星新一さんのショートショートの作品の一つに「味ラジオ」というものがあります。この「味ラジオ」とは何かと言うと、未来の人々の口の中に受信機が設置され、放送局はおしゃべりや音楽ではなく、人の味覚を錯覚させるような形で放送を送り、口の中に様々な味を再現するというものです。
このシステムのおかげで、味ラジオのある未来では食事時間以外には味のないガムを噛むことで、味ラジオから様々な食べ物の味を楽しみながら生活することができ、食事の際も通常では全く味の無い栄養とエネルギー補給だけのための食事をしても、実に美味しい食事をしたかのように感じられるという(味ラジオから流れてくる味をガムをかみながら味わっていれば過度なカロリー摂取をしないという設定なので、その未来には肥満の人はいないのです)空想の世界での出来事としても実に羨ましい社会の物語です。
ただ、星新一さんはそうしたばら色の未来だけを書いたのではなく、その「味ラジオ」の電波がトラブルで中断してしまったら? という状況をショートショートにしました。まさに、当り前だと思っていた事が突然できなくなったら人々はどうなるのか? というのが昨日iPhoneでSuicaやPASMOを使っている人に起こったアプリからチャージできなくなった(残高があれば支払いは可能だったよう)トラブルとシンクロしてしまいます。
今は現金を出して切符を買うよりもSuicaを使った方が安く早く電車に乗ることができます。それが当り前になってしまうと、それこそ現金を使って自分の目的地まで切符を買うことの大変さを感じたり、いちいち現金を出してチャージすることについても、やり慣れないとやはりどこでできるのかということを含め、パニックになってしまう人もいるかも知れません。
星新一さんの作品の中でも、トラブル時になるとそれが大したことがないものでも深刻に考えて大きな騒動になってしまう可能性について、作品では書かれています。当然ながら不具合は起きたとしてもじきに復旧し、人々は何事も無かったかのように普段の生活に戻っていくわけですが、やはり大切なのはトラブルに大騒ぎせず、今回の場合は現金でのチャージができる場所を探すという方向で動くようにするしかなかったでしょう。
ちなみに、JR東日本のホームページの情報では、モバイルSuica対応のチャージ機や券売機に長蛇の列ができていた場合、駅のコンビニ「NEWDAYS」や「サークルK・サンクス」「セブン-イレブン」「ファミリーマート」「ミニストップ」「ローソン」「イオン」等の一部店舗でレジで現金を出せばチャージできる場合があるそうです。またセブン銀行のATMには現金でのチャージ機能があったと思います。そうした選択肢の中で人が少ないところでチャージができれば、そこまでパニックにはならないと思います。
こんな事が書けるのは、先日書いたばかりですが私の母親のスマホにモバイルSuicaアプリを入れたものの、本人がクレジットカード嫌いでカードの登録ができないので、現金チャージでモバイルSuicaを使う方法についてあらかじめ調べていたということもあります。もし今後、現金が使われる状況が極度に減ってしまったとしたら、モバイルSuicaからのクレジットカードチャージができないという事自体が会社の遅刻の理由になってくるのではないでしょうか。それは、電子決済が主流になる世の中ではある意味仕方がないことです。あわててしなくてもいいトラブルに首を突っ込むよりも、待てるなら情報が出てくるのを待ってから対応するような広い心を持ってこうしたトラブルには対処するしかないような気がします。
今回のトラブルではモバイルSuicaでの定期券やグリーン券も購入しずらくなっていたようですが、この件についてはJR東日本のホームページで対処法(券売機や車内で現金で購入した場合の返金・ポイントの付与についてなど)が紹介されているので、今すぐではなく騒動が落ち付いた後からでも問い合わせフォームを使ってその日の状況を報告できるように記録しておけば、そこまで慌てずにも済むのではないかと思います。
今回のトラブルについてはapple社の方でのトラブルである可能性が高く、駅員さんに怒鳴っても恐らく何も解決しないでしょう。ちなみに今回紹介した「味ラジオ」は作品集「妄想銀行」に収録されていますが、刊行は1967年でした。改めて人間というものは本質的なところでなかなか進歩できないということを思いますし、こうした過去の作品から現代を観ていくことも大切なことだと思っています。
日本人は事故を恐れ事故を避ける事には力を入れるが、いったん事故が起こるとパニックに陥り流れに身を任せる。抵抗はするが敗北するとすべてを投げ出しお気の済むままになる国民性が顕著に表れていますね。
デジタル社会でなくアナログ社会のままであれば未知のトラブルは起きない。だからアナログの現状のままの方が良い。デジタル化で未知のトラブルが怖い。
しかも未知のトラブルと言っても対応策は用意されているのに未知と言うよりも無知でパニックに陥る。
しかもキャッシュレス派は現金を一切持たないかの様な思い込みの一方的なデジタル社会への否定。
事故が起きた時の対応が求められるのがデジタル社会では必要とされるが日本人は事故が起きた時の事考えると言う事は事故が起きる事につながると考える言霊信仰が強い。
自分自身モバイルSuicaを普段は使うが、トラブルに備えてビックSuicaは携帯しているし現金も万札は数枚携帯している。
ビックSuicaはモバイルSuicaにチャージするのに利用しています。
デジタル社会では事故が起きないように考えて居れば良いのではなく事故が起きた時の対応を考える事が求められる。
ケータイオタクさん コメントありがとうございます。
モバイルSuicaの前にトラブルを起こしていたというフェイスブックのシステムトラブルなど、最近はこうしたトラブルがニュースになりますね。ということは、そうしたツール自体が私たちの中で欠くことのできないものになっているということでもあると思います。
今回の事もそうですが、交通事故のように誰もが事故だとわかるものではないところが、こうしたデジタルトラブルの特徴ですね。単に自分のスマホの電波がつながっていないなどの、キャリア通信業者のトラブルなのか、サービス自体のトラブルなのかという事がすぐにはわかりにくいという事があります。もちろん、代替手段を持ち、必ずしもデジタル決済に固執しないことも大事でしょう。ただ今回のモバイルSuicaのトラブルは、まさに電車の遅延証明のように、現場の駅員さんに今起こっている問題が個人のスマホの問題でなくシステム全体の問題だというお墨付きを貰えば、緊急避難的に現金を使ってもポイントを後付けしたりすることも可能だったようなので、直接システムにアクセスしたり駅の掲示板を見たり、駅員さんに聞いたりすることも大事でしょう。
この辺は、電車で旅に出てトラブルになった時と同じような感じですね。アナウンスがあるまで待たずにまず自分で先に動いて分かり得る情報を入手するような対応も考えて動くのがいいと思います。