モバイルインターネットの盛り上がりに水を差しかねない勧告

モバイルインターネットにおける動画閲覧というのは、ユーザーにとっては長きにわたっての課題とでも言うべきものでした。基本的にはYou Tubeを家だけでなく外で時間を潰しながらも見ていたいと思う人が多かったのだと思いますが、まずは格安SIMの側から「無制限プラン」という形で提供されたサービスに人々が群がった結果、大きなスピード規制を受ける事になり、「何が無制限なのか」というこぞって契約したユーザーによる売り文句と実態がかみ合わなくなった事に対する批判が出た結果、「無制限サービス」をうたった業者のほとんどはその看板を下ろすことになりました。

その代わりに出てきたのが、月間の高速クーポンを増やして50GBとかのプランを出した、これも格安SIMの業者が先行する中で大手も追随した感じです。しかし、私自身も思いますが、どのくらい外で動画を見るのかはその月の状況によっても違ってきますし、段階的に設定されたプランの場合、ちょっと動画を見ただけでも料金がかさんでしまうように感じることもあります。また、最初から大容量の高速クーポンを利用する契約の場合、動画を見ない月であっても一律に料金を払い続けるのもどうもと思ってしまうようなところがあったように思います。

そこで最初に格安SIMのビッグローブが出したのが特定のサービスを利用する場合、そのサービスを使う際には高速クーポンを消費しないという「エンタメフリーオプション」で、このサービスでは特定のサイト(2019年2月現在はYou Tube・AbemaTV・U-NEXT・You Tube kids・Google Play Music・Apple Music・Spotify・AWA・radiko・Amazon Music・You Tube Music)を利用する場合に高速のまま使えることが売りで、基本プランに付けるオプションになっていて、利用したい人だけ追加料金を払って一部の動画を見放題にできる画期的なものでした。

こうした「カウントフリー」サービスについて、格安SIMを売りにする業者が始めても別に規制がかかるなんて話が出てくることはなかったのですが、昨年あたりから大手キャリアの一つであるソフトバンクが「動画SNS見放題(ソフトバンクではウルトラギガモンスター+)」というサービスをテレビコマーシャルを大々的に打ち出して行なった時点で総務省からこうしたプランを提供することを自主規制すべきだという勧告が出たニュースが入り、少々びっくりしました。

この種のサービス自体に問題があるなら、ビッグローブや自社サービスのLINEや他のSNSの利用について高速クーポンを消費しないプランをオプション無しで提供しているLINEモバイルがプランを出した時点で何か注意があっても良さそうなものでした。先日このブログで紹介したように、政府が集めた有識者会議に参加している人が勤めている大学に対して寄付をしていたことが発覚したauとドコモではこのようなサービスはまだ行なっていないということも、何か胡散臭さを感じるのは私だけでしょうか。ニュースによると総務省が開催した有識者会議では自主規制を求める理由として「中小の業者は不利な立場に置かれ、公正な競争を妨げる懸念」という話が出たのだそうですが、単に「エンタメフリーサービス」を禁止するだけだと、大手のソフトバンクでなく中小に分類されるであろうビックローブなどが先に倒れてしまう危険性もある話なので、この件についてはそれこそ慎重に議論していただきたいと思っています。

こうしたエリアフリーサービスの問題点としてもう一つ指摘しておきたいのは、通信業者にどのサービスを「エリアフリー」として扱うかの区別が問題になってくるところでしょう。画期的な動画サービスがこれから展開されたとしても「エリアフリー」に対応している老舗動画サービスを外で利用せざるを得ない事になってサイト間の公正な競争を阻んでいると言われれば、それはそうだと思えますが、動画を自由に見るには「エリアフリー」でなければいけないということでもないということも、ここで指摘しておくべきかも知れません。現状の格安SIMでも自由にどのネットサービスも「使い放題に準ずる」利用にすることは可能なことは意外と知られていないのです。

それが私が今加入しているUQモバイルの「無制限プラン」なのですが、このプランはネット通信速度を500kbpsの「高速」でない「中速」で利用することで長時間の動画を画質をぎりぎりまで落とすことで、同じデータ容量をやり取りする場合でもより長く動画を見続けることができるようになるというものです。UQモバイル自体がauとの関連がある会社ではあるのですが、他の格安SIMを提供する「中小の業者」にも安く大手キャリアが回線を貸してくれるように総務省が指導すれば、何でもかんでも高速クーポンを消費するような形でなく、小さな画面でなら十分に見られるクオリティにして格安的にも今より安く提供できる中速のモバイルインターネットで動画を見るパターンでも十分な方もいるはずです。

道路に例えれば速度無制限の高速道路でなく、60キロ規制で信号のない自動車専用道を整備するようなものだと思うのですが、今より安い金額で回線を借りられる環境が整ってくれば、動画サービスを配信する業者においても中速より遅い低速でも(時間やトラフィックの問題で一時的に低速に速度が下がる状況も考えないとストレスない動画連続視聴は難しいでしょう)何とか見られるような動画配信技術の開発競争も期待できるのではないでしょうか。このような話を出す前に、まずは大手キャリア全ての回線提供を安価にさせるように促すのが筋のような気がします。そういった経緯を無視し何でもお上からの指示で目立ったプランを潰す目的で規制するというのは、民間の活力を削ぎ、画期的なアイデアを出にくくするだけで、むしろネット動画自体の衰退もありうるのではないかと思ってしまったニュースでした。


カテゴリー: 通信サービス全般ニュース | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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