人種による能力の差という問題まで考えさせられた米ゴルフ・マスターズトーナメントでの松山英樹選手の勝利

現在、東京オリンピックについてその開催の是非について色々なところから声が挙がっていますが、今回はそうした話題から離れて、日本のスポーツ界にとって色々な事を考える大ニュースについて書いてみたいと思います。

世界には様々な人種があり、土地土地に根付く形で色々な人種がいます。人類の起源はアフリカという話もありますが、かつてはこの地球は大陸が全てつながっており、徐々に今のように離れていくにつれて地域によっての違いも出てくるようになります。

ただ、その違いを人種による優劣としてしまうとちょっと困ったことになります。住めば都でどの国の人も自分のところが一番いいと思っている事自体はいいのですが、スポーツの大会では体力・気力などの能力を競うことになるため、常に上位で競っているところとそうでないところを比べて、民族の優劣はあるのではないか? という風に考えてしまうこともあるでしょう。それが差別やヘイトスピーチを生むことにもつながりかねません。

私たちの住む日本という国は、島国ということもあるのかわかりませんが、スポーツに於いてはどの競技においても、自国とトップクラスの成績を挙げている国との実力差があってもおかまいなしにのめり込む多彩さがあるように思っています。同じアジアでもお隣の中国は広大な領土を持つ国で人口が半端ではないくらいいるので、オリンピックでは全ての競技に力を入れるということはわかるのですが、単にオリンピックでメダルを多く取ることを目標に挙げるのなら、例えば韓国のように国で強化する種目を絞り、間違っても普通に強化したとしてもメダルが取れる可能性の少ない陸上短距離などには力を注がないというやり方もありだと思います。

しかし、日本の最初のオリンピック選手がマラソンの金栗四三と陸上短距離の三島弥彦であるということと、戦前から陸上では短距離から投てき、跳躍種目までまんべんなく選手を派遣していたことも有り、どう考えても勝てないだろうと思われた短距離走の強化はそれなりに続いていました。そうした地道な継続された強化が400mリレーでのメダルという偉業につながっているわけで、体力のみで競うと思われる陸上であっても世界と十分に争うことができることがわかってくるにつれ、他の日本人には無理だろうと思われる競技でも世界的な成功を得る日本選手が出てきました。

個人競技では戦前に世界の4大トーナメントで活躍したり、オリンピックでメダルを取った種目である男子テニスも、一時期は日本人ではトーナメント優勝は無理だろうと言われていましたが、男子の錦織圭選手は2014年の全米オープン準優勝と、偉業まであと一歩までたどり着いたことで、多くの同じ目標を持った選手への励みになったことでしょう。それでも、テニスはかつての栄光がありましたが、それ以上に難しいと思われたのが男子のプロゴルフの4大トーナメントでの勝利の可能性でした。

日本でのゴルフというのは、古くは1957年中村寅吉選手の第5回カナダカップ(=ワールドカップ)での団体・個人戦優勝で一大ブームになりましたが、経済大国化してゴルフファンは増えたものの、日本ツアーで好成績を収めた選手が幾度となくメジャー大会に挑んではその厚い壁に跳ね返されました。日本の男子プロがメジャー大会の優勝に一番近づいたのは、四日間にわたり当時「帝王」と呼ばれたジャック・ニクラウスとラウンドして惜しくも勝てなかった1980年全米オープンだと思いますが、今回のマスターズでもテレビ解説をされていた中島常幸選手も、メジャー大会で幾度となく優勝に手が届くところまで上位に食い込みながら、不運としか言えないようなトラブルに何度も巻き込まれ(1978年マスターズ2日目13番ホールの悪夢のような13打叩きなど)、ついにメジャー制覇にはたどり着けませんでした。

今回、松山選手がアジア系としては初の王者になりましたが、韓国勢が活躍するまでは日本とともに台湾のプロが強く、1985年の全米オープンで今回の松山と同じように最終日トップでスタートし、リードを守ればアジア人初のメジャータイトルホルダーとなるはずだった陳志忠選手の痛恨の「二度打ち」を見ていたことも思い出しました。今回の松山選手の偉業というのは、単に日本国内だけの事ではなく、今まで主に白人系選手の独壇場だった男子プロゴルフの世界でもアジア系選手が特定の国に偏ることなく活躍できる可能性を見出した点でも画期的な出来事のような気がします。

ただ、考えてみると1970年代から80年代にかけては、野球で米メジャーリーグに入って投打にわたって活躍する大谷翔平選手のようなスケールのプレーヤーが出ることなど全く想像できませんでしたし、今回の偉業は単にゴルフ界だけの話ではなく、それぞれのフィールドで世界と戦っているアジアの様々なスポーツ界のレジェンド達が相互作用を受けて好成績につなげている点もあると思います。さらにマスターズの行なわれたアメリカ社会においてアジア系住民差別としか思えない、自分に抵抗できないようなアジア系住民に対しての暴力事件が頻発している中での出来事だったことも注目されています。

今回の勝利で、人種によるどうにもならない能力の違いというものはなく、差は感じても努力することでその隙間を埋め、結果を得ることができることを松山選手は身をもって証明してくれました。ただこれは、日本で生きる私たちについても日本民族こそ一番で他の人種とは違うということではなく、全ては自分の努力と心掛け次第でどうにでも変わるのだということだということも忘れてはいけないでしょう。さすがに昨日は、外に出ないでテレビの前から動かない方が楽しめました。なかなか外に出られない環境の中で、見るスポーツの楽しみを与えてくれた点でも松山選手にはお礼を言いたいですね。


カテゴリー: ノンジャンルコラム | 投稿日: | 投稿者:

てら について

主に普通の車(現在はホンダフィット)で、車中泊をしながら気ままな旅をするのが好きで、車中泊のブログを開設しました。車で出掛ける中で、モバイルのインターネット通信や防災用としても使える様々なグッズがたまってきたので、そうしたノウハウを公開しながら、自分への備忘録がわりにブログを書いています。

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