電子マネーの給与支払いをするための前提条件は災害時への対応ではないのか

企業が賃金をスマートフォンの決済アプリの口座に入金する「給与のデジタル払い」が上限を100万円に設定することで解禁される見通しになったというニュースを読みました。今まで、給与振込における手数料が無くなり、チャージをしなくてもすぐにスマホ決済で日常的な買い物に使うことができるというメリットはあるものの、そのディメリットについても考えていかないと、こんなはずではなかったと選択を悔やむ場面も出てくるかも知れないので、その点について色々と考えてみることにします。

2022年の台風14号は、過去稀に見る巨大台風で、通過した地域ではかなり長い間にわたって停電が続くなど社会インフラが不通になるという状況に見舞われてしまいました。台風の襲来を前にして、「ATMに事前に行って現金を用意する必要性」が一部で叫ばれていました。これは、停電している中で買い物をする場合、多くの電子マネーに対応しているはずの店舗で電子マネーが使えないのでは? という心配がそこにあることは間違いありません。

実際、台風が通過したところでは特定のキャリアに関わらず、地域によって携帯電話の電波が繋がりにくくなった地域もあったようですし、さらにそんな地域で停電ということになると電子マネーの決済を扱う機器の電源が入らなかったらそもそも決済が不可能になってしまいます。もしタブレットなどで停電時に決済をするための機器は動いていても、ネット接続ができなければ決済自体が不可能になるなど、デジタル取引には不確定要素が付きまとうということになります。

逆に言うと、停電時でも現金だけでなく電子マネーが使えるお店があれば、社会の電子決済への安心度はかなり上がると思います。そんな事ができるのか? と思う方もいるかも知れませんが、通常は店舗に引いている光インターネット(実際は決済端末はそこからWi-Fi機器に接続されていると思いますが)経由でインターネットにつながっていると思いますが、停電および通信インフラ対応の対策がされた仕組みをしっかりとさせることができないと、最初の電子マネーの給与払いを今後受けるような場合、肝心な時に使えないような事にもなってしまいます。

こうしたリスクについて、自分で工夫して対応することは可能ですが、多くの電子マネー決済機器を設置している店舗、特にデジタルスキルがそれほどない人が端末を扱うような店舗で同じような対応は無理でしょう。私の場合は大手3社(ドコモ・au・ソフトバンク)+1社(楽天モバイル)の回線を持っているので、自宅インターネットが停電で使えなくても、これら4社の回線がつながれば、少なくともネットによる決済は可能になるのですが、いちいち4つの契約をしてそれを維持するのは難しいと思います。そうした実務の煩雑さを回避するために、決済端末自体にeSIMを搭載し、3社ないし4社の回線を、Wi-Fiが使えない時には自動的に接続を変えて使えるようなものが出来てこないと、電子マネーを安心して使用することは難しいのではないかと思います(それでも、基地局自体が停電で動かないなど決済機能を利用できない可能性を0にするのは難しいとは思いますが)。

それでもこうした仕組みがあれば、基本それ自身にバッテリーが搭載されているハードを決済用に使うことで、長期停電に対応するためにはお店側は大き目のモバイルバッテリーやポータブル電源を非常用に用意しておけば、日本国内で全く携帯電話の電波が使えないような状態にならない限りは、現金が全くないような状態でもスマホで決済が可能な状態にしておけます。

その際、電子決済を使う利用者の方でもネット接続環境を確保する必要がありますが、停電・通信障害の二重苦に陥るような状況がひどくまれであることを考えると、いざというときには決済端末自体にテザリングさせる仕組みを使うことで、モバイル回線が不通になっていても、買い物をスマホですることができるという安心が生まれます。技術的にどうなのかということはここでは考慮していませんので、この提言があまりに現実離れだとしたら本当に申し訳ありません。ただ、電子決済を安心して使用するためには、決済を行なうお店側の方の環境が整うことがまず第一歩であるような気がします。

個人的には、有無を言わさず多額の手数料を支払わなければならない企業の立場からすると、必ずしも現金を銀行口座に振り込む形での給与支払いでなくてもいいと思います。なぜなら、銀行に払う手数料分を給料に上乗せしたり、従業員の福利厚生に使えるようなこともできるのではと思うからです。しかし、やはりその前にやる事はあると思います。auの大規模な障害の時にも言われたことですが、国内の携帯電話用の電波を相互利用する仕組みを、まずは商用利用の端末から始めていって欲しいですね。


カテゴリー: 通信サービス全般ニュース | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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電子マネーの給与支払いをするための前提条件は災害時への対応ではないのか」への2件のフィードバック

  1. ケータイオタク

    デジタル給与に関しては反発が多いですね。感情的な反発であり、災害対策など説明しようとしても聞く耳持たずと言うのがデジタル後進国の国民らしい。
    災害にも程度の違いが大きいですが、デジタルと言うと停電したら使いものにならないと決めつけている人が多いですね。無線を信用せず有線に固執する。
    日本人は抽象的概念把握能力が低いと考えるとデジタル化に対する拒絶反応が理解出来ると思います。アナログと違ってデジタルは抽象概念ですから。
    そもそもインターネット自体は戦場における連絡の確実性を高める技術であり、災害に強いシステムです。
    停電しても通信まで途絶する事は可能性としては低くなるし、電気以上に通信の復旧は早く可能です。通信さえできればQRコード決済は可能。さらに中国ではNFCを利用した通信途絶状態での決済の実証実験も済んでいて可能である事が実証されている。
    変化を嫌う国民性が国力低下を招いている事を政治は認識すべきですね。アナログ国民は無理としても。むしろ全額ではなく、支給額の1割程度はデジタル給与を一定規模の企業には義務付けるくらいでないと普及しないでしょう。
    外国人労働者には普及が進むと思います。自国の家族に送金するのが容易になり、コストも下がる可能性がある。
    まずデジタル給与と言うシステムを初めて問題点が出てくれば速やかに対応すると言う体制でないとデジタル化に遅れ、世界から取り残されたままになるでしょう。
    デジタルスキルの向上は自然にはしません。デジタルスキルを身に着けないと店舗は維持できないと言うくらいでないと。維持する為にはデジタルスキルを身につけろです。

  2. てら 投稿作成者

    ケータイオタクさん コメントありがとうございました。

    東日本大震災から10年以上が経ち、我が家でもポータブル電源とソーラーパネルを合わせることで、何とか停電になっても晴れ間があればスマホの充電と、夜の明かり用ぐらいの電源は個人でも確保できる目処が立ちました。

    現在大手キャリアがどこまで災害時の基地局の電力対策を行なっているかはわかりませんが、ソーラーパネルと微風でも回る風車などを導入したりすれば、災害に強い基地局を作ることができるでしょう。また、アメリカですでにサービスを行なうことを宣言している通信衛星から直接スマホとネット接続をすることができる仕組みが日本でも広まれば、あとはスマホ自体の電池切れ対策をすれば、災害に強いシステムが出来上がるでしょう。

    最近は地方税も電子マネーで払うことができるようになっていますし、銀行の手数料で儲けるサービスを利用する側も、何とかしてもう少し安くできないかと思っているのではないかと思います。現金は現金で、必要になるところもあるものの、両替や硬貨入金にも手数料がかかる今となっては、そうした事を考えなくても済む決済方法を模索していくべきだろうと思います。それが一般ユーザーのインターネット利用にも役に立ってくれると、もはや現金の使いどころはなくなってしまうかも知れませんので、関係する方には頑張っていただきたいと思います。

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