ファクシミリはオワコンではあるものの霞が関で全廃というのは早過ぎないか

私自身の事からまず今回の内容を書くにあたって紹介させていただくと、固定電話を解約した時点ですでにファクシミリ(以降はFAXと略します)の利用をしなくなりました。まだ電子メールやクラウドを使ってのデータの受け渡しが普通にできなかった時代には、郵便より早くデータを送るには相手の電話番号に直接データを送ることができるFAXを結構使っていました。

まだアナログ携帯電話の時代には、携帯電話からケーブルを繋ぐと外からでもFAXの送受信ができるポータブルFAXなるものも持っていて、仕事上で時間を争う報告をする場合には外出先からFAXを送ったり、足りない資料を逆にFAXで送ってもらったりすることも実際にありました。

また、ノートパソコンにもFAXモデムが内蔵されているのが普通だった頃には、公衆電話のモジュラージャックにパソコンを繋ぎ、ワープロで作った書類をFAXで送ったり、外にいる場合には携帯電話のポータブルFAXと合わせ、パソコンからFAXで携帯電話につないだFAXの方に書類を送ることで、モバイルプリンター代わりに使ったこともありました。当時のポータブルFAXは感熱紙を通すとインクが必要なかったので、たまにしか使わない外での出力に多少通話料を掛けても、ファクシミリの普及もあって感熱紙を買えないことは当時なく、それなりに便利に使っていました。

筋目が変わったのは、スマホを誰でも使えるようになった頃からで、個人レベルではもはやFAXを必要とする事というのはありません。デジタル携帯電話(3G)以降は、直接携帯電話やスマホでFAXを受けることもできなくなりましたし(ポータブルFAXも携帯電話のデジタル移行で単なるゴミになりました)、メールやLINEで十分になった今、もはやFAXは必要ないという話は理解できます。

今回、政府の河野行政改革担当相が、2021年6月中にFAXを原則廃止するよう、各府省に指示を出したことがニュースになっています。テレワークの推進や業務効率化の観点からの指導だということで、全く無くしてしまうのではないらしいのですが、私の読んだニュースでは単に役所間のFAX連絡を廃止するのか、外部からの連絡先としてFAX番号を案内するのも止めるのか、どちらとも取れるような内容になっていました。ただFAX自体は今後のネット社会では使わなくなる事は確かなので、ここではさらに状況が進んで、いわゆる公に開かれた問い合わせ先としてのFAX番号を公開しなくなってしまう可能性のある将来に向けて考えてみたいと思います。

もし今後、霞が関だけでなく全国の自治体のホームページ等に掲載されている各省庁や役所への問い合わせ先としてFAX番号を載せることがなくなっていくということになれば、私のようにFAXを必要としなくなった人間がいる一方で、パソコンも音声通話もうまく使えない(うまく喋れなかったり相手の声を聞くことが難しい人、さらに長文をパソコンやスマホで打ったり、図などをパソコン・スマホで描くのが難しい人も世の中には多くいます)一部の方々の連絡手段を遮断してしまう恐れも出てきます。

今現在、高齢者の新型コロナワクチンの接種が始まっていますが、このブログでは何回も書いているように、その問い合わせ先に0570から始まる「ナビダイヤル」を使うことが多くなっていますが、問い合わせの内容によっては0570電話での問い合わせ先を残すのだったら、専用の台紙に問い合わせの内容を記載しFAXで送ることで、電話することができる人でもFAXで十分な場合もあります(当然、メールアドレスを記載してFAXを送れば返答を電子メールでもらうことも可能でしょう)。自治体の接種予約の方法にも色々ありますが、はがきを使っての予約を行なっているところもありますが、締切まで時間がない場合に限っては、電子メールやウェブを利用できない方が直接接種の申込みをするには、FAX番号を公開しておくことは、できるだけ多くの人が行政サービスを受けさせるためにも無駄なことではないと思うのですが。

まあ、今回の話は全国の自治体ではなく霞が関での話なので、ワクチン予約についてはほとんど影響がないか、限定的な影響ではあると思うのですが、もし今回のニュースをきっかけにしてFAX廃止の流れが一気に進んでしまうと、FAXを利用して社会とのつながりを作っている人が、社会との関係性を閉じてしまう恐れもあるように思います。

今回と同じ考え方で行くと、直接やり取りをする資料や現金・有価証券など、さらに荷物以外の手紙についてはわざわざポストに投函して配達してもらわなくても、電子メールでやり取りをすればいいのではないかということになりますが、未だに自宅には分厚い通販のカタログが届いたりしますし、不効率だと思っても止められない事情というのはどんな業界でもあります。

もちろん、自発的にFAXや紙のカタログを止め、全てをネット経由で行なえるような社会へと進んでいくことは大事で私もそれを実践しているものの、公的な機関が一気に今まで使えたものを止めるなら、その前にちゃんと利用者への説明および実情についての調査をして今後の影響を検討してからでも決して遅くはないのではと思います。早く一気に進めるのも必要な場合もありますが、FAXにはサーバーが止まっても電話のように相手の業務をストップさせないで直接に、さらにいつ発信したか確認できる形で連絡できるというメリットもあります。今の官公庁の使っているサーバーが止まることがなければいいと思うのですが、わずかでも不安があるなら、個人的には行政同士の連絡手段としても、一般の方からの問い合わせの手段としても、もうしばらくはFAXという手段は残して、徐々にフェイドアウトしていくような方策を取るのが良いのではないかと思っています。


カテゴリー: 通信サービス全般ニュース | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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ファクシミリはオワコンではあるものの霞が関で全廃というのは早過ぎないか」への2件のフィードバック

  1. ケータイオタク

    変化を嫌う国民性を考えると一挙に全廃と言う事をしないとうやむやになり、いつまでたっても変わらないと言う事になるでしょう。
    知人にみんな変わらない方が良いと思っているといると言われた時にはこの人はもうだめだなと絶望感を感じたくらいです。
    世界の流れはデジタル化への流れが急速ですが、日本はいまだついていけない人はどうすると言ってデジタル化を拒絶しようとする。それでは世界から取り残されて後進国化してしまう。
    ついていけない人は切り捨てられる。それくらいでないとネットで国境のない世界になりつつある世界にはついていけない。
    ついていけない国は世界では切り捨てられていく。沈没船と一緒に運命を共にはしたくないですね。
    FAXと言うアナログな方法での受付を行う事はさらに行政に負担をかける事になり、全体の効率化を妨げる事になります。
    むしろ有料で取り次ぐ事を民間会社に認めるべきだった。ついていけない人が対価を払う事で新たな市場も生まれる。
    手続き代行会社を経由させる事で行政も効率化と経費削減が図れる。全体の利益は大きくなる。
    変化についていけない中にはついていく気がない人が少なからず存在する。そのような人たちの為に経費が増大して良いのですか。
    身体的特徴で対応出来ない人はその費用を補助する形で救済すれば良いのでは。

  2. てら 投稿作成者

    ケータイオタクさん コメントありがとうございます。

    本文で書いたように私自身すでにFAXとおさらばしているので、できる限りネットで完結するような手続きを望むところはあり、過去の技術をそこまで引きずることなく、強力なリーダーシップで事務を改善する取り組み自体は否定しません。

    ただ、携帯電話代値下げの時も思ったのですが、難しい時代に多くの課題がある中で、感染症対策の対応の遅さが批判される中、その挽回をするかのように号令するのではなく、今回の騒動の中で、電話はつながらないFAXは先方からの連絡を待つだけで結果が帰って来づらいという事をふまえ、ネットでの手続きのメリットを実感させた上で(少なくとも国民のワクチン接種が一段落したタイミングで)、一気に号令するようにしてほしいと個人的には思っています。

    なお、私自身はどうしてもFAXでしか連絡が取れない人がいた場合に備えて、一応ネットに接続して受信したFAXをPDFファイルに変更して指定のアドレスに電子メールにして送信できるファクシミリは捨てずに置いてあり、さらに今では懐かしいUSB接続のFAXモデムは今後使うかわかりませんが、ストックはしてあります(ネットが使えない知り合いが未だにいるため)。努力しないで過去の技術にしがみつくだけの人は批判されて当然だと思うものの、連絡を取らなくてはいけないシチュエーションは特に役所関連でもどうしても出てきます。FAXを全廃するなら究極のアイデアとしては通信会社と連携の上でサービス自体を終了させるようにするしかないでしょう。

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