればジャンボタクシーに乗り合わせて行くにしても帰りのタイムテーブルはタクシーの都合に合わせるようになってしまうので、現地まで車で行くしかなくなってきます。

レンタカーやカーシェアリングを使うという場合でも、誰かが運転をしなければならず、一部の区間ではすれ違いができず、状況と混雑具合によっては延々と後退しなければならないというドライバーにとってはなかなか大変な山道なので、できれば運転したくないなという人も少なくないと思います。仕方がないこととは言え、全国でこれに類する事が次々に起こっているということになると、車を使って観光している身としても、たどり着いた所にはゴーストタウンが残っているだけだったという風にあと数十年もすると今後の日本がなっている可能性があります。

どちらにしても、過疎と観光の問題について何らかの方向性を示してもらわないと、都市でも山村でもどうして生きていくのかという問題がいつまで経っても解決しないように思います。山の奥にある観光地はことごとく大手のリゾート会社が経営するような施設だけになり、そこには人々の生きる集落はないという方向性も十分にありだとは思いますが、その場所も何かのきっかけで人が来なくなったら民間企業ではその場から撤退するしかありません。

こんなニュースを聞くと、もし大井川上流で今よりさらに人口が減り、そこで大雨が降った場合、手入れされない森林がその時に増えていたら下流に生きている人たちにどんな影響を及ぼすのかも気になったりします。「国破れて山河あり」という言葉が、「山河消えて国破る」という事にならないように、都市と地方との関係についても考えていく必要があるのではないかとしみじみ思います。


カテゴリー: 旅行・交通関連ニュース | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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