政治はスポーツに奉仕するものであって利用するものではないはず

オリンピックと「政治」ということで思い出すのが、1980年モスクワオリンピックについて、当時のソ連邦がアフガニスタンに侵攻したことの報復としてアメリカが不参加を決め、当時も今も米国の意向によって影響を受ける日本も不参加の方針に従わなければなりませんでした。私は当時の不参加が決まった時の柔道の山下選手やレスリングの高田選手の涙を今でも思い出します。

さらに個人的に大好きなマラソン競技で、瀬古利彦選手・宗茂選手・宗猛選手の日本チームは金メダルを狙うには最大の好期であったと今でも思っているのですが、そうした庶民の淡い期待など関係なく、日本はオリンピックに出られず、次のロサンゼルスオリンピックでは東側諸国が不参加となるものの、瀬古利彦選手はすでにランナーとしてのピークを過ぎ、メダルにも届きませんでした。

現在、日本政府は宝くじの基金などを使って多くの種目でサポートを行ない、その結果としてナショナルトレーニングセンターを使っているエリートアカデミー出身の選手が徐々に結果を出してきています。それは国を挙げて強化に乗り出しているからで、そういう意味での国のスポーツへの力の入れ方には好感を持っていますが、それでも行なって欲しくないのが、自国の政治的意図によって大会の参加をボイコットすることを外交交渉の「カード」として使うことです。

来月、冬季オリンピックの平昌五輪について問題になっているのが、すでに出場が決まっている韓国の女子アイスホッケーチームを北朝鮮との合同チームにするという話をスポーツ界ではなく韓国大統領の側から出してきたことです。過去に朝鮮半島合同チームで出場し、それまでも現在も世界の卓球に対しての大きな壁であった中国チームを破るという大きな成果を挙げたことのある女子卓球団体の世界選手権(千葉で開催)の想いが頭の中にあるとは思うのですが、卓球は基本個人競技であり、ダブルスを南北の選手で組んだとしてもある程度は何とかなる状況があります。

今行なわれている日本卓球選手権で、ほとんど組んだことのない平野美宇・張本智和の両選手がペアを組んで混合ダブルスに出場していましたが、せめてもう少し練習して連携を高めていればもう少し戦えたのではと思うくらい決まった時には素晴しい動きをしていました。お互いの選手間でだれを出すか出さないかという点でも、中国に勝つために一番強い選手を出すという事さえ間違わなければ良く、その時の合同チームというのは難攻不落の中国チームを破るということできちんと結果を出しました。

しかし、今回のケースは全く違います。アイスホッケーをプレーしたことのない私でも、それまで連携による攻撃と守備の切り換えを練習している中で選手に選ばれた方がいるわけですから、いかに優れた選手がお互いのチームにいたとしてもその連携を取れるかどうかは微妙で、もし政治的意図からどうしてもお互いのチームから選手を出して混ぜなければならないとすると、チームがばらばらになる危険があるだけでなく、監督コーチはどうすればいいのかと人の国ながら心配になってしまいます。

このように、現場の事がわからないお偉いさんが人事に口を出すということは最悪の結果を引き出すことが予想され、逆に相当無様な姿を国際的にさらけ出してしまい、今話題の「美女応援団」が涙する姿だけがクローズアップされて終わってしまいそうですね(^^;)。

これも南北に分断された国家の悲劇と言えなくもありませんが、いくら元の国は同じで話し合いにきっぱりと断われないと言っても、今回の韓国が取った行動が本当に南北の合同チームを実現させてしまうとしたら、スポーツ好きでオリンピックを見るのを楽しみにしている人にとっては興ざめするような事実でしかないということを声高に発信していくべきだろうと思います。

もっとも、もし韓国女子アイスホッケーチームが金メダルを狙えるだけの実力あるチームだとしたら、チーム力を下げるものでしかない今回のような措置は話すら出てこなかっただろうと思います。この報道を聞いた韓国女子ナショナルチームの監督やコーチ・スタッフの心情については察するに余りあります。開催する前からこんな話が出てくる今回の冬季オリンピックですが、これ以上大きな問題が起きないで欲しいと願わずにはいられません。


カテゴリー: ノンジャンルコラム | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

スポンサーリンク

コメントを残す