路線バスの旅はもはや「路線バスと歩き旅」で旅番組としては楽しみずらくなっている

私の好きな旅番組の一つにテレビ東京の「出川哲朗の充電させてもらえませんか」という電動バイク(原付相当)に乗って沿線のお店やお宅にお願いして充電させてもらいながら目的地を目指すというものです。この番組で使う電動バイクは一回の充電による航続距離が少なく、とても実際のツーリングには使えませんが、この番組が始まる前から原付でロングツーリングをする方は多くいたので、原付で番組で紹介されたルートを走ろうと思っている方は少なくないでしょうし、番組を見てバイクを使ってのロングツーリングをされていると番組のカメラに向かって申告する方もいます。多くの視聴者の中には単にバラエティーとして楽しむ方もいるかも知れませんが、番組で通ったルートを辿りたいと思う方の要望を満たすような作りの方があった方が番組を通じて様々な展開が考えられる分、多くの人の興味を引くようになるのではないかと思います。

逆に、ここのところ連続して違ったテイストの番組として放送されている「路線バスの旅」および「鉄道旅VS路線バス旅」のシリーズというのは、ゲーム性があり番組内で結果についての予想を募集するようにして視聴者の興味を引っぱるような作りになっているのですが、長く見ているとだんだん出演者達の過酷な移動に、ドン引きしてしまう人も少なからずいるのではないでしょうか。

このシリーズの初期には私が住む静岡県を路線バスで横断する回があったのですが、利用状況で路線バスが激減する前でも、東海道の「さった峠」は路線バスの路線が無く、JR由比駅から興津駅まではバスがつながっていませんでした。当時は厳しいルールはなく、当然のように由比駅から興津駅までタクシーに乗り、そこから別会社の路線バスで西へ移動していたのですが、ゲーム性を高めるために「基本歩きで全行程でタクシーが使えるのは1万円まで」というルールができることになりました。

こうなると、実際の旅で同じような事をやる人というのは、もはやいないのではないかと思えます。NHKBSで俳優の火野正平さんが行なっている自転車の旅では、袋に入れて列車やバスに乗せられる「輪行」ができる区間については、積極的に公共交通機関を使って移動しているのと対象的です。

さらに、路線バスの場合、最近は利用人口減少ということだけではなく、新型コロナのまん延により運行本数が減ったり、路線そのものが無くなるような事が起きている中、新たに番組を作る場合、もはや徒歩で十数キロ一気に移動することが当り前であることを想定したルートを提供しないと、もはや旅自体のゴールができないようになっており、このシリーズが「旅番組」ではなく「旅ゲーム番組」としてしか楽しめない状況になってしまっています。

元々路線バスシリーズではおなじみで、旅先での行動が普通でなくそれ自体に味があった蛭子能収さんが番組を降板したのも、ルール重視の結果延々と歩かされるのに嫌気が差したところもあったように思います。乗り物に長時間乗っただけでも体力を消耗するのに、雨の中や夜間になっても長距離を歩かされるようなものになると、今後新キャストで路線バス旅を続けるという話はあるものの、体力的には自信がなくても実に味のあるというようなキャスティングを選ぶことが難しくなり、他の民放バラエティーで活躍するような人がメインになっていく事になるでしょう。

そもそも、時代の流れという中で路線バスが縮小される中では、番組で流れたルートを普通に後追いしても同じように行けるルートというのは本当に限られてしまい、出演者の負担を減らすためには、県境を超える場合バス会社が変わってしまいバス路線が寸断されることがあるため、この部分は無条件でタクシー利用可にするとか、ヒッチハイクを番組内で許可するとか、色々ゲームにおける出演者の負担を軽減するアイディアは出るものの、旅の再現性という意味ではもはや旅番組としては破綻している部分があることも確かです。

また、バス利用の場合、その殆どで交通系ICカードを使用せずに現金を運賃箱に入れるというパターンも、どうにかならないかと思います。路線バスの地方路線の中には、群馬バスのように関東なのにSuicaを使っての乗車ができないという路線もあるのですが、カードでの精算ができればいちいちお金を用意する必要がない分、次のバスをじっくり選べる余裕も出るわけです。決して現金での支払いを否定するのではなく、使えるものは使いながら、視聴者に全国の路線バスでも交通系ICカードの流用がそれなりに可能であるということを示す必要もこうした番組で紹介する意義はあるのではないかと思います。

こんなことを書くのも、先日「路線バスVS鉄道」の対決旅を一気見して、まるでずっと旅をしているように見ることに疲れてしまったからなのです。今後の状況から見て、旅番組というより移動ゲームバラエティとして見せるような形でしか、路線バス旅は残れないということは残念ながら明らかだと思いますので、せめて出演者に過酷な旅を強いる今のパターンの旅をさせる方向からの脱却をした上で、移動ゲームを楽しませて欲しいというのが昨今感じたことでした。


カテゴリー: 旅コラム | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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