前回(前日)の内容を読まれた方も読まれない方も、いざという時に役に立つと思われる、アルコール燃料を使った、自分なりにまとめたセットについて今回は紹介します。アルコール燃料は安く、少ない容量でも使え、煤も出ないので燃料の扱い方に気を付ければ、便利に使えるようになります。こちらの写真にあるものがそれですので順に説明していきます。
まず、アルコール燃料を燃やす「アルコールストーブ」ですが、様々な種類がある中で私がおすすめしたいのが、日本製で定番のエバニュー・チタンアルコールストーブEBY254です。シンプルな道具ですが3千円くらいして、他のメーカーでは安いものも出ているのですが、これをおすすめする理由はストーブの上に直に乗せて調理することが可能だということです。
このアルコールストーブのレビューの中には、「火力は強いが燃費が悪い」というものがありますが、それは直乗せをせずに使う場合で、アルコール燃料を入れて火を付けてから、本燃焼するまで40秒くらい待ってからキャンプ用のクッカーを乗せると、下段からの火だけが使えるようになるので、実に燃費が良い弱火になります。
直乗せするクッカーは、それこそ大き目のシングルマグカップ(100円ショップにも売っています)でも良いですし、こうしたミニマムセットの定番であるスノーピークのチタンシングルマグ450という選択もあるのですが、今使っているのは小型のクッカーです。大き目の取っ手が付いているので安全に取り扱え、マグカップをクッカー代わりにするためには蓋が必要なのですが、当然フタも付いていて、さらにお湯を注ぐ時に便利な切込みが付いているモンベルの「アルパインクッカー9ディープ」が写真のクッカーです。
アルミ製で熱伝導が良いので、炊飯もこなす小型のキャンプ用鍋です。価格は2千円強で、これらを揃えるだけで5千円オーバーになってしまいますが、この2つのセットだけで、あとはご家庭にある金属のバットを持ってきてそこにアルコールストーブを置き、その上にクッカーを乗せるだけで調理が可能になるので、五徳を別に用意する必要がありません。
アルパインクッカー9は容量の400ccと200ccのところに目盛りが付いていて、計量カップを必要としませんが、個人的な感想を言うとこのクッカーの目盛りは若干多目に計量できるようなので、沸騰したお湯を真空断熱ボトルに入れておきたい場合、400mlの容量のボトルでは私の場合溢れてしまいました。できれば、別にお米の一合も量れる計量カップをスタッキングすると良いでしょう。
話を戻しますが、エバニューのチタンアルコールストーブは、使い終わった後にアルコール燃料が余った場合、燃料を回収して再度使えます。このストーブには30mlと60mlのところに目盛りが付いているのですが、今回のセットの場合には30mlよりちょっと下くらいまで燃料を入れて使い、沸騰したら上からフタのできるようなキャンプ用のステンレス製のシングルカップ(写真のものは250mlのステンレスカップ)を被せて消火したら、燃料を回収します。それには主にコスメ用として売っているシリンジ(注射器)を使うと、シリンジには目盛りが打ってあるので、効率的に燃料を回収できるだけでなく、自動炊飯にも使えます。
一般的に一合のご飯を炊く場合、アルコール燃料が20mlあれば良いと言われています(二合の場合は30ml)。つまり、シリンジからアルコール燃料を計量しながら定量分をアルコールストーブに移せば、火が付いたアルコールストーブにクッカーを乗せれば、火が消えるまでそのままにしておけばきちんとご飯が炊けるのです。そのため、100円ショップへ行き、シリンジの他にアルコールを入れておけそうな容器、キャンプ用のシングルカップ、お米の計量カップ(金属製が便利)や安全に火を付けられるライターなどを買い込めば、いざという時だけでなくレジャーでも使えるセットが完成します。
クッカーについては四角いメスティンでも代用可ですが、災害時には複数のメスティンを使って一人分ずつお米を炊き、そのまま器として使うのが良いのではないでしょうか。今回の組み合わせは基本湯沸かし用に考えたものです。このクッカーならお湯が湧いた後に安全にお湯を保温ボトルに移すにはこれがアルコールストーブ直乗せには都合が良いです。
なお、メスティンではなくこのクッカーで炊飯をする場合、水を多く入れると吹きこぼれるお湯が注ぎ口から一気に出てくる危険があります。それは「赤子泣いてもフタ取るな」という炊飯時にはフタを開けるのが悪いという常識があるからです。ただ、フタがカタカタ言い出したら、このセオリーは無視してフタを外し、かき混ぜながら焦げ付かないようにすれば、ちゃんと美味しいお米が炊けます。同じようなやり方は、100円ショップで売っている大き目のステンレスシングルマグで炊飯をする時にも使えるやり方です。基本的には一定時間は水に浸してから火にかけることが大事なので、そうした事は災害時にやるのではなく、レジャーで持って行った先で試しながら行なうのが良いと思います。
と、ここまで書いてきましたが、最後に一番大事な点について言及しておきます。今回紹介したセットはしまったまま災害時だけ使おうとすると、その使い慣れなさで火災や火傷など、大きな問題を起こす可能性があります。ただ、使い慣れていれば間違いをすることはなくなるので、日常のコーヒーを飲む湯沸かしに使ったり、キャンプで一人用のご飯を炊きながらその扱いに慣れることができるような方に向いています。アルコール燃料は使い方を誤ると大きな火が上がり爆発的に燃えることもあります。便利な道具ではありますが、慎重に日々扱いながら非常時に備えましょう。